2004年04月21日
FPC※1 工法研究会(株式会社淺沼組、安藤建設株式会社、株式会社鴻池組、株式会社錢高組、鉄建建設株式会社、東亜建設工業株式会社、株式会社長谷工コーポレーションおよび三井住友建設株式会社 :事務局 安藤建設株式会社 技術研究所 049-267-3500)は、(財)日本建築総合試験所において平成16年3月2日付けで高強度コンクリートの爆裂抑制技術(FPC工法)の建築技術性能証明※2(GBRC性能証明 第03-15号)の認証を取得しました。
FPC工法は、鉄筋コンクリート造(以下RC造と略す)の柱部材に使用する設計基準強度が60N/mm2を超え、120N/ mm2以下の高強度コンクリートにポリプロピレン樹脂粉末を1~3kg/m3混入して、部材の耐火性能を向上させる技術です。
■背景
近年、高強度コンクリートを用いたRC造部材が火災加熱を受けると、部材表層部分のコンクリートが爆裂により剥落する可能性が高いことは、周知の事実となってきています。
爆裂抑制あるいは防止のために一般にはRC造部材にモルタルや鋼板巻きなどの耐火被覆を施す工法があります。しかし、それらの工法では部材断面の増加といったデメリットもありました。
そこで、FPC工法研究会では、融点が比較的低いポリプロピレン樹脂粉末を高強度コンクリートに少量混入することによって、フレッシュコンクリートの性状変化も小さく、かつRC造部材の耐火性能を向上させることを目的に火災時の爆裂を抑制する技術を開発しました。
■FPC工法の特徴
FPC工法に用いるポリプロピレン樹脂粉末には、融点が約165℃、密度が約0.9g/cm3の粉末を使用しています。
また、粉末状であることからコンクリートへの練混ぜ影響も少なく、分散性に優れております。FPCコンクリートは、通常の高強度コンクリートと同等な製造方法、あるいは現場におけるアジテータ車による撹拌で容易に製造することができます。
これらのことから,FPC工法は,通常の高強度コンクリートと同様の設計・製造・施工が可能であり,使用に際して特別な制約は有りません。また、被覆工法と比べて部材断面の増加もなく、居住空間を有効に利用できるメリットがあります。
■開発実験
開発実験では、圧縮強度や耐久性および小型試験体による爆裂性状の確認などの基礎物性を把握した上で、実際の建物の柱を想定したモデル試験体を用い、(財)日本建築総合試験所において火災を再現した載荷加熱試験を実施しました。
その結果、FPCコンクリートを用いたRC造柱の設計荷重下の耐火時間は180分以上となり、ベースコンクリート※3を用いた部材より耐火性能が確実に改善されることが確認されました。
また、FPCコンクリートは、圧縮強度、ヤング係数、長さ変化および促進中性化試験において、ベースコンクリートと同等の性能を有していることも確認されました。
■特許その他
本工法に関する特許は、現在、出願中であります。
また、FPC工法は、「FPC工法設計・施工指針」に基づき、開発8社の責任において施工することとなっております。
今後、開発各社は高強度コンクリートを用いる超高層RC造建築物の受注を目指し、本工法の普及展開を図っていく予定です。
- ※1 FPC
Fire Performance Concrete の略称 - ※2 建築技術性能証明
新しく開発された建築技術の性能を第三者の立場から評価し、設定した認証基準を満たしていることについて性能認証書を発行する。または、その技術が達成している性能について性能証明書を発行する制度です。 - ※3 ベースコンクリート
FPCコンクリートからポリプロピレン樹脂粉末を取り除いたコンクリート
[申込案件の概要]
- 性能証明対象技術
- FPC(Fire Performance Concrete)工法
―高強度鉄筋コンクリート造柱における火災時の爆裂抑制工法―
- 性能証明申込者
- FPC工法共同開発研究会
- 運営委員長 大森 一紘
- 埼玉県入間郡大井町中央1丁目19番61号
- 安藤建設株式会社 技術研究所内
本技術は、下記8社が共同して開発したものである。
- <共同開発社>
- 株式会社淺沼組
- 大阪府大阪市天王寺区東高津町12番6号
