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2024.09.03

「マンションにはまってQOLが上がった」村瀬歩さん流のマンションの楽しみ方

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3年ほど前から“マンション沼”にはまったという声優の村瀬歩さん。好きな間取りや構造などについて、熱く語っていただきました。

村瀬歩さん

▲村瀬歩さん。1988年、アメリカ合衆国生まれ。2011年に声優デビュー。声の音域が広く、中性的な役や女性の役も演じる。代表作に『ハイキュー!!』(日向翔陽)、『魔入りました!入間くん』(鈴木入間)、『ひろがるスカイ!プリキュア』(夕凪ツバサ/キュアウィング)、『王様ランキング』(カゲ)など。X:村瀬歩

 

――声優として活躍されている村瀬さん。一見マンションとは関連がないお仕事をされているように思われますが、マンションに興味を持ったのはどんなきっかけからだったのでしょうか。

 

村瀬歩さん(以下、村瀬):マンションに興味を持ったのは3年ほど前です。もともと引っ越しが好きで、引っ越しの際に物件を比較するのも好きでした。たくさんの物件情報を見ているうちに、間取りってどのように決めているのだろうという疑問が湧いてきたんです。

 

そこから調べ始めると「ワイドスパン(※1)」や「アウトフレーム工法」など聞いたことがない不動産用語がいろいろ出てきて、「なんだこれは!」と。アウトフレーム工法というのは、「ラーメン構造」という柱と梁を接合する構造を採用した時に、柱や梁が室内側に出っ張ってデッドスペースを生み出すのを解消するための工法なんです。たしかに部屋の中に柱や梁があるかないかで、空間の広さや使い方が大きく変わってきますよね。こうした知識を得ることで、今までなんとなく住んでいた自分の部屋も全然違って見えてきました。そこから、マンションにのめりこんでいったんです。

 

※1 集合住宅において、開口部が広いタイプの間取りを指す言葉。採光性に優れている、バルコニーが広くなる、開放感が増すなどのメリットがある。

 

 

――今までと、見える世界が変わるような体験だったんですね。

 

村瀬:はじめは部屋単位で関心を持っていたのが、だんだん「マンションってどうやって造られるんだろう」「都市計画ってどう決めていくんだろう」と興味が広がっていきました。今は、アフレコスタジオの帰りや収録の空き時間に周辺を歩いてマンションを探したり、新しい都市計画の表示を見つけたら「どこのデベロッパーが参画しているんだろう」と調べたりしています。

村瀬歩さん02

 

――広い敷地をフェンスで覆っている場所に「◯◯区◯町◯丁目計画」といった計画書が貼られていることがありますね。

 

村瀬:計画名を覚えておいて検索すると、“マンクラ”(マンションクラスタの略)と呼ばれるマンションに異様に詳しい方々が「どうやら大型マンションが建つらしい」「地権者は◯◯らしい」と、SNSで発信しているんです。このマンクラの方々についても調べていくとどんどん深みにはまるというか……アマゾンの奥地におもしろい集会所を見つけたような気持ちになりました(笑)。

 

 

 

――マニアたちの濃いやり取りに触れて、さらにマンション沼にはまっていったんですね。マンションの特に好きなところはありますか?

 

村瀬:やっぱりアウトフレーム工法、そしてワイドスパンには惹かれますね。マンションを建てる側に思いを馳せちゃうんです。柱を室内に立てて、間取りもうなぎの寝床みたいにしたほうが、建築費も抑えられるし売上も上がるはず。建築費がかさんで戸数が減ったとしても、良いマンションを造るためにこの工法や間取りを選んだんだな……と胸が熱くなります。

 

あとは、フィックスされたガラスのダイレクトウィンドウ(※2)ですね。歩いていて見つけたマンションがダイレクトウィンドウだったら、ワクワクします。それが曲線のダイレクトウィンドウだったら、もう萌えまくりですね。

 

※2 天井から床までのはめ殺し窓。眺望に優れるという利点がある。

 

 

――採光面積が広くて、開放感があるお部屋がお好きなんですね。

 

村瀬:眺望がいいとうれしいですよね。でも絶対高層階がいいというわけではなくて、低層階の部屋も好きです。低層階だと敷地内の植栽がきれいに見えたり、運河沿いだと運河ビューが楽しめたりする。低層階だと価格が抑えられているのもいい。窓からの景色が楽しめて高層階より低価格だなんて、お得だなと。

 

あとは中住戸(※3)も好きです。一般的に人気なのは角部屋ですが、室内の廊下が長くなって居住効率が落ちがちなんですよね。僕にとって一番夢が詰まっているのが、中住戸のワイドスパンです。無駄がなく、機能性が高い。あ、リビングイン(※4)の間取りも好きですね。部屋のドアを開けるとすぐリビングって、なんだか欧米の家みたいでいいなと思います。

 

※3 共同住宅などで並列に配置された住戸のうち、両隣を他の住戸で挟まれている住戸。
※4 居間が出入りの中心となる間取りのこと。

村瀬歩さん03

 

――特に気に入っているマンションはありますか?

 

村瀬:賃貸物件だと、丸ノ内線・赤坂見附駅のすぐ近くにある「赤坂Kタワーレジデンス」です。開口が広く取られていて、天井高が2.9メートルもあるんです。しかもものすごいワイドスパン。めちゃくちゃ萌えますね……! 僕が億万長者に生まれ変わったら、ここの部屋を借りたいです。

 

間取りでいうと「パークコート千代田富士見ザ タワー」。フロアの内側にゆとりを持たせるデュアルフェイス設計になっていて、共用廊下がV字形状になっているんです。斜めになっている分、各部屋のスパンを確保しやすいので、なんと全戸がワイドスパン。1LDKから3LDKまで、本当に無駄がない間取りになっています。村瀬的に、間取りの美しさ暫定一位のマンションです。

 

 

 

――赤坂Kタワーレジデンスなどは、実際に内見されたことがあるんですか?

