豊富な選択肢の中からマンションを購入する際には、物件価格や住環境などに加え、将来的なライフスタイルの変化も考慮して判断することが大切です。理想の物件を見つけられれば、充実したマンションライフを送れるでしょう。 この記事では、新築マンションや中古マンションの選び方について、大きく5つのポイントに分けて解説します。マンションの購入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
■マンションの選び方(1)物件価格
マンション選びのポイントのひとつは、「予算内で購入できる価格か」です。ここでの予算とは、「頭金として用意できる額」と「住宅ローンの借入可能額」の合計です。
頭金なしで組める住宅ローンもありますが、その分毎月の返済額が増えて家計の負担になってしまいます。住宅ローン審査の通りやすさの面からも、物件価格の2割程度は、頭金を用意できるとよいでしょう。
また、住宅ローンの返済を含めた資金計画も明確にしておく必要があります。以下のように、マンション購入時や購入後に発生する支出を考慮した上で資金計画を立てましょう。
・引越し費用
・家具購入費用
・修繕積立金
・管理費
・各種税金
・各種手数料
なお、マンション購入時にかかる税金や手数料などの諸費用は、新築マンションは物件価格の約3~5%、中古マンションは物件価格の約6~8%程度といわれています。例えば、物件価格が6,000万円の新築マンション購入時にかかる諸費用の目安は、180~300万円程度です。
■マンションの選び方(2)住環境
続いて、住環境に関するマンション選びのポイントを解説します。
◇広さ・間取りのポイント
マンションの広さや間取りは、世帯人数やライフスタイルに応じて決めましょう。結婚や出産、子どもの成長・独立、介護など、将来的な世帯人数・ライフスタイルの変化も想定しておくことが大切です。
参考として、世帯人数ごとの一般的な間取りは、以下の通りです。
世帯人数 | 一般的な間取り |
---|---|
1人 | 1R・1K・1DK・1LDK |
2人 | 1LDK・2LDK |
3人 | 2LDK・3LDK |
4人以上 | 3LDK以上 |
Lはリビングルーム、Dはダイニングルーム、Kはキッチンを指します。例えば2LDKは、「2部屋+リビング・ダイニング・キッチン」が備わったマンションです。
また、生活・家事動線や、収納・コンセントの数・位置なども実際に住み始めてから後悔しやすい点です。部屋の広さや間取りと、これらの点も併せて確認しておきましょう。
なお、最近のマンションは、玄関や扉の段差が少ないなど、子どもや高齢者でも暮らしやすい設計になっています。中古マンションの場合は、将来的なライフスタイルをイメージした上でバリアフリー対策がなされているかをチェックしておくと安心です。
◇階数・日当たりのポイント
マンションは、低層階・中層階・高層階の違いによって、物件価格や住み心地が異なります。
どの階が良い・悪いわけではなく、自分に合う階数を選ぶことが大切です。眺めや風通し、階段・エレベーターの使い勝手などを確認しましょう。
また、住戸の向きによっても、以下のような特徴の違いがあります。
住戸の向き | 特徴 |
---|---|
南向き | 季節を問わず日当たりが良いため、部屋が明るい、洗濯物が乾きやすいなどのメリットがあります。人気がある分、物件価格も高い傾向です。 |
東向き | 朝早くから日が差し込むため、一日のスタートを気持ち良く迎えたい方におすすめです。ただし、冬場の午後は冷え込みやすい点に注意しましょう。 |
西向き | 午後から日が差し込むため、夜型の生活をする方などに向いています。夏場は室温が高くなりやすい一方で、冬場は部屋が暖かい時間が長めです。 |
北向き | 日当たりが悪いというイメージから、南向きなどと比べて物件価格は低い傾向にあります。家具や床、カーテンが日焼けしにくい点もメリットです。 |
日当たりの良さは、窓・ベランダ・バルコニーの造りや、周囲の建物の状況によっても変わるため、実際に現地を見て判断しましょう。加えて、周囲の建物の状況は、将来的に保証されるものではない点に注意が必要です。
◇設備のポイント
より快適な生活を送るためにも、自分たちのライフスタイルを踏まえた上で以下のような設備の充実度を確認しましょう。
・対面型システムキッチン
・食器洗い乾燥機
・浴室乾燥機
・ウォークインクローゼット
・各階ゴミ置き場
また、防犯設備には以下のようなものがあります。
・エントランスやエレベーターホールのオートロック
・エントランスや玄関前のカメラモニター
・防犯カメラ
・防犯センサー
駐車場や駐輪場の利用を検討しているときには、駐車可能台数やサイズ、先着・抽選の違いなどが把握しておきたいポイントです。
一方、マンションのモデルルームでは、標準仕様ではなく、グレードアップされたオプションが用いられている箇所も多くあります。物件見学の際には、どこまでが標準仕様なのかを確かめておきましょう。
◇構造・耐震性のポイント
マンションの構造には、「材料による種類」「組み立て方による種類」「地震の揺れへの耐え方による種類」があります。これらの構造の違いは、防音性や耐震性などに影響します。
