木造耐火建築物向け 耐火構造中空床及び耐火外壁の安全安心且つ省施工を実現した設備開口部工法耐火木造建築物向け設備開口部工法
開発の背景と概要
2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするカーボンニュートラルを目指す政府の方針に沿って、建築物の省エネ性能の向上や再生可能エネルギーの導入が進められています。その一環として木造建築は二酸化炭素排出量が少なく炭素を固定貯蔵するため脱炭素社会実現に効果的です。このような背景により木造中高層集合住宅増加が予想され火災時安全性を最優先とした省施工化設備貫通工法が求められている。そこで1時間耐火構造※木造中空床を貫通する「耐火木造建築物向け排水集合管」及び耐火外壁を貫通する「断熱スリーブを使用した省施工耐火外壁開口工法」を火災時の安全性を確保しつつ省施工化を実現させた新工法を開発しました。
- ※耐火構造
建築基準法改正(令和5年4月1日施行)の「耐火性能に関する技術的基準の合理化」。木材利用促進に資する観点から、階数に応じて要求される耐火性能基準について、60分刻みから30分刻みへ精緻化された。改正前は、4階建て以下の建築物では1時間の耐火性能、5階以上14階建て以下の建築物では最大2時間の耐火性能が要求されていたが、改正により階数5階以上9階建て以下の建築物の最下層については、90分耐火性能でも設計可能です。
採用メリット
耐火木造建築物向け排水集合管(株式会社クボタケミックスと共同開発)
1時間耐火構造の木造中空床を配管等が貫通する場合は、非加熱側への遮炎性のみならず、床内部への火熱の進入により耐火構造としての性能が損なわれないようにする必要があり、配管貫通部の周囲を強化せっこうボード等にて要求耐火時間に適合する厚さ、枚数の防火被覆を連続的に施す必要があります。この工法を「メンブレン耐火被覆」といいますが、「メンブレン耐火被覆」は施工に手間が掛かるため、火災時の安全性を確保しつつ省施工化の実現が求められています。この問題を解決するために実験等により耐火構造の床の耐火性能を損なわないことが確かめ、火災時の安全性を確保しつつ省施工化の実現を目標とした排水集合管貫通部の「メンブレン耐火被覆」を施さない新工法を開発しました。尚、本工法は国内で初めて耐火木造建築物向け排水集合管として国土交通大臣認定を取得しました。
断熱スリーブを使用した省施工耐火外壁開口工法(因幡電機産業株式会社と共同開発)
耐火外壁の換気口・給気口・ACスリーブ等を設置又は配管配線等を貫通させる場合は、1時間耐火構造の木造中空床同様に非加熱側への遮炎性のみならず、壁内部への火熱の進入により耐火構造としての性能が損なわれないようにするため開口貫通部の周囲を強化せっこうボード等にて要求耐火時間に適合する厚さ、枚数の防火被覆を連続的に施す「メンブレン耐火被覆」が必要ですが、火災時の安全性を確保しつつ省施工化の実現を目標とした「断熱スリーブを使用した省施工耐火外壁開口工法」を開発しました。具体的には現場施工の強化せっこうボードを用いた「メンブレン耐火被覆」を、体内に入っても溶解性を有するよう開発された高断熱素材を用いた円形の断熱スリーブの製品を用いた新工法です。
まとめ
国内外を問わず、「カーボンニュートラル」という木材の特徴を活かした地球温暖化防止・循環型社会の形成への貢献・SDGsやESG投資の観点・炭素貯蔵や二酸化炭素排出削減・脱炭素への意識の高まり等を背景にビル・ホテル・集合住宅の木造化・木質化に向けた取組みが進められています。構工法・壁や床の耐火性能等の様々な研究開発がなされていますが、設備の開口部については施工性や省力化や耐火性能等を考慮した商品や工法の開発は殆どされていない現状です。開発した木造耐火建築物向け耐火構造中空床及び耐火外壁の安全安心且つ省施工を実現した設備開口部工法を採用する事により、より一層、木造化・木質化の建築物の推進が図れると期待します。
尚、本工法は当社設計施工の千葉県浦安市及び東京都目黒区の集合住宅にて採用しました。