基礎構造を粘り強く、シンプルに場所打ち杭用杭頭半固定工法『キャプテンパイル工法』
概要
キャプテンパイル工法は、プレキャストコンクリート製のリング(PCリング)を杭頭にかぶせ、杭と基礎とを接合する工法です。杭頭接合部を半固定化することにより、地震時の杭頭部応力を低減させ杭の損傷を少なくできます。
採用メリット
キャプテンパイル工法の特徴
- 1.他の杭頭半固定工法に比べて施工性が良い
- シンプルで施工性がよく、確実に半固定性能を発揮できる杭頭接合法です。引張定着筋は、シースグラウト挿入方式を採用すれば、杭コンクリ-ト打設後の杭余盛りコンクリ-トはつりが容易になります。
- 2.杭3,000mmの大口径場所打ち杭までの広範囲をカバー
- 鋼管巻きを含む杭径3,000mmの大口径場所打ち杭まで適用可能です。主に既製杭用として用いられているキャプテンパイル工法と合わせ、ほぼ全ての杭種、杭径をカバ-することが出来ます。
- 3.コスト、工期も従来工法に比べ経済的
- 杭頭接合部の要素が少なく、材料費・施工費ともに安価です。在来工法と比べて杭・基礎の工事費で1割程度のコストダウンができると試算しています。杭にかかる曲げモーメントが少なくなれば、杭径を小さくできるため、コストダウンにつながります。杭・基礎部の工期は在来工法に比べて1割近く低減できます。
- 4.専用設計ソフトを使い簡単・スピーディに計算ができる
- 杭材、軸力、せん断力、地盤定数等の条件を入力するだけで、極めて短時間に固定度算出、応力図表示、断面算定を行うことができます。
施工実績
- ルミナリータワー池袋(東京都豊島区、RC30階、2013年2月竣工)
- カワサキアイランドスイート(川崎市、RC造19階、2013年8月竣工)
ほか11物件(2016年10月現在)
開発の目的・背景
従来型の杭工法は、杭頭主筋を基礎に十分長く定着させ、杭頭を完全固定に近づけようとするため、杭主筋の量も多く、基礎梁鉄筋とも干渉しがちで、施工性にもやや難点がありました。一方、杭頭半固定工法は、杭頭接合部を半固定化することにより、地震時の杭頭部応力を低減させることで、杭材の損傷を少なく出来、合わせて、杭や基礎梁などのコスト低減も図れるという利点があります。鹿島では、2002年に「キャプリングパイル工法」を開発し、(一財)日本建築センターの一般評定を取得しました。同工法はプレキャスト製のリングを杭頭にかぶせ、杭と基礎を接合する工法で、特に、施工性に優れ、これまでに約100箇所の現場で、5,000本以上の実績をあげています。しかし、キャプリングパイル工法は、場所打ち杭に対しては引っ張り抵抗が期待できない構造であるため、場所打ち杭への適用は数件にとどまっていました。そこで、鹿島では、キャプリングパイル工法に引っ張り抵抗に対する機能を付加することをメインに、適用杭径の拡大、接合部断面縮小による効率的な半固定化実現を盛り込んだ本工法の開発を進めることとしました。
キャプテンパイル工法は、半固定化により杭径を小さくでき杭断面積も少なくなるため、杭頭のせん断力に対する補強は、普通強度の鉄筋では配筋出来ず、高強度せん断補強筋の採用が不可欠となります。このことから、鹿島は、2004年4月に場所打ち杭用帯筋として高強度せん断補強筋を用いた設計法の一般評定を取得した鋼材メーカーの高周波熱錬、及び、本工法の共同開発に賛同・参加希望のゼネコン8社、以上合計9社と共同で本開発を行うこととしました。開発に当たっては、各社のノウハウを引き出し、費用も分担することにより開発期間も短縮することが可能となりました。
詳細情報
当研究所における取り組み
共同開発会社10社※で「キャプテンパイル工法研究会」を組織し,構造実験および施工実験を行い、その結果をもとに設計・施工システムを確立させ、 2005年12月に(一財)日本建築センターの一般評定を取得しました。
一般評定取得後は「キャプテンパイル協会」が2006年4月に設立され、当社も参加して工法の改善、普及等を継続的に行っています。
- ※参加会社
鹿島建設(株)、(株)奥村組、五洋建設(株)、戸田建設(株)、飛島建設(株)、西松建設(株)、(株)長谷工コーポレーション、松井建設(株)、三井住友建設(株)、高周波熱錬(株)