大切にしたい風景
生物多様性

私たちの事業活動は、豊かな自然環境のうえに成り立っています。汚染予防、自然と生態系への配慮に努めるとともに、その回復にも貢献していきます。

長谷工グループ生物多様性行動指針

基本理念

長谷工グループは、「都市と人間の最適な生活環境を創造し、社会に貢献する。」をグループ理念に掲げ、企業活動を行っています。人や企業は、自然環境からの様々な恵みを享受していることを認識し、生物多様性に配慮した企業活動を行うことにより、この保全並びに改善に資するよう努め、より快適で持続可能な地球環境を目指して参ります。

行動指針

  • コンプライアンス
    生物多様性保全に関する法令等を順守するとともに、関連政策や社会的要請を把握し、その知見を事業活動に反映するよう努めます。
  • 教育啓蒙
    生物多様性の保全活動のために必要な知識・法令等の情報を、社内教育等を通じて普及展開し、生態系の価値に対する社員の認識を高めます。
  • 建設事業における配慮
    生物多様性に配慮した計画・設計・提案の実施、工事による影響の回避・低減に努めます。
  • 研究開発
    生態系に関する情報や技術的知見の集積を行い、関連する技術研究開発を進めます。
  • 社会との協調
    地域の環境保全活動や学会・協会活動への参加を通じて、社会への貢献に努めます。

TNFD提言に基づく開示

長谷工グループは、住まいと暮らしの創造企業グループとして、「都市と人間の 最適な生活環境を創造し、社会に貢献する。」ことを目指しています。長谷工グループの手掛ける各事業は、自然環境からの様々な恵みを享受しつつ、自然に影響も与えていると認識しています。その為、生物多様性の喪失が進んでいることは決して無視できないことであると考えています。
かかる状況を踏まえ、長谷工グループは、生物多様性への対応を重要な経営課題の一つと捉え、長谷工テクニカルセンターを自然共生サイト・OECMに登録し、TNFD提言に沿った情報開示を進めるとともに、国の施策や社会の動向を注視し、適切に対応しながら、持続可能な社会の実現と企業価値の向上を目指していきます。

ガバナンス

長谷工グループではサステナビリティの実現に向けて、下図のマネジメント体制の運用を通じて、CSR活動の組織的な推進を図っています。
取締役会の下部組織として、長谷工コーポレーション社長を委員長とする「サステナビリティ委員会」を設置しており、生物多様性への対応を含む、サステナビリティに関する方針、活動計画の審議・決定ならびに活動状況の把握・レビューを行っています。なお、サステナビリティ委員会での審議・報告事項については、取締役会に報告され監督される体制となっており、重要な事項については取締役会に付議し審議の上決定しています。サステナビリティ委員会で取りまとめられた生物多様性関連の経営課題は、事業戦略や投資戦略等、長谷工グループの経営戦略の検討時に考慮していきます。
また、委員会の下部組織として、「サステナビリティ推進会議」を設置し、生物多様性の取り組みなども含め、グループ全体でのCSR活動の推進・浸透に取り組んでいます。

マネジメント体制図

各会議体の役割

会議体 役割 構成 開催頻度 事務局
サステナビリティ
委員会
経営レベルでのCSR経営の
審議・決定
【委員長】長谷工コーポレーション代表取締役社長
【委員】長谷工コーポレーション各部門担当役員
グループ各社社長
年2回 サステナビリティ
推進部
住宅企画推進室
サステナビリティ
推進会議
CSR経営の具体的施策の
審議・実行
【メンバー】長谷工コーポレーションおよび
グループ各社役員・部長
年3回

戦略

長谷工グループは、自社事業における自然関連の依存・影響、リスク・機会の評価を実施しました。評価作業は、TNFDが推奨する「LEAPアプローチ」に沿って進めました。まず、Scoping(評価対象の選定)にて、評価対象とする範囲を選定した後、Locate(自然との接点の発見)、Evaluate(依存・影響の評価)、Assess(リスク・機会の評価)、Prepare(対応策の検討)を実施しました。