特に注意したいのが、現行の新耐震基準を満たしているかどうかです。新築マンションには新耐震基準が適用されているため、どのような構造で建てられているのか、耐震等級はどれくらいかなど耐震基準以外の部分を確認しましょう。
一方、中古マンションは、新耐震基準に基づいて建てられているかがポイントです。建築確認申請の日付が1981年6月1日以降なら、新耐震基準をクリアしていると判断できます。
なお、旧耐震基準の中古マンションでも、耐震診断・改修により耐震性を高めている物件もあります。
■マンションの選び方(3)立地・周辺環境
マンションから最寄り駅、職場・学校、公共・商業施設などへの距離は、生活の利便性を左右します。中でも、便利な駅近のマンションは物件価格も高い傾向です。
また、立地によって地盤の強さや水害リスクの高さは異なります。国土交通省のホームページや、各自治体のハザードマップで購入前にチェックしておきましょう。
周辺環境に関しては、治安の良し悪し・騒音・臭い・緑(広場や公園)の多さなどがポイントです。賃貸物件とは異なり、マンションを購入すると簡単には引越しできないため、慎重な検討が必要です。
■マンションの選び方(4)管理体制
マンションの管理体制の良し悪しは、次章で紹介する資産価値にも影響します。エントランスをはじめ、マンションの共用部分がきれいに保たれているかを確認しましょう。
また、自治体が「管理計画認定制度」に基づいて管理計画を認定しているマンションは、適切な管理が行なわれているといえます。管理計画認定制度は2022年4月から始まった比較的新しい制度で、おもに以下の3つの基準から認定の可否を判断します。
・修繕やその他管理の方法
・修繕やその他の管理に関する資金計画
・管理組合の運営状況
さらに、24時間体制で管理人や警備員、コンシェルジュが常駐している物件は、安心度が高いといえるでしょう。
▶引用:管理計画認定制度|国土交通省
■マンションの選び方(5)資産価値
マンションの資産価値は、通常年を経るごとに下がっていきます。将来マンションを売却したり、賃貸に出したりする可能性がある場合は、資産価値が下がりにくい物件を選ぶとよいでしょう。
資産価値に影響するおもな項目は、以下の通りです。
・立地・周辺環境
・広さ・住み心地
・希少性
・管理体制
つまり、ここまでに解説してきた選び方のポイントがマンションの資産価値を左右するといえます。
特に、都心に近く交通利便性が高い物件や、眺め・日当たりの良い物件は資産価値が高い傾向です。一方で、管理状況が悪い物件は、建物や設備の劣化が進行しやすく、資産価値が下がる原因になります。
■マンション購入では不動産会社の選び方も大切
新築マンションを購入する場合は、マンションの売り主(デベロッパー)や、売り主から委託された販売代理店を窓口としてやり取りします。
一方で、中古マンションを購入する場合は、仲介業務を行なう不動産会社を通して物件を選定します。そのため、おもに中古マンションを購入するケースにおいては、窓口となる不動産会社の選び方も重要です。
◇情報量や売買実績の多さ
提供してくれる物件情報の量が多ければ、さまざまなマンションを比較検討できます。したがって理想のマンションを購入したいのであれば、顧客目線で質の良い物件情報をたくさん紹介してくれる不動産会社を選びましょう。該当エリアに精通している不動産会社であれば、マンションの資産価値の推移や住み心地などさまざまな情報を提供してくれます。
また、不動産会社によって得意分野が異なるため、マンションの売買実績が多いかどうかのチェックも重要です。
◇担当者の信頼度
営業担当者とのコミュニケーションから、信頼できる不動産会社かどうかを見極めることも大切です。顧客側の話を十分に聞いてくれない、無理な資金計画を勧めてくるといった不動産会社は避けたほうが無難です。
また、それぞれの物件には、人によってデメリットと感じる点があるでしょう。メリットしか伝えてくれない不動産会社だと、マンションの購入後に後悔してしまうかもしれません。
◇対応の速さ
マンションの購入手続きをスムーズに進めるためには、対応の速さも鍵となります。
対応が遅いと、物件の内覧や説明会のスケジュール調整がしにくい、別の購入希望者に先に契約されてしまうといったことが起こり得るでしょう。
■まとめ
新築マンションや中古マンションは、物件価格・住環境・立地や周辺環境・管理体制・資産価値と、幅広い観点からチェックして選択、購入することが大切です。
ただし、すべての希望を叶えるマンションは見つかりにくいため、本記事で紹介したポイントと自分がこだわりたい点を照らし合わせ、優先順位をつけておくことをおすすめします。
また、特に中古マンションを購入する場合は、信頼できる不動産会社に相談することが大切です。信頼できる不動産会社のサポートを受ければ、理想のマンションに巡り合えるでしょう。
監修者
高槻 翔太
<保有資格>
- 宅地建物取引士
- FP技能士2級
- 日商簿記2級
<プロフィール>
不動産・建設会社で土地有効活用のコンサルティング営業経験(6年)。売買や駐車場の活用、リフォームの提案などに従事。不動産・金融特化のライターとして不動産系メディアでの執筆実績多数。
撮影/石原麻里絵(fort)