場所打ちコンクリート杭の主筋を高強度化することで合理的な設計と施工性、品質の向上を実現高強度鉄筋を用いた場所打ちコンクリート杭
概要
「高強度鉄筋を用いた場所打ちコンクリート杭」はこれまで主筋に用いられてきた鉄筋(強度が490N/mm2以下の鉄筋)よりも高い強度の鉄筋(強度が590~685N/mm2の鉄筋)を主筋として用いた場所打ちコンクリート杭です。従来よりも強度の高い鉄筋を主筋に用いることで、杭の合理的な設計を可能とするとともに施工性や施工品質の向上を実現します。
採用メリット
場所打ちコンクリート杭の主筋に高強度鉄筋を用いることにより、以下のメリットが得られます。
- 1.従来の強度の鉄筋を用いる場合より、主筋本数の削減が可能です。
- 鉄筋かごを建込む際の施工性の向上および基礎梁鉄筋との干渉の改善
- コンクリートの充填性の確保等による品質の向上
- 2.従来の強度の鉄筋を用いる場合より、杭耐力を向上させることが可能です。
- 主筋の配置に余裕がある場合など杭径を縮小することが可能
- 杭径縮小により掘削土量およびコンクリート量が削減され、コストおよび環境負荷の低減に寄与
開発の目的・背景
場所打ちコンクリート杭は安定液※1を用いて地盤を削孔し、孔内に鉄筋かごを建込み、コンクリートを打設して造成します。杭は建物荷重を支持するとともに、地震等で発生する水平力に対して、コンクリートと鉄筋により抵抗します。建物の規模や想定される地震によって適切な杭径、鉄筋量、コンクリート強度などを決定しますが、杭径を大きくすると杭を築造する孔の掘削土量や杭のコンクリート量が増え、環境負荷が大きくなるとともに、コストおよび作業量が増えます。そのため、近年では拡底杭※2や高強度コンクリート杭※3の採用により、杭径を最小限に抑えるかわりに鉄筋量を増やすことで耐震性能を確保する傾向にあります。しかし、鉄筋が過密化すると施工性が低下するだけでなく、コンクリート打設時の充填性が悪くなり、品質の低下につながる恐れがあります。また、場所打ちコンクリート杭の場合は、安定液中にコンクリートを打設するなど、特殊な条件での施工方法となることから、高強度鉄筋を用いる場合にパイルキャップへの定着長さ、重ね継手長さの設計手法が確立されていない等の問題がありました。
- ※1地盤を削孔するときに孔壁が崩れないように保護するための液体
- ※2より高い支持力を発揮するため、杭先端の径のみ大きくした杭
- ※3設計基準強度が45 N/mm2を超えるコンクリートを打設して造成された杭
詳細情報
杭を想定した各種実験
これまで高強度鉄筋を場所打ち杭の主筋として用いた実績がなく、杭を想定した各種実験を実施し、高強度鉄筋を杭主筋に採用した場合の設計手法を確立しました。
一般評定取得
株式会社安藤・間、株式会社奥村組、佐藤工業株式会社、鉄建建設株式会社、東急建設株式会社、株式会社戸田建設、西松建設株式会社、株式会社長谷工コーポレーション、三井住友建設株式会社9社共同で、主筋に高強度鉄筋を用いた場所打ちコンクリート杭の設計手法に関して、(一財)ベターリビングにて一般評定(CBL FP020-22号)を取得しました。
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