排水の常識が変わる「サイホン排水システム」のとりくみ無勾配排水工法『サイホン排水システム』
概要
サイホン排水システムは、野村不動産(株)・(株)ブリヂストンと共同で開発を進めている排水システムで、排水を勾配に頼らない事から、平面プランの自由度を高めることが可能となりました。第一段階としてキッチンディスポーザでの実用化を完了しています。
採用メリット
1.将来のメンテナンス性・更新性を向上
「サイホン排水システム」は1つ下の階に水が落ちることでサイホン力を発生させ、強い水流により排水性が向上します。その結果,水平管(横引き管)の搬送距離が長くなる、つまり,排水立て管を共用部に配置することが可能となり、住戸内に立ち入ることなく配管洗浄等のメンテナンス作業が可能となります。さらに、排水立て管の更新工事が容易になるため、維持管理の作業性向上が図れます。
また、従来の排水システムは、勾配依存の非満流排水であるために管内の側面に固形物が付着しやすく、詰りの要因となることもありましたが、「サイホン排水システム」では、強い水流と満水での排水による自掃能力で排水管の詰りが軽減されます。
さらに、従来排水管より小口径、かつ排水管の無勾配化を図れるため、省資源、床下スペースの縮小等のメリットが期待できます。
2.マンションのプランバリエーションを拡充
従来の排水システムは勾配依存のため、水廻り設備の近くに排水立て管を設置する必要があり、水廻りのレイアウトに制約がありました。「サイホン排水システム」では、水廻りのレイアウトが自由になるため、プランバリエーションの拡充が図れます。今回はキッチンへの実用化が可能となりました。これにより家族構成や介護対応などライフスタイルの変化に応じた間取りの変更が可能となり、資産価値の向上も期待できます。
プランバリエーションの拡充
開発の目的・背景
非満流の重力式を前提とする現行の排水システムは、勾配をつけた横引管を床下に設けて排水するため搬送力が弱く,自由度が低くなります。向上させるためには,二重床の懐を大きくとる必要がありました。一方、小口径管を用いた「サイホン排水システム」は,サイホン力により無勾配でも搬送力が強いため、二重床の懐を過度に大きくとる必要がなく,自由度の高い設計が可能となります。本開発では、サイホン力を如何に発生させるか、通気をどのように確保するのか等の技術的課題を検討し、実用化を推進してまいりました。
サイホン排水システム開発の流れ
2006年8月に(株)ブリヂストンと当研究所を中心として共同研究に着手しました。2015年5月に実用化の目途が立ったとしてプレス発表を行いました。
サイホン排水システムの開発に当たっては、排水性能の他、通気の取り方、音対策、施工性、維持管理メンテナンス方法等様々な検証が必要でした。当研究所では、実際にサイホン排水システムを設置し、それらの項目を一つ一つ検証してまいりました。今後、ユニットバスや洗濯排水などのユーティリティ排水、トイレ排水などへの採用拡充を目指しています。