住宅ローン金利は今後上昇する? 2024年10月時点の見解やユーザーへの影響

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2024年7月の日本銀行による政策金利の引き上げにより、「住宅ローン金利も上昇するのだろうか」「返済額が上がってしまわないか不安」と感じている方も多いのではないでしょうか。 結論からいうと、住宅ローンの変動金利・固定金利はどちらも上昇する可能性が高いといえます。したがってこれから住宅ローンの借り入れを検討している方は、金利の上昇にともない、いくら総返済額が増えるのかなどのシミュレーションを行なったうえで適切な対策を講じることが大切です。 本記事では、住宅ローン金利の今後の動向や2024年10月時点での見解、ユーザーへの影響などを解説します。

そもそも、住宅ローン金利がどのように決まるのかが分からない方もいるのではないでしょうか。金利の動きを理解するためには、住宅ローン金利の決まり方を知っておくことが大切です。

 

ここでは、変動金利・固定金利それぞれの決まり方を紹介します。

 

 

 

変動金利は、短期プライムレート(短期金利)を基準に決められています。「短期プライムレート」とは、銀行が優良企業向けの融資に適用する最優遇金利(貸出期間は1年未満)のことです。

 

短期プライムレートの特徴は、日本銀行の政策金利の影響を受ける点です。したがって日本銀行が政策金利を引き上げると、変動金利も上昇する可能性があります。

 

なお、ほとんどの銀行では、短期プライムレートに1%上乗せした金利を基準金利として設定しています。実際の借入金利は、基準金利から優遇金利を引いたものが適用されるかたちです。

 

 

 

固定金利は、長期プライムレートをもとに設定されています。長期プライムレートとは銀行が優良企業向けの融資に適用する金利(貸出期間は1年以上)のことで、10年国債利回りのような長期金利の影響を受ける点が特徴です。

 

長期プライムレートは国の政策だけでなく、10年国債の金利の影響も受けて変動します。10年国債はそのときの経済状況や将来の展望などに応じて投資家たちによる取引がなされるため、金利の動きが活発です。そのため長期金利の影響を受ける固定金利は、日本銀行が設定する政策金利に左右される変動金利よりも先に上昇・低下するのが一つの特徴です。

 

また、住宅ローンを全期間固定金利型で借りた場合、借入期間中の金利は変わりません。しかし、変動金利よりも金利は高めに設定されています。

 

 

 

2024年3月、日本銀行はマイナス金利政策を解除しました。この出来事により、これまでマイナスだった短期金利が0~0.1%へ引き上げられ、17年ぶりの利上げとなりました。

 

2024年7月30~31日に行なわれた会合では追加利上げが決定し、短期金利が0.25%まで引き上げられています。この利上げにともない、変動金利の基準となる短期プライムレートの引き上げを発表している銀行がいくつか見られ、今後の金利動向に注目が集まっています。

 

 

住宅ローン金利が2024年10月以降、どうなっていくのか解説します。

 

 

 

住宅ローンの固定金利の近年における相場は、上昇と下降を繰り返しながら、ゆるやかに上がっている傾向にあります。ただし長期的な視点ではまだ低金利であり、2024年9月より主要銀行5社が10年型固定金利の基準金利の引き下げを発表しています。

 

しかし2024年7月に行なわれた日本銀行の会合では、2026年1~3月にかけて日本国債の買い入れ額を抑えることが決定されています。これにより長期金利が上昇し、それにともない固定金利が上がることも十分考えられるところです。

 

一方で、固定金利の相場は海外情勢の影響も受けて変動しやすいため、低下する可能性もゼロではありません。

 

 

 

これまで変動金利の相場は低い数値を保っていましたが、7月の日本銀行による追加利上げ以降、短期プライムレートの引き上げを発表する銀行が少しずつ増えています。

 

住宅ローンの変動金利は、毎年4月と10月に見直されるのが一般的ですが、どの時期に、どの程度引き上げるかは各銀行の戦略次第です。新規顧客獲得のため、政策金利が上がっても変動金利は上げない、または引き下げる銀行が出てくる可能性もあります。

