2024年11月26日

 ㈱長谷工コーポレーション(本社:東京都港区、代表取締役社長:池上 一夫、以下「当社」)と共同開発会社※1(以下、共同開発会社9社)は、主筋に高強度鉄筋※2を使用した場所打ちコンクリート杭(以下、「場所打ち杭」)の構造性能を確認し、その設計手法に関して、(一財)ベターリビングにて一般評定※3を取得しました。
 従来よりも強度の高い鉄筋を主筋に用いることで、杭の合理的な設計を可能とするとともに施工性や施工品質の向上を実現します。 

※1)(株)安藤・間(本社:東京都港区、社長:国谷 一彦)、(株)奥村組(本社:大阪府大阪市、社長:奥村 太加典)、佐藤工業(株)(本社:東京都中央区、社長:平間 宏)、鉄建建設(株)(本社:東京都千代田区、社長:伊藤 泰司)、東急建設(株)(本社:東京都渋谷区、社長:寺田 光宏)、(株)戸田建設(本社:東京都中央区、社長:大谷 清介)、西松建設(株)(本社:東京都港区、社長:細川 雅一)、三井住友建設(株)(本社:東京都中央区、社長:柴田 敏雄)の9社
※2)一般的には降伏点強度もしくは0.2%耐力の下限値(以下、降伏点強度)が490N/mm2以下の鉄筋が用いられるのに対し、降伏点強度590~685N/mm2の鉄筋を高強度鉄筋と呼ぶ。
※3)建築物もしくはそれを構成する部分について、構造安全上支障がないかの審査を依頼し、その性能を証明するものとして第三者機関(審査機関)より評定書が発行される。

1.開発の背景
 場所打ち杭は安定液※4)を用いて地盤を削孔し、孔内に鉄筋かごを建込み、コンクリートを打設して造成します。杭は建物荷重を支持するとともに、地震等で発生する水平力に対して、コンクリートと鉄筋で対応します。建物の規模や想定される地震によって適切な杭径、鉄筋量、コンクリート強度などを決定しますが、杭径を大きくすると杭を築造する孔の掘削土量や杭のコンクリート量が増え、環境負荷が大きくなるとともに、コストおよび作業量が増えます。そのため、近年では拡底杭※5)や高強度コンクリート杭※6)の採用により、杭径を最小限に抑えるかわりに鉄筋量を増やすことで耐震性能を確保する傾向にあります。しかし、鉄筋が過密化すると施工性が低下するだけでなく、コンクリート打設時の充填性が悪くなり、品質の低下につながる恐れがあります。
 また、場所打ち杭の場合は、安定液中にコンクリートを打設するなど、特殊な条件での施工方法となることから、パイルキャップへの定着長さ、重ね継手長さなどの設計手法が確立されていない等の課題がありました。

※4)地盤を削孔するときに孔壁が崩れないよう保護するための液体
※5)より高い支持力を発揮するため、杭先端の径のみ大きくした杭
※6)呼び強度45N/mm2を超えるコンクリートを打設して造成された杭

2.本技術の概要
 本技術は、これまで場所打ち杭の主筋に用いられていた鉄筋(降伏点強度が490N/mm2以下の鉄筋)よりも高い強度の鉄筋(降伏点強度が590~685N/mm2の鉄筋)を主筋として用います。これまで高強度鉄筋を場所打ち杭の主筋として用いた実績がなく、前記課題を解決するために、杭を想定した各種実験を実施し、高強度鉄筋を杭主筋に採用した場合の設計手法を確立しました。

3.本技術のメリット
場所打ち杭の主筋に高強度鉄筋を使用することで、以下のメリットが期待できます。
・従来強度の鉄筋を用いる場合に比べて主筋本数の削減が可能
・主筋本数の削減により、鉄筋かごを建込む際の施工性の向上および基礎梁鉄筋との干渉の改善
・鉄筋本数の削減に伴うコンクリート充填性の確保など品質の向上
・強度の高い鉄筋を用いることで杭耐力を向上させることが可能
・杭耐力が向上するため、主筋の配置に余裕のある場合など杭径を縮小することが可能
・杭径縮小により掘削土量およびコンクリート量が削減され、コストおよび環境負荷の低減に寄与

4.今後の展開
 共同開発会社9社は、本技術の実物件への適用を推進し、幅広い活用を目指していきます。

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