首都圏・近畿圏 分譲マンション市場動向

〜2024年の総括と2025年の見通し〜

2025年02月06日 / 『CRI』2025年2月号掲載

CRI REPORT

目次
  1. 2024年の総括
  2. 2025年の見通し
  3. 2024年マンション市場の総括
  4. 首都圏市場
  5. ●新規供給戸数は2万3,003戸、前年比14.4%減
  6. ●第1期発売開始から竣工までの期間が長期化
  7. ●都内23区は減少、郊外化が進行
  8. ●分譲中戸数、完成在庫は2年連続で前年を上回る
  9. ●平均価格は都内23区を除き上昇
  10. 近畿圏市場
  11. ●供給戸数は1万5,137戸、前年比1.6%減
  12. ●大阪市を除く主要地域で前年を上回る一方、外周地域は減少
  13. ●初月販売率は3年連続の70%台
  14. ●大阪市の上昇が影響し分譲単価・平均価格は大幅に上昇
  15. 2025年マンション市場の見通し
  16. ●分譲マンションの着工動向と供給材料の見通し
  17. ●定期借地権マンションの動向
  18. ●新規供給戸数の予測/首都圏:2万7,000戸、近畿圏1万5,500戸
  19. ●販売状況の見通し

2024年の総括

2024年の新規供給戸数は首都圏で2万3,003戸、近畿圏で1万5,137戸にとどまった。予測に対し想定を超えて供給戸数の絞り込みが強まった。首都圏では都内23区で前年比30.5%減と大きく下回り、近畿圏も大阪市で前年比25.1%減となった。商品内容については、首都圏では都内23区では分譲単価・平均価格は下落したものの、全体的には上昇傾向が継続。近畿圏では分譲単価が過去最高値を更新し、平均価格と共に前年を上回った。販売状況については、首都圏では都内23区の供給戸数構成比が低下したこともあり初月販売率は66.9%と70%を割り込む。分譲中戸数、完成在庫共に2年連続で前年を上回った。近畿圏では主要地域が堅調で初月販売率は74.3%と3年連続で70%台を維持。分譲中在庫、完成在庫は前年を下回った。

2025年の見通し

2025年の新規供給戸数は、首都圏で2万7,000戸、近畿圏で1万5,500戸と予測した。首都圏は都内23区や都下、神奈川県における供給が後押しし、2023年程度の水準まで増加。近畿圏は外周地域における大規模物件の供給が予定されており、前年の水準を維持する見通し。
販売状況については都内23区山手エリアが増加に転じ、利便性の高い地域における再開発物件なども牽引し販売状況は復調、近畿圏は郊外部における手が届く価格帯の物件が増加する見込みで、引き続き販売は堅調を維持して推移する見込み。

2024年マンション市場の総括

首都圏市場

●新規供給戸数は2万3,003戸、前年比14.4%減

新規供給戸数は1,493件2万3,003戸で前年比14.4%減。年初予測では3万1,000戸、中間見直しでは2万9,000戸程度としたが、下半期も供給戸数は積みあがらず、予測に届かなかった(図表1)。供給件数は1,493件、供給プロジェクト数は486物件といずれも前年(供給件数1,515件、供給プロジェクト518物件)より絞り込まれた。また1回当たりの供給戸数が10戸未満にとどまる小分け供給物件は、構成比61.8%を占める。前年(54.3%)を上回っており、1回当たりの供給戸数の平均値は15.4戸/件で前年(17.7戸/件)から減少している。第1期発売開始物件も261件1万536戸で前年(308件1万3,661戸)を下回り、第1期発売開始物件の1回当たりの供給戸数の平均値も40.4戸/件と近時でみても低い水準となった(図表2)

総戸数200戸以上の大規模物件は9,328戸と前年(1万812戸)を下回ったものの、新規供給戸数に全体に占める構成比は40.6%で前年(40.2%)と同水準で推移し、総戸数200戸以上かつ20階以上の超高層物件による供給戸数は4,116戸で前年(4,317戸)を下回ったが、新規供給戸数全体に占める構成比は17.9%で前年(16.1%)を上回り2015年以来の17%台となった(図表3)