 

 

 

住宅ローンには、元利均等返済方式と元金均等返済方式の2つの返済方法があります。そのうち、毎月元金と利息を均等に返済する元利均等返済方式を選んでいる方は、たとえ変動金利が引き上げられても、すぐに月々の返済額が増えることはありません。5年ルールや125%ルールを採用していない商品もありますが、多くの銀行で取り扱っています。

 

5年ルールは、金利を変更しても実際の返済額が見直されるのは5年に1回というものです。また金利が上昇しても、新たな返済額は前回の返済額の125%までしか上がりません(125%ルール)。そのため変動金利が上がっても、すぐに家計へ重い負担がのしかかるケースは少ないでしょう。

 

なお、元利均等返済方式は元金均等返済方式と比較すると、総返済額が大きくなってしまい、収入が減少した際には返済が厳しくなる一面もある点は理解しておきましょう。

 

 

住宅ローンの変動金利・固定金利の推移は、以下の表のとおりです。

実際に住宅ローンを借り入れる際には、基準金利から優遇金利を引いた金利が適用されます。優遇金利とは、特定の条件を満たすことによって適用される金利です。

 

上記の表は基準金利の推移であり、優遇金利が引かれる前の状態のため、参考程度にとらえておきましょう。

 

 

主要金融機関9社の2024年10月時点の住宅ローン金利は以下のとおりです。

金融機関 変動金利 固定金利10年 全期間固定(31〜35年)
三菱UFJ銀行 年0.345%~ 年1.11%~ 年1.77%~
りそな銀行 年0.49%~ 年1.585%~ 年1.715%~
みずほ銀行 年0.375%~ 年1.35%~ 年1.79%~
三井住友銀行 年0.625%~ 年1.70%~ 年2.57%~
※借入期間:21年~35年
SBI新生銀行 年0.42%~ 年0.95%~ 年1.55%~
ソニー銀行 年0.597%~ 年1.344%~ 年2.479%~
※借入期間:21年~35年
住信SBIネット銀行 年0.448%~ 年1.203%~ 年1.685%~
楽天銀行 年0.834%~ 年1.710%~
auじぶん銀行 年0.479%~ 年1.195%~ 年2.30%~

各プランやご自身の状況によって住宅ローン金利は変わります。詳しくは、各金融機関のホームページをご確認ください。

 

 

 

住宅ローン借り入れ中の方やこれから住宅ローンの借り入れを考えている方は、さまざまな面で不安を感じることもあるでしょう。

 

そのような方へ向けて、ここでは住宅ローン金利の上昇によるユーザーへの影響を紹介します。

 

 

 

変動金利は毎年4月1日と10月1日に見直され、4月に決まった金利は7~12月、10月に決まった金利は翌年1~6月に適用されます。

 

そのため10月に住宅ローン金利の引き上げが発表されたとしても、実際の返済額に影響するのは2025年の1月以降でしょう。

 

前述の5年ルールが適用される方は、すぐに返済額が変わることはありません。ただし金利の上昇にともなって返済額に占める利息の割合が多くなり、元本がなかなか減らなくなる可能性はあります。

 

固定金利で住宅ローンを借り入れ中の場合、全期間固定金利型を選んでいれば、金利が上がっても特に影響はありません。

 

一方で、一定期間の金利を固定する固定金利期間選択型では、特定の期間が終了した時点で再度、固定金利期間選択型にするか、変動金利型に切り替えるかを選ぶことになります。しかし、新たに適用されるのはその時点における金利水準のため、金利が従来よりも高くなっているケースでは返済総額が増えかねない点に注意が必要です。

 

 

 

短期プライムレートの引き上げを発表している銀行で住宅ローンを借り入れる予定の方は、引き上げられた金利で契約することになるでしょう。

 

ただし、新規顧客獲得のため、あえて金利を上げない、または引き下げる銀行が出てくる可能性もあります。返済額を抑えたい方は、最新の金利動向をこまめにチェックしておくことをおすすめします。

