マンションの間取り図において、「ウォークインクローゼット(WIC)」という記載を見かけることがあるでしょう。ウォークインクローゼットとは、「人が中に入れる収納スペース」のことです。 ただし、レイアウトや広さによって、ウォークインクローゼットの特徴は異なります。また、マンションにウォークインクローゼットが必要かどうかは、メリットやデメリットを理解した上で判断することが大切です。 この記事では、ウォークインクローゼットの概要やレイアウトの種類、メリット・デメリット、有効に活用するためのポイントを解説します。ウォークインクローゼットの広さ別に収納量の目安も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
■ウォークインクローゼットとは?
そもそも「クローゼット」は、おもに衣類をしまうための収納です。間取り図では、「CL」と記載されています。
それに対して「ウォークインクローゼット」とは人が中に入れるスペースがあるクローゼットを指し、間取り図上の表記は「WIC」や「WCL」です。ウォークインクローゼットはハンガーパイプや棚があり、収納力が高いのが特徴です。
ウォークインクローゼットの中には、2方向に出入り口が付き、通路のように通り抜けられるタイプもあります。このようなウォークインクローゼットを「ウォークスルークローゼット」と呼びます。
■ウォークインクローゼットのレイアウトの種類と特徴

ウォークインクローゼットのレイアウトは、4つの種類に大別されます。ここでは、種類別に特徴を見ていきましょう。
◇Ⅰ型
「Ⅰ型」のウォークインクローゼットは、片側の壁だけにハンガーパイプや棚が据え付けられています。他のレイアウトに比べて収納力は低めですが、コンパクトな分、衣類の出し入れや整理がしやすい点がメリットです。
Ⅰ型の収納力を高めたい場合は、ウォークインクローゼット内に収納ボックスを設置すると良いでしょう。
◇Ⅱ型
「Ⅱ型」のウォークインクローゼットは、収納が両側の壁に備え付けられているタイプです。収納スペースが左右に分かれているので、夫婦や兄弟・姉妹で片側ずつ使ったり、季節ごとに衣類を分類したりできます。
入口から見て正面の壁部分に収納ボックスや鏡などを設置すると、スペースを余すことなく活用可能です。
◇L字型
「L字型」のウォークインクローゼットは、正面と片側の壁に収納が備え付けられています。Ⅰ型より収納力は高いものの、角の部分がデッドスペースになりやすい点がデメリットです。
奥に細長い形(縦長)の部屋には、L字型のウォークインクローゼットが向いています。
◇コの字型
「コの字型」のウォークインクローゼットは、入口から見て正面と両側の壁に収納が備え付けられているタイプです。壁面を無駄なく活用できるため、4つのレイアウトの中で最も収納力があります。
ただし、L字型と同様に、角の部分がデッドスペースになりやすいため工夫が必要です。
■ウォークインクローゼットのおもなメリット

部屋にウォークインクローゼットがあると、次のようなメリットを得られます。
◇収納力が高い
ウォークインクローゼットはクローゼットよりも収納スペースが広く、衣類はもちろん、バッグなどの小物や季節用品も保管できます。
奥行きがあるウォークインクローゼットなら、スーツケースや布団、扇風機、加湿・除湿機、ヒーターなど家財道具の保管場所としても活用できるでしょう。
また、ウォークインクローゼットに衣類をまとめておけば、衣替えをする手間を省けます。季節の変わり目や急な温度変化があった際にも、服装選びに柔軟に対応できて便利です。
さらに、「衣類や小物をどこに収納したか分からなくなった」「同じような物を持っていたことを忘れて購入してしまった」といったミスも防ぎやすくなります。
◇着替えや準備がしやすい
ウォークインクローゼットは人が中に入れるため、衣類を選んでその場で着替えられます。居室に設置されているような窓がなく、さらに扉が付いていれば外から見えず安心です。
コの字型以外のタイプであれば、空いたスペースに大きな鏡も置きやすいでしょう。通常のクローゼットしかない場合は、全身のコーディネートを確認するために、鏡がある場所まで移動しなければなりません。
■ウォークインクローゼットのおもなデメリット
便利なウォークインクローゼットですが、次のように注意しておきたい点もあります。
◇部屋が狭くなる
ウォークインクローゼットがある部屋では、収納スペースが広い分、居住スペースは狭くなります。「想像していたよりも圧迫感がある」などと感じる可能性があるでしょう。
収納する荷物の量が多くない方は、通常のクローゼットでも十分かもしれません。ウォークインクローゼットに何を収納したいのかを踏まえた上で、収納スペースと居住スペースのバランスを考慮しましょう。
◇こまめな換気や掃除が必要になる
ウォークインクローゼット内には、衣類から出た糸くずやホコリが溜まりやすくなります。また、扉が付いている場合は閉め切った空間となり、かつ衣類の繊維には湿気を吸収する性質があるため、湿気もこもりやすい傾向です。こうした環境は、カビが発生する原因となります。
ウォークインクローゼットがある場合は、扉を開けて換気する、除湿剤を使用する、定期的に掃除をしてホコリなどを取り除くといった対策が必要です。
■ウォークインクローゼットの理想的な広さ