 

いやいや、借りられない・買えない物件の見学は申し込みません。冷やかしになっちゃいますからね。通常はネット上の情報を見るだけにとどめているのですが、友人や先輩・後輩の物件を探す時に、相談されたらついていくことはあります。

 

付き添いで行っているのに「カップボードをここに作ったんだ」「ここは増設であとからオプションで入れたのかな」と、細かいところに目が行くんですよね。それでいろいろ質問していたら、不動産会社の方に「お連れ様は本当にマンションがお好きなんですね」と言われてしまったこともあります(笑)。

 

 

――物件を探している当人よりも熱心に見ている(笑)。マンションのどんなところが、村瀬さんの興味を惹いているのでしょうか。

 

村瀬:僕はマンション以外にも、カードゲームやタロット占い、パワースポットなどに興味があるんです。たぶん、生身の人間が関わっていて流動性があるものが好きなんでしょうね。だから、数字が動くだけのもの、例えば株などにはあまり興味がないんです。

 

マンションは生活に密接に関わっているところも魅力です。いろいろな人がどういう基準で住居や住む街を選んでいるのか、とても興味があります。

村瀬歩さん04

 

――これは夢の話なのですが、もし村瀬さんが費用や土地の権利関係を気にせず好きなようにマンションを建てられるとしたら、どの場所にどのような建物を建てたいですか?

 

村瀬:うわーーー!! ふふふふ、それは胸が躍る質問ですね……! 場所は丸の内がいいかな。やっぱり、ほぼ永久に眺望が保証されている「永久眺望」の価値って大きいと思うんです。皇居はおそらくこれからもなくならないので、お堀の眺望は永続的ですよね。丸の内なら交通の便ももちろんいい。このあたりは賃貸マンションがないので、あえての賃貸物件を建てるのもいいかなと思います。採算が取れなそうですけど(笑)。

 

東京駅は2012年の復元工事の際、土地の未利用の容積率(空中権)を、丸の内地区内の会社に売却しているんですよね。こういう空中権売買とか容積率移転なども、調べるとおもしろいんですよ。

 

 

 

――こんなにお詳しいと、マンションに関する相談などを受けるんじゃないですか?

 

村瀬:僕のマネージャーがマンションを買う時は、僕が候補を探しました。人にマンションを紹介するとなると、立地や間取り、価格だけでなく、長く住んだ場合に気になるところがないかもしっかりチェックします。例えば、築年数が経っている物件だったら、部屋はリノベーションしてきれいだけれど、配管が劣化している、なんてことはないか。修繕積立金がちゃんと積み立てられているか。管理組合や理事会の雰囲気が良いかどうかなど(笑)、いろいろなところを調べます。あ、換気システムが第一種換気か、そのなかでも全熱交換器かどうか、といった部分もチェックしますね。

 

 

――般的には見逃してしまうポイントもチェックしてもらえて、マネージャーさんも大助かりだったのでは?

 

マネージャー:すごく助かりました(笑)。おかげで、住んでからがっかりするようなことはありませんでした。

 

村瀬:価格についても、東京23区内は今ものすごく高騰していますが、その中でも北区や板橋区のあたりはそこまで上がってない物件もあります。また、勝どきや月島のあたりは高いけれど、少し離れた辰巳の方にはまだ買えそうな値段の物件があったりするんです。調べて、知識が増えることで、世界が広がる感じがすごくおもしろいんですよね。

村瀬歩さん05

 

――そんな村瀬さんにおすすめしたい「長谷工マンションミュージアム」という施設がありまして……。ここでは、先程質問したような理想のマンションの設計シミュレーションができたり、基礎工事から竣工までを数分にまとめた展示なども見られたりします。構造について解説するコーナーもありますよ。

 

村瀬:なんて楽しそうなミュージアム! ぜひ行ってみたいです。僕、基礎工事を見るのが大好きなんです。マンションを好きになってから、街を歩いていてもいろいろな発見があるし、すごく人生の楽しみが広がったと感じています。マンションは僕にとって、QOLを上げてくれる存在ですね。

 

[あわせて読みたい]見て、触れて、感じて、学べる。速水健朗の長谷工マンションミュージアム探訪記

 

 

取材・文:崎谷実穂 撮影:清水純一
撮影場所協力:長谷工不動産「PLAY江古田」

 

WRITER

崎谷 実穂
ライター。書籍のライティングを中心に活動する傍ら、ウェブメディア・雑誌などでビジネスや教育に関する取材記事を執筆している。アニメ・声優関連もいくらか詳しい。

X:@yaiask

おまけのQ&A

Q.村瀬さんならではの、マンションの楽しみ方はありますか?
A.物件情報サイトで、架空の人間の年収や年齢を設定して物件を探す遊びをしています。例えば、50代の執行役員で年収3千万あったら、「赤坂Kタワーレジデンス」に住めるかな、とか。さすがに家賃130万円の部屋は住めないけれど、1LDKで月40万円の部屋だったらいけるんじゃないか……いやでも、このくらい出せるなら溜池山王のマンションはどうか、みたいなことを妄想するんです。寝る前によくこうやって遊んで、サイトを見ながら寝落ちしています(笑)。