 

固定金利は長期金利を参考にしているという性質上、金利が変動しやすいものです。少しでもお得に契約したいなら、借り入れのタイミングを見極める必要があるでしょう。

 

 

住宅ローンの借り入れを考えているものの、「変動金利と固定金利のどちらがよいのだろう」とお悩みの方もいるでしょう。ここでは、変動金利と固定金利に向いている方の特徴をそれぞれ解説します。住宅ローンの借り入れを検討中の方は、ぜひ参考にしてください。

 

 

 

変動金利が向いているのは、以下のような方です。

 

・金銭的に余裕のある方
・借入金額が少ない方
・返済期間が短い方
・金利の動向を定期的にチェックできる方

 

借入金額が少ない、または返済期間が短い場合は、たとえ金利が上昇しても大きな影響を受けにくいでしょう。そのため、固定金利よりも金利が低い変動金利のほうが合っているといえます。

 

 

 

固定金利が向いているのは、以下のような方です。

 

・金利変動を気にせず返済したい方
・毎月一定の金額を計画的に返済していきたい方
・繰り上げ返済をする余裕がない方

 

固定金利は全期間、または一定期間の返済額が固定されるため、金利変動に悩まされる心配がありません。子どもの教育費用がいくらかかるか分からないなどの理由で返済額の上昇を避けたい方や、繰り上げ返済をする余裕がない方にも向いています。

 

 

 

最後に、住宅ローンの金利上昇を考慮したうえでマンションを購入する際に気を付けたいポイントを3つ紹介します。

 

 

 

住宅ローン金利が上昇した場合に備えて、月々の返済額や返済総額はどうなるのかを今のうちから調べておきましょう。金利が上昇しても無理なく返済できることが分かれば、不安を解消したうえで住宅ローンを借りられます。また、返済が厳しくなりそうであれば借入金額を減らすなど事前に対策を練ることもできます。

 

返済額のシミュレーションは、銀行のWebサイトから実施可能です。

 

 

 

借入金額が多いほど、住宅ローン金利が上昇したときのリスクが大きくなります。「頭金を多めに用意する」「無理なく返済できる物件を購入する」など、借入金額をなるべく少なくできるように工夫しましょう。

 

 

 

繰り上げ返済をしたお金は、すべてローンの元金部分に充てられます。すると返済した元金部分に対する利息の支払いがなくなるので、毎月の返済額を減らせる、もしくは返済期間を短縮できるメリットがあります。資金に余裕のある方は積極的に繰り上げ返済を行なうとよいでしょう。

 

また、住宅ローンの借り換えを選択するのも有効です。より金利の低い銀行で新たに住宅ローンを契約して現在返済中の住宅ローンを一括返済すると、結果的に毎月の返済額の軽減につながります。

 

ただし、新たな銀行で住宅ローンの審査に通過しないと、借り換えはできません。また借り換えにあたり、事務手数料や登記費用などの諸費用が発生する点にも注意が必要です。

 

 

2024年10月以降は、住宅ローン金利が上昇していく可能性が高いと考えられます。しかし、新たな金利政策が講じられる可能性もゼロではないため、今後の動向についてはこまめにチェックしておきましょう。

 

マンションの購入を検討している方は、住宅ローン金利の上昇に備えておくことをおすすめします。住宅ローンは20年、30年など長期間で返済していくものなので、金利が大きく上昇した場合は返済額が上がってしまいかねません。家計を圧迫するおそれがあるため、これから住宅ローンの契約を考えている場合には借入金額を少なくするなど金利上昇リスクに備えた対策を講じることが大切です。

 

 

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監修者

高槻 翔太

<保有資格>

  • 宅地建物取引士
  • FP技能士2級
  • 日商簿記2級

<プロフィール>

不動産・建設会社で土地有効活用のコンサルティング営業経験(6年)。売買や駐車場の活用、リフォームの提案などに従事。不動産・金融特化のライターとして不動産系メディアでの執筆実績多数。