評価対象範囲の選定
(Scoping)
長谷工グループの全事業を対象に、潜在的な自然への依存・影響の大きさを把握しました。その結果を踏まえて、建設事業を評価対象に選定し、サプライチェーン上流については、建設事業の主要原材料のうち、セメントを評価対象として選定しました。
自然との接点の発見
(Locate)
サプライチェーン上流を対象に、自然との接点を把握。セメントの調達先エリアを整理して、該当エリアの自然の状態などを評価しました。
依存と影響の評価
(Evaluate)
建設事業のサプライチェーン全体における自然への依存・影響を特定し、その大きさを評価しました。
リスクと機会の評価
(Assess)
建設事業のサプライチェーン全体における自然関連のリスク・機会を特定し、その大きさや発生可能性を評価しました。
対応と報告の準備
(Prepare)
評価したリスクの対応策、機会に該当する取り組みを整理して、情報開示に向けて準備しました。

評価対象範囲の選定

長谷工グループの主な事業の中で事業規模が大きく、自然への影響も大きいと考えられる「建設関連事業」を評価対象としました。
建設関連事業のサプライチェーンのうち、評価対象範囲を決めるために、TNFD推奨ツールであるENCOREを用いて、サプライチェーン全体における自然との関係性が大きい事業・調達物を評価しました。なお、サプライチェーン上流としては、長谷工グループでの調達量が大きく、かつSBTs for Natureが整理したHigh Impact Commodity Listに選定されている「セメント」「鉄鋼」「木材」を選びました。
評価の結果、直接操業とサプライチェーン上流で自然への依存・影響が大きかったことから、これを評価対象にすることとしました。さらに、サプライチェーン上流については、依存・影響の大きさおよび調達量を踏まえて、「セメント」を評価対象にしました。
※ENCORE:幅広いセクター・業種の企業が、自社の操業地や取引先の原材料調達地について、自然への影響や依存度を容易に評価・把握することが可能なツール

評価対象範囲

調達物の調達量

主要建設資材(2023年度実績)
鉄筋 196千t
鉄骨  32千t
生コンクリート 1,304千㎥

優先地域の評価

今回の優先地域の評価では、評価対象として選定したセメントの製造工場、およびその主要原材料である石灰石の鉱山の位置情報を把握し、その周辺にある自然の状態などを評価しました。
セメント及びその原材料である石灰石は、すべて日本国内より調達されています。石灰石の鉱山は全国各地に分布していますが、九州北部や埼玉県などにより多く分布しており、セメントも、その周辺で特に多く生産されています。
今回、自社の調達しているセメントについては、国内のセメント製造工場および石灰石の鉱山の分布を踏まえると、以下のように評価することができました。保全重要度、生態系の完全性の観点で、一部の石灰石鉱山・セメント製造工場が評価・対応の優先度が高い可能性があることが分かりました。

保全重要度 一部の石灰石鉱山、セメント調達先は、保護地域及びKBA(Key Biodiversity Area)と近接している可能性がある。
生態系の完全性 一部の石灰石鉱山、セメント調達先は、生態系の完全性が高い地域にある可能性がある。
生態系の完全性
の急激な劣化
ほとんどの石灰石鉱山、セメント調達先は、生態系の完全性の急激な劣化の懸念のある地域にはない。
物理的な水リスク ほとんどの石灰石鉱山、セメント調達先は、水ストレスが高い地域にはない。
生態系サービス
の重要度
石灰石鉱山、セメント調達先周辺に、先住民族・地域コミュニティが存在している可能性は低い。

