リフォーム&リノベーションのプロの自宅マンション改造・成功の極意

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後悔のない納得のリノベーションを成功させるには? 自宅改造も経験したプロに、マンションのリフォーム&リノベーションの極意を教えていただきました。

前回、1年半かけてリノベーションしたこだわりのご自宅を披露してくださったAさん。リフォーム&リノベーションの会社に勤務し100件以上の空間刷新に携わってきたプロとして、そして、夫婦の理想を具現化した経験者として。リフォームをする際の段取り、満足いく結果へ導くためのチェックポイントを教えていただきました。

 

 

――Aさんは、自宅のリフォーム&リノベを望むクライアントと、改善案を提案するリフォーム&リノベ業者、両方の視点を持っているわけですが、進めていく上で、まずするべきことは何だと考えますか?

 

Aさん(以下、A):これからの暮らしをどのようにしたいか、リノベーションすることによってどのような生活にしたいかを大まかにイメージして、楽しくなるような想像を是非して欲しいですね! 全面のリノベーションは決めることが本当に多くて、休日もショールームや打合せをしたりなど途中で少し心が折れるタイミングがあるのでは?と考えています。私もそうでした。
でもそんなときにリノベーションが終わった後はこんな素敵な生活が待っているんだと初心を振り返ってもらえるといいかと思います。

▲リビングダイニングの明かりは、天井に光を反射させて明かりを得るコーブ照明。光源が直接視界に入ることなく、柔らかく均一な光が広がる。コンクリート剥き出しのインダストリアルな天井のハードな印象が軽減し、部屋全体のトーンがまとまって見える

――希望を的確に伝えるのは、なかなかに難しいですよね。

 

A:私がリノベーションすることを決めてまず取り組んだのが、今住んでいる家の「不満シート」を作ることでした。作り方は簡単で、現状の間取り図をコピーしたものに、引き出し線を入れてコメントを入れていくだけ。「リビングが狭い」「家事動線が悪い」など間取りに関することから、「天井を見上げた時にシーリングライトが眩しい」「無垢のフローリング材の隙間に小さなゴミが入り込んでしまう」「トイレの電気の消し忘れが多い」といった些細なことまで。一度に全部書き込もうとすると漏れが出てきてしまうものなので、暮らしの中でちょっとしたストレスを感じた時に、その都度、携帯電話などにメモを残しておくのがおすすめです。完成したシートを元にリフォーム案を考えてみたら、自分でもびっくりするくらい、次から次へと解決策が出てきました。「不満シート」を叩き台にしてリフォーム会社の担当者さんと話を進めていけば、最短距離で適切なアドバイスにたどりつけるはずです。

▲自宅リフォームに先立ちAさんが作成した以前の家の「不満シート」。間接照明の採用やコンセントや照明スイッチの位置決定など、現在の家の暮らしやすさに生かされている

――新築とリフォーム前提では、物件探しのチェックポイントは変わるのでしょうか?

 

A:私たちの場合は、広いリビングを実現するために壁を取り払うことを考えていたので、キッチンやお風呂などの水回りが部屋の中央付近に据えられていない間取りが大前提でした。また、壁や柱、梁などは構造上撤去できない場合もあるので、空間自体を作り替えたいと考えているなら、専門家に見てもらう、不動産会社に事前に確認しておくことが重要です。買ってしまった後に発覚したという例も、今まで何度か耳にしています。また、ファミリー向けマンションによくある空間全体を十字に区切った「田の字形」のレイアウトは、プライベートや部屋数が確保しやすい反面、間取りを大きく変えるには制限がされる為、物件探しの段階でどのような暮らし、間取りにしたいかを考えて置くことがお勧めです。

 

リフォームやリノベーションがかなり一般的になったとはいえ、自分たちで一から考えるのは負担に感じる方も多いので、築年数の古いマンションなどは販売前にリフォームが済んでしまっている場合も多く、希望のリノベーションが叶う物件を見つけるのは簡単とはいえません。内見の際にリフォーム業者に見てもらうのもおすすめ。

「どこまでできるか」を事前にしっかり把握できるという点でも安心です。

▲電気の消し忘れが気になっていたトイレには、センサーライトを採用。人を感知するとゆっくりと明るくなるタイプで、夜中に起きてきた時も眩しくない。ストックを持たない主義&収納扉の開け閉めを手間に感じるため、必要最小限のオープン収納ですっきりと

――リフォーム予算が限られる場合、注力すべきポイントなどありますか?

 

A:お料理が大好きという方はキッチンに。長風呂が日課だという方はバスルームに。家の中でいちばん好きな場所、長く時間を過ごすスペースにいちばんのこだわり(お金)を振り分けることが、クオリティ オブ ライフの向上につながると思っています。ゲストを呼んで集まるリビングでも、他人の目には触れないベッドルームでもいい。家のどこでどんなふうに過ごせたら幸せか、じっくりと思い描いてみてほしいですね。

 

あと重要なのは、個人的には床材です。面積が広く家全体の雰囲気を大きく左右するものですし、素足など肌にも触れる機会も多い。ぜひ色や素材感にこだわって、お気に入りを見つけてください。

 

お部屋ごとに雰囲気を変えるために異なるフローリングを使用する方もいらっしゃいますし、犬や猫などペットが滑りにくいようなフローリングや、車いすのタイヤ痕が付きにくいフローリングなど生活に合わせて頂くのもおすすめです。
実際に私は、寝室の床材はカーペットタイルを選定しました。朝起きた時に床がヒヤッとせず、足触りが良いのでお気に入りです。タイルカーペットは50cm角の正方形なので、部分的に貼り替えができる点がメリットです。その為、子ども部屋にもおすすめですね。

▲Aさんがマンションを購入した時点ですでにリフォームが済んでいた水回り。バスルームには手を加えずそのまま引き継いだが、床には好みのフロアタイルを敷き詰めて自分らしさを演出

――素人が見落としがちな、リフォームの落とし穴ってありますか?

 

A:リフォームをしたことによって、手を入れていない部分の古さが悪目立ちすることがあります。すべてを新しく変えることができないからこそ、空間全体のバランスを見ることがとても大事なんです。例えば壁紙を新しくするなら、照明のスイッチや給気口、ブレーカーボックスなど、壁と一緒に視界に入るパーツは一緒に刷新したほうが絶対に満足のいく仕上がりになります。経験上、これは「絶対」だと言い切れます。今はリフォーム前に3Dパースでシミュレーションが見られる時代ですが、こういったディテールはリフォームが終わってからでないと気づけない盲点ですね。

▲窓は二重サッシを採用して防音性を強化している。人目の気にならない高層階の利点を生かし、カーテンは淡いグレーのレースのみ。軽やかな抜け感がリビングの広さをより印象づける。「光の当たり方によって色の見え方が微妙に変化するところもお気に入り」とか

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取材・文:稲生京子 撮影:石原麻里絵(fort)

 
 

WRITER

稲生 京子
編集者・ライター。「豊かに生きる」に関わるすべてが守備範囲。女性誌でファッション、美容、ライフスタイル記事を企画・執筆する一方、建築専門誌でも取材・インタビューを手がける。

おまけのQ&A

Q.リフォームにかけるお金。上手な予算の組み方はありますか?
A.やるやらないの取捨選択を最初から決めすぎないこと。まずはやりたいことをすべて織り込んだマックスの状態で見積もりを出してもらい、そこから不要なものを引き、妥協できる点をスイッチしていくようにすると、優先順位の高いことから実現された満足度の高い仕上がりにもっていきやすいと思います。