- 安藤建設株式会社
- 東京都港区芝浦3丁目12番8号
- 株式会社鴻池組
- 大阪府大阪市中央区北久宝寺町3丁目6番1号
- 株式会社錢高組
- 大阪府大阪市西区西本町2丁目2番11号
- 鉄建建設株式会社
- 東京都千代田区三崎町2丁目5番3号
- 東亜建設工業株式会社
- 東京都千代田区四番町5
- 株式会社長谷工コーポレーション
- 東京都港区芝2丁目32番1号
- 三井住友建設株式会社
- 東京都新宿区荒木町13番地4号
技術の概要
FPC工法は、鉄筋コンクリート造(以下RC造と略す)の柱部材に使用する設計基準強度が60N/mm2を超え、120N/mm2以下の高強度コンクリートにポリプロピレン樹脂粉末を1~3kg/m3混入して、部材の耐火性能を向上させる技術である。
技術開発の趣旨
高強度コンクリートを用いたRC部材が火災加熱を受けると、部材表層部分のコンクリートが爆裂により剥落する可能性が高い。FPC工法は、融点が比較的低いポリプロピレン樹脂粉末を少量混入することによって、高強度コンクリートの爆裂を抑制することにより、RC造柱の耐火性能を向上させることを目的に開発したものである。
目標性能
- 1) FPC工法に使用するコンクリート(以下、FPCコンクリートと略す)は、RC造柱の火災時の爆裂面積率がFPCコンクリートからポリプロピレン樹脂粉末を取り除いたコンクリート(以下、ベースコンクリートと呼称)の場合より小さく、爆裂が抑制されること。
- 2) FPCコンクリートを用いたRC造柱はベースコンクリートを用いた部材より耐火性能が改善されること。設計基準強度60N/mm2を超え100N/mm2以下のコンクリートに樹脂粉末を1kg/m3混入することで、180分以上の耐火時間を満足すること。また、設計基準強度100N/mm2を超え120N/mm2以下のコンクリートに樹脂粉末を3kg/m3混入することで、180分以上の耐火時間を満足すること。
技術の適用範囲
- (1)FPCコンクリートの強度範囲
- 設計基準強度が60N/mm2を超え、120N/mm2以下の高強度コンクリートを用いる柱部材に適用する。
- (2)FPCコンクリートに使用する樹脂粉末
- FPCコンクリートに混入する樹脂は、長さ2mm以上3mm以下のポリプロピレン粉末とし、その混入量は1~3kg/m3とする。
- (3)FPC工法の施工
-
- 1) FPC工法は、「FPC工法設計・施工指針」に基づき、株式会社淺沼組、安藤建設株式会社、株式会社鴻池組、株式会社錢高組、鉄建建設株式会社、東亜建設工業株式会社、株式会社長谷工コーポレーションおよび三井住友建設株式会社の責任において施工するものとする。
- 2) FPC工法を上記8社以外が適用する場合には、株式会社淺沼組、安藤建設株式会社、株式会社鴻池組、株式会社錢高組、鉄建建設株式会社、東亜建設工業株式会社、株式会社長谷工コーポレーションおよび三井住友建設株式会社が責任をもって指導、確認する。
[証明内容の概要]
性能証明の方法
- 申込者より提出された以下の資料に基づき性能証明を行った。
- (1) 「FPC工法技術概要説明書」
- (2) 「FPC工法工法設計・施工指針」
性能証明の内容
- (1)FPC工法に使用するコンクリートは、RC造柱の爆裂面積率がFPCコンクリートからポリプロピレン樹脂粉末を取り除いたコンクリートの場合より小さく、爆裂が抑制されると判断される。
- (2)FPCコンクリートを用いたRC造柱はベースコンクリートを用いた部材より耐火性能が改善され、設計基準強度が60N/mm2を超え、100N/mm2以下のコンクリートに樹脂粉末を1kg/m3混入することで、180分以上の耐火時間を満足し、また、設計基準強度100N/mm2を超え120N/mm2以下のコンクリートに樹脂粉末を3kg/m3混入することで、180分以上の耐火時間を満足すると判断される。
性能証明番号 GBRC性能証明 第03- 15号
性能証明発行日 2004年3月2日
載荷加熱試験後の試験体状況
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