依存・影響の評価

Evaluateフェーズでは、自社の建設関連事業がサプライチェーンを通じて、自然にどのように依存し、影響を与えているかを整理しました。
上流であるセメントの製造については、全体的に依存・影響が大きく、なかでも土地利用の変化や水資源の利用、水の供給への依存が大きいことが分かりました。
直接操業である建設業においては、土地利用の変化や水資源の利用、汚染などの観点で自然に影響を与えており、水資源の供給や水量調節、気候制御などの観点で自然がもたらす恵みに依存していることが分かりました。

上流・直接操業における依存・影響に関する影響度(ヒートマップ)

上流・直接操業における依存・影響に関する概要

主な影響
対象 原料調達(セメント) 建設
土地利用
  • ・砕石活動等にともなう、生物の生息域の改変など、土地利用の変化(陸域・淡水域・海域)
  • ・建設に伴う、生物生息域の改変(陸域・淡水域)
資源採取
  • ・砕石やセメント・生コンクリート製造における地表水や地下水の利用
  • ・石灰岩、砂利などの鉱物資源を利用
  • ・建設時の地表水や地下水の利用
気候変動
  • ・調達・製造時における、温室効果ガス排出
  • ・建設時の温室効果ガスの排出
汚染
  • ・砕石活動等にともなう、粉塵の発生
  • ・セメント製造時などにおける、二酸化硫黄や窒素酸化物などの発生
  • ・採掘時や製造時に発生する化学物質の流出や固形廃棄物による、水質や土壌への汚染
  • ・建設時に発生する排気ガス、粉塵などの大気への汚染
  • ・建設廃棄物の発生
攪乱
  • ・採掘活動やセメント・生コンクリート製造時における騒音などの発生
  • ・活動に伴う騒音の発生
  • ・造園などによる侵略的外来種の導入
主な依存
対象 原料調達(セメント) 建設
供給サービス
  • ・地表水と降水量を含む、水の安定供給(採石場やコンクリート製造において使用)
調整サービス
  • ・河川等の水量や適切な降水量など水量を調節し、かつきれいな水を提供する機能
  • ・異常気象(高温・低温、大雨・大雪など)の発生や程度を抑制する機能
  • ・洪水や暴風の発生や程度を抑制する機能

リスク・機会の評価

LocateフェーズとEvaluateフェーズの評価結果を踏まえて、建設事業に伴う自然関連のリスク・機会を特定して、その大きさや発生可能性を検討しました。
リスクについては、気候変動リスクのシナリオ分析でも一部評価していますが、洪水や干ばつにより調達先や建設現場が被害を受けることで、調達難や工事の遅延が発生する物理リスクに加えて、セメントのトレーサビリティや採掘現場の持続可能性の確保への対応が求められることや、土地改変や汚染などに関する規制が強化されることによる移行リスクが発生する可能性が認識されました。
一方で機会については、環境配慮型コンクリートの需要、緑地創出や木造建築への要請、生物多様性認証制度の取得、環境配慮型燃料等利用による建設時のCO2削減や、災害に強いマンションづくりなどが考えられました。
重要と考えられるリスク・機会については、現在実施している対応策を引き続き実施していきつつ、さらなる対応策の検討も進めていく予定です。また、今年度は建設事業、その中でも調達物についてはセメントを対象に評価しましたが、今後、他の事業・調達物についても評価・開示を進めていく予定です。

分類 リスク・機会の内容 大きさ 発生
可能性
時期
上流
(セメント)
物理
リスク
水不足や自然災害などによるセメント生産量の不安定化 中期
移行
リスク
セメントのトレーサビリティや採掘現場での持続可能性の確保に向けた対応コスト増加 中期
機会 環境配慮型コンクリートやセメント代替原料の開発・利用による需要獲得 中期
直接操業
(建設業)
物理
リスク
水不足や自然災害などによる建設工事の遅延 短期
水不足や自然災害、気候変動などによる居住者の住宅満足度低下 短期
移行
リスク
土地改変の規制強化による案件減少 中期
汚染、騒音、GHG排出などの建設時の環境負荷に関する規制強化への対応コスト増加 中期
建設物の利用時の環境負荷に関する規制強化への対応 中期
機会 緑地創出や木造建築、生物多様性の認証制度の取得などによる需要獲得・評判向上 中期
環境配慮型燃料や電動フォークリフト利用などによる、建設作業時のCO2削減 中期
森林や自社施設での保全活動や、活動を通じた緑化技術の開発 中期
災害に強いマンションづくりによる需要獲得 中期
ZEH-M事業などの建築物の省エネの推進による需要獲得 中期

