2004年07月07日
長谷工コーポレーションは、この度、マンション住戸内における床段差の解消(バリアフリー化)に有効でワイドスパンにも対応できる「段差付きプレストレスト鉄筋コンクリート造スラブ(PRCスラブ)」を開発しました。PRCスラブは、工場で製作する合成スラブに比べ経済的であるとともに、小梁や袖壁を必要としないため間取りの自由度が高まり、将来のリフォームにもフレキシブルに対応することができます。今回の開発にあたっては、構造安全性や重量床衝撃音などの諸性能の確認に加えて、長期にわたる床のたわみ性状を解明するため、当社技術研究所(埼玉県越谷市)で約1年半にわたって8m超のワイドスパンを想定した大型実大試験体を用いた長期載荷実験を実施しました。その結果、PRCスラブはRCスラブに比べ、ひび割れやたわみ性状などに優れており、段差の有無はそれらの性状に影響を及ぼさないことを確認しました。【背 景】
近年、社会的にバリアフリー化が推進され、マンションにおいても住戸内の床段差を解消するために、水回り部分の床スラブに段差を設ける構造などが採用されています。また、開口部が大きい南面3室プランなどへのニーズの高まりを受けて、ワイドスパンへの要請が高まっています。その対応策として、床スラブにプレストレスト鉄筋コンクリートを採用する方法がありますが、PRCスラブに床段差を設けた場合の影響は解明されていなかったため、ワイドスパンについてはこれまでの多くは合成スラブや、小梁や袖壁を設けたRCスラブを採用してきました。ただし、合成スラブの場合は工場からの運搬経費などで割高になり、小梁や袖壁は設計の自由度を低下させるという課題がありました。
【今後の展開】
バリアフリー化やスパンの拡大、将来のリニューアルに備えた自由度の高いマンションのニーズは、これからますます高まってくるものと予想されます。こうしたユーザーのニーズに応えるための技術提案の1つとして「段差付きPRCスラブ」を位置づけています。スパン8.5mまでのひび割れやたわみ性状などの諸性能を確認できたことで、ほぼ全てのワイドスパン・プランに対応可能です。
今回の実験結果をもとに社内の設計・施工指針を作成しており、既に関西地区では採用を開始し、近く首都圏でもマンション事業者に提案してまいります。
【「長期載荷実験」概要】
試験体は、(1)段差がなく均等にPC鋼線を配線したPRCスラブ (2)段差のあるPRCスラブで段差床部にPC鋼線を配線しないPRCスラブ (3)段差のないRCスラブ の実大試験体を製作し、ひび割れ性状、たわみ性状などを実験比較しました。
その結果、以下の点について確認できました。
1. PRCスラブのひび割れは、段差床の有無やPC鋼線の配線方法にかかわ
らずほぼ同程度。ひび割れ本数はRCに対して大きく減少するとともに、最大
ひび割れ幅も、RCの0.35mmに対して0.04mmとごく僅か。
2. 段差床内にPC鋼線を配線せず、段差床両側のリブ内にPC鋼線を集約して
配線した段差付きPRCスラブのたわみは、PC鋼線を均等に配線した段差
のないPRCスラブとほぼ同じ。載荷650日後のたわみは、いずれも約6mm
でRCスラブの半分以下。

【大型実大試験体を用いた長期載荷実験風景(技術研究所内)】
- PDFファイルをご覧いただくためには、
Adobe Readerが必要です。