●第1期発売開始から竣工までの期間が長期化

第1期発売開始物件数が前年を下回った背景として、大規模物件で着工から発売開始までの期間が長期化していることに加え、同時に全体をみると2024年は工期の長い超高層物件の供給戸数構成比が相対的に高かったこともあり、第1期発売開始時点で竣工まで1年以上の期間がある物件の割合が39.5%に拡大している(図表4)。発売開始から竣工まで長い販売期間があることで販売ペースは緩やかに推移し、第1期発売開始時をはじめ、続く供給においても戸数が絞り込まれている。また、価格の上昇傾向も相まって慎重な販売姿勢を強めた一因と考える。

●都内23区は減少、郊外化が進行

地域別供給状況を前年と比較すると、その他埼玉、その他千葉といった郊外部のみ前年を上回った(図表5)。都内23区山手エリアは、前年(6,947戸)から37.3%減の4,353戸にとどまった。前年に首都圏全体の供給戸数押上げに寄与した大規模物件の供給が一段落したことにより、港区(前年1,462戸→277戸)における減少が影響した。下町エリアでは北区(前年852戸→185戸)、足立区(同1,043戸→555戸)ほかで前年を下回り低調だった。
一方で供給戸数が前年を上回ったその他埼玉では鴻巣市(前年27戸→173戸)、入間郡三芳町(同0戸→155戸)、その他千葉では木更津市(同0戸→144戸)、印西市(同0戸→132戸)といった近時では供給が活発ではない郊外の一部で新規物件の第1期発売が行われた。同様の傾向は神奈川県でもみられ、横浜市泉区(前年0戸→178戸)や三浦市(同0戸→237戸)などで供給が行われており、供給エリアは郊外化がみられた。

●分譲中戸数、完成在庫は2年連続で前年を上回る

初月販売率は66.9%で前年(70.3%)を下回った。地域別に見ると都内23区山手エリア、川崎市、さいたま市、千葉市では70%台となったが、都内23区の供給戸数構成比が縮小したこともあり、首都圏全体では2020年以来4年ぶりに70%台を割り込んだ。
2024年12月末の分譲中戸数は6,814戸で2023年12月(6,283戸)より531戸増加、完成在庫は3,204戸で2023年12月末(3,161戸)より43戸増加した。価格が上昇している中、供給戸数の小分け化が進み、供給と同様に販売においても時間をかけて進捗していく傾向が強まったこともあり、2年連続で前年を上回った。また完成在庫は分譲中戸数より積み上がりが緩やかであるが、竣工まで期間のある物件の比率が増えたことも一因となっている(図表6)

●平均価格は都内23区を除き上昇

首都圏全体の供給商品内容をみると、都内23区の供給戸数構成比が低下したこともあり、分譲単価は過去最高値だった前年より4.0%ダウンし1,177千円/㎡、平均面積は66.42㎡で前年と同水準、平均価格は同3.5%ダウンの7,820万円だった。
地域別に商品内容をみると、都内23区の分譲単価は前年比1.0%ダウンして1,710千円/㎡、平均面積は65.39㎡で同1.7%縮小し、平均価格は同2.6%ダウンの1億1,181万円。2年連続で1億1,000万円台となった。2023年は都心3区(港区・千代田区・中央区)の供給物件が分譲単価や平均価格を牽引したが、2024年はこれら3区を除いた平均価格も前年比13.0%アップの9,786万円で、1億円を窺う水準まで上昇している。
都内23区を除く神奈川県、埼玉県、千葉県では分譲単価は前年比7.7%アップの885千円/㎡、平均面積は67.0㎡で前年と同水準、平均価格は同9.7%アップの5,932万円と上昇が継続している。再開発による大規模超高層物件の供給が行われたさいたま市では平均価格は前年比34.8%アップの7,169万円、千葉市では同31.7%アップの5,949万円と大幅に上昇した。またその他埼玉、その他千葉も5,000万円台に達している(図表7・8)

近畿圏市場

●供給戸数は1万5,137戸、前年比1.6%減

新規供給戸数は1,156件1万5,137戸で前年比1.6%減となり2023年に続き1万5,000戸台となった。年初予測、中間見直し共に1万7,000戸程度とし、上半期では前年同期比5.5%増の6,410戸が供給されたが、下半期は8,727戸にとどまり予測を下回った(図表9)。供給件数は1,156件、供給プロジェクト数は341物件で前年(供給件数1,249件、供給プロジェクト数366物件)から更に絞り込まれた。1回当たりの供給戸数が10戸未満にとどまる小分け供給物件の構成比は72.0%と前年(74.4%)に引き続き高く、1回当たりの供給戸数の平均値も13.1戸/件と前年を上回ったものの限定的だった。第1期発売開始物件は181件8,618戸で前年(194件9,158戸)を下回り、第1期発売開始物件の1回当たりの供給戸数の平均値は47.6戸/件で前年(47.2戸/件)と同水準だった(図表10)