対応策の整理

評価したリスクの対応策と機会に該当する取り組みを、以下の通り整理しました。

上流(セメント)
  • ・CSR調達ガイドラインの遵守
  • ・新建材の技術開発(環境配慮型コンクリートの推進他)
  • ・建設資材のリユースやリサイクルの推進
  • ・代替品利用による使用量削減
直接操業(建設業)
  • ・集合住宅における木造活用の推進
  • ・環境配慮設計の推進
  • ・生物多様性配慮、自然共生サイト認定やABINC認証の取得
  • ・施工時の汚染や騒音などの適正管理
  • ・BCPの策定
  • ・機械化の推進による施工作業の効率化や省力化・省人化

リスクの影響と管理

自然関連リスクについては、関係各部で横断的に議論をし、自然関連リスクの洗い出し、事業への影響度の分析を行っています。分析されたリスクはサステナビリティ委員会で審議され取締役会に報告される体制となっています。
なお、今回は、分析の第一段階として、財務への影響に係る定量的な算出は行っていませんが、リスクが顕在化する可能性や時期、顕在化した場合の影響、現在の対策の状況等を定性的に評価し、影響度を大・中・小に分類しました。
長谷工グループは、様々なリスクに対して、リスク関連情報の収集に努め、リスクの大小や発生可能性に応じて、リスク発生の未然防止策や事前に適切な対応策を準備することにより、損失の発生を最小限にするべく、リスク管理部を中心に組織的な対応に取り組んでいます。
具体的には、経営管理部門の各セクションが連携をとりながら職務の役割に応じて業務執行状況をチェックする体制とし、更に、監査部によるチェック体制を整えております。業務執行の意思決定の記録となる稟議制度においては、電子稟議システムにより監査役及び経営管理部門がその内容を常時閲覧、チェックできる体制を構築しています。
また、取締役会、経営会議、2つの業務執行会議である営業執行会議及び技術執行会議へ付議される案件のうち多数の部署が関わる案件、専門性の高い案件については、諮問会議・委員会を設けることで、事前の検証を十分に行うとともに、モニタリングが必要なものについては定期的な報告を義務付けています。
加えて、長谷工グループ全体のリスク管理体制の強化を目的として、社長を委員長とするリスク統括委員会を設置し、リスク管理に関する社内規程に基づき、リスクの横断的な収集、分析、評価、対応を行っています。
今後は更なるリスク管理の高度化を目指し、リスク管理体制の強化を進めていきます。

指標と目標

当社グループでは、下記指標について、その実績を測定・開示してモニタリングしています。

指標 大きさ
土壌に放出された汚染物質の種類別総量 環境不具合ゼロ
廃水排出 ESGデータ「水使用量(千㎥)>総排水量」を参照※1
廃棄物の発生と処理 ESGデータ「廃棄物排出量」「廃棄物リサイクル量」「廃棄物最終処分量」を参照※1
プラスチック汚染 資源循環「建設廃棄物処理状況」を参照※2
大気汚染物質総量 ESGデータ「有害物質・大気汚染物質量」を参照※1
水不足の地域からの取水量と消費量 ESGデータ「水使用量(千㎥)>総取水量」を参照※1
調達するハイリスクコモディティの量 マテリアルフロー「鉄筋」「鉄骨」「生コンクリート」投入資源量を参照※3

目標・実績については、下記のページをご参照ください。