ワンルームマンションの供給は34件2,884戸、供給戸数全体に占める構成比は19.1%で、前年(37件2,984戸、構成比19.4%)と同程度。ワンルームマンションを除くファミリー層向けマンションは1,122件1万2,253戸で前年(1,212件1万2,401戸)を下回った(図表11)
総戸数200戸以上の大規模物件は4,062戸と前年(3,069戸)から1,000戸程度増加し、新規供給戸数に全体に占める構成比は26.8%で前年(19.9%)を上回った。また総戸数200戸以上かつ20階以上の超高層物件による供給戸数も1,089戸と前年(679戸)から大幅に増加、新規供給戸数全体に占める構成比は7.2%と前年(4.4%)を上回った(図表12)

●大阪市を除く主要地域で前年を上回る一方、外周地域は減少

地域別の供給状況をみると主要地域では大阪市を除き前年を上回った。外周地域は和歌山県を除き前年を下回った(図表13)。大阪市ではワンルームマンションが1,336戸と前年(2,613戸)から大幅に減少したことも低調な供給の一因となった。一方でワンルームマンションの外周化が進み、神戸市で939戸(前年234戸)、東大阪で178戸(同0戸)、京都市で365戸(同49戸)と供給戸数の押し上げに寄与した。
阪神間は伊丹市(前年254戸→357戸)、尼崎市(同211戸→362戸)、北摂は吹田市(同338戸→836戸)などで前年を上回った。また、南大阪では大阪狭山市(同0戸→121戸)で久々に供給が行われた。
外周地域では、その他兵庫県で明石市(前年449→236戸)、その他京都府では福知山市(同111→0戸)、滋賀県は大津市(同710戸→400戸)、奈良県では奈良市(同212戸→79戸)などで前年を下回った。

●初月販売率は3年連続の70%台

初月販売率は74.3%で一昨年(72.7%)、前年(71.4%)に続き70%台となった。地域別では大阪市(78.8%)をはじめ主要地域全てで70%を上回り全体を引き上げた一方、外周地域ではその他京都府で80.5%、奈良県で73.2%だったものの、その他兵庫県で61.3%、滋賀県で65.2%、和歌山県で28.8%と好不調が分かれた。
2024年12月末の分譲中戸数は3,050戸で2023年12月末から411戸減少、3年連続で前年を下回った。完成在庫は1,417戸で2023年12月末から150戸減少。年末の完成在庫が1,500戸を下回ったのは2021年12月末以来で在庫販売は堅調に推移している(図表14)

●大阪市の上昇が影響し分譲単価・平均価格は大幅に上昇

近畿圏全体の分譲単価は前年から14.7%アップの907千円/㎡で前年に続き最高値を更新。平均面積は59.10㎡で前年(59.04㎡)と同等で、平均価格は前年から14.8%アップの5,357万円。1991年以来の5,000万円台となった。
ワンルームマンションを除いた分譲単価は前年より15.9%アップの909千円/㎡。平均面積は67.23㎡で前年(67.50㎡)と同程度、平均価格は前年より15.6%アップし、6,114万円となった。地域別では大阪市で都心部における大規模超高層物件が供給された影響もあり、分譲単価は前年より32.5%アップし1,204千円/㎡。平均面積は前年より2.7%拡大し63.48㎡。平均価格は前年より36.0%アップの7,644万円となった。平均価格は高額物件が供給されたこともあり、神戸市で6,670万円(前年比13.4%アップ)、京都市で6,679万円(同14.3%アップ)と6,000万円台に達した一方で、阪神間は平均面積が69.35㎡で前年より6.6%縮小し5,702万円で前年比4.3%ダウン、北摂でも平均面積は70.71㎡で前年より6.9%縮小し平均価格は5,462万円で前年より5.3%ダウンするなど、面積が圧縮され価格の上昇を抑制する動きも見られた。外周地域ではその他兵庫県で再開発による大規模超高層物件の供給もあり、平均価格は前年より16.4%アップして5,102万円となった。その他兵庫県以外の地域でも価格は上昇し前年を上回っているが4,000万円台で推移している(図表15・16)

2025年マンション市場の見通し

●分譲マンションの着工動向と供給材料の見通し

2024年1〜11月の分譲マンション着工戸数は首都圏では4万7,903戸で前年同期を1.8%上回ったが近畿圏は同10.1%下回る2万27戸。年間では首都圏は5万戸台前半、近畿圏は2万戸台前半となると見込まれる。
首都圏では神奈川県や埼玉県で前年同期よりわずかに下回ったものの、東京都、千葉県で前年同期を上回った。近畿圏では大阪府で前年から15.3%下回り、兵庫県、滋賀県、和歌山県でも前年同期を下回っている(図表17・18)
2024年における首都圏と近畿圏の新規供給戸数のうち戸数比率では88%が2023年以前の着工プロジェクトで、2024年着工物件プロジェクトの供給は限定的だった。2023年着工戸数のうち未発売のプロジェクトと、2022年、2023年着工プロジェクトの発売済未供給戸数から2025年の供給余力を推計すると、首都圏で4.1万戸、近畿圏で1.7万戸程度の規模となる。首都圏では潤沢な余力があると考えるが、近畿圏では着工戸数が前年同期を下回っていることも加味すると供給戸数が前年からは大幅増とはならない見通し。

●定期借地権マンションの動向

本誌CRIで集計対象外である定期借地権マンションについて2024年の供給動向を(株)不動産経済研究所「BRaiN」を元に調べると、首都圏で547戸、近畿圏で1,062戸が供給された。近畿圏では軽視できない規模の戸数が供給対象外となっている。また、過半数にあたる673戸が大阪市内における供給だったことから、大阪市の供給戸数に対する影響は大きい。
首都圏では所有権マンションに対する規模は小さく影響は限定的だが、2024年後半に複数の大規模定期借地権マンションの第1期発売が開始され2025年も供給が継続することに加え、2023年、2024年に着工した大規模定期借地権マンションが多数存在することもあり、今後、首都圏においても定期借地権マンションの存在感は強まると考える。

●新規供給戸数の予測/首都圏:2万7,000戸、近畿圏1万5,500戸

2025年の新規供給戸数については、首都圏では2万7,000戸程度、近畿圏では1万5,500戸程度の供給が行われると判断した。
首都圏における2024年の供給は、東京都の着工戸数が減少していた2022年、2023年に着工された物件が大勢を占めており、竣工まで期間の長い物件の比率も高かったこともあり都内23区の供給戸数が伸び悩んだ一因となっていた。しかし、2024年は11月末時点で東京都の着工戸数が上昇に転じたことにより着工戸数からみた供給余力が顕在化していく可能性がある。また、都内23区山手エリアで超高層大規模物件の供給が多数予定されており、都下や川崎市など都心へのアクセスの良い立地にて再開発を含む大規模物件が複数控えていることも加味し、2023年(2万6,873戸)並みの水準である2万7,000戸程度とした(図表19)
近畿圏では前年同様販売は堅調であるものの、販売戸数を小分けにした慎重な供給が続き、2024年11月末時点では着工戸数も減少していることから供給戸数は、前年(1万5,137戸)や2023年(1万5,385戸)と同程度の1万5,500戸程度とした(図表20)

●販売状況の見通し

首都圏、近畿圏共に都心部や再開発による超高層大規模物件においては引き続き旺盛な需要が見込まれ、とりわけ首都圏では都内23区山手エリアにおける供給戸数の増加が販売を牽引し、販売状況は復調すると考える。一方、近郊や郊外のファミリー向けマンションについては住宅ローン金利の動向や価格上昇、物価高の影響が指摘されている。1月24日に金融政策決定会合にて日本銀行は政策金利を0.5%とし、0.25%の追加利上げが決定された。当面、緩和的な金融環境が継続するものの、確かに注視は必要である。他方、金利の上昇は賃金の上昇が前提であり、年内に想定される利上げ幅においては返済率への影響は軽度とみられる。
影響の度合いが大きいと思われるのは価格の上昇幅である。先高観が強まる中、購入のマインドの強弱に作用する他、需要側の希望条件(エリアの拡大や面積の縮小など)が調整される可能性もある。また、借入期間を長期に設定して月々の支払額を抑えるといった動きもみられはじめている。2025年は価格の上昇の幅にもよるが、上昇が緩やかであれば、郊外においての販売状況は前年と同程度で推移すると思われる。