ウォークインクローゼットの広さは、収納する荷物の量や使い方しだいで適切かどうかが決まります。
ただし、ひとつの目安として、「居住人数=畳数」といわれています。これに当てはめると、夫婦2人の家庭なら2畳、4人家族なら4畳です。
ここでは、ウォークインクローゼットの理想的な広さを見極めるため、より詳しく畳数ごとの特徴を紹介します。
◇2畳のウォークインクローゼット
2畳のウォークインクローゼットは、衣類を約150着~200着収納可能です。収納力が高いコの字型のウォークインクローゼットも、最低限2畳あれば設置できます。
ただし、ウォークインクローゼット内で着替えるには狭いかもしれません。
◇3畳のウォークインクローゼット
3畳のウォークインクローゼットは、衣類を約250着~300着収納可能です。
4人家族でも、子どもが小さいうちは3畳分の収納スペースで対応できるでしょう。3畳あれば、収納ボックスや鏡を置くゆとりもあります。
◇4畳のウォークインクローゼット
4畳のウォークインクローゼットは、衣類を400着収納可能です。収納スペースとしては、かなり余裕があるでしょう。
家族が増える可能性があるなど、将来を見越して4畳のウォークインクローゼットを選択するのはひとつの手です。ただし、余裕がある分デッドスペースも生まれやすいので、収納する荷物の量を考えた上で必要性を見極めましょう。
■マンションのウォークインクローゼットの活用ポイント

マンションは、戸建てよりも「収納率」が低めです。収納率とは、住戸の床面積に対する収納スペースの割合を指します。
そのため、マンションでは限られた広さのウォークインクローゼットを上手に活用することが大切です。ここでは、マンションのウォークインクローゼットに関する3つのポイントを解説します。
◇設置場所をチェックする
ウォークインクローゼットの代表的な設置場所は、以下の通りです。
・寝室
・洗面室付近
・廊下
寝室にウォークインクローゼットがあると、起床後や就寝前の着替えがスムーズになります。自宅に来客があっても、収納内の荷物を見られる心配がありません。
また、洗面室付近にウォークインクローゼットがあると、外出時のヘアメイクや帰宅時の手洗いの流れで着替えられ、身支度の動線が効率的です。ただし、寝室よりも水回りによる湿気の影響を受けやすいでしょう。
家族構成によっては、子ども部屋にウォークインクローゼットがあると好都合なケースもあります。
このような点を、マンションを選ぶ際や、マンションの間取りプランを決める際の参考にしてください。
◇収納する物の定位置を決める
ウォークインクローゼットは、物を詰め込んでしまいがちです。かえって使いづらくならないよう、収納する物の定位置を使用頻度に応じて決めておくのがコツといえます。
また、以下のような基準によってハンガーの種類・色を変えておくと、一目で分かりやすくなり使い勝手が向上します。
・誰の衣類か(夫・妻など)
・どのような種類の衣類か(仕事用・プライベート用など)
・シーズン中の衣類か、シーズンオフの衣類か
なお、収納ボックスなどをウォークインクローゼット内に置く場合は、外から中身が確認できる物が便利です。
◇内部の動線を確保する
ウォークインクローゼットに衣類などを収納したり、収納ボックスなどを設置したりする際には、通路となるスペースを考慮しましょう。
十分な動線を確保するためには、収納する荷物をウォークインクローゼットの7割~8割程度に留めるのがおすすめです。
■まとめ
人が中に入って荷物などを収納できるウォークインクローゼットは、一般的なクローゼットと比べて収納力が高く、着替えや準備がしやすい点がメリットです。
ただし、ウォークインクローゼットがあると、その分部屋が狭くなることも踏まえ、収納する荷物の量に応じて適切な広さを見極めましょう。
また、マンションでは、戸建てよりもウォークインクローゼットの面積を確保しにくい傾向です。生活スタイルに合うウォークインクローゼットの場所、収納の仕方、内部の動線を考慮し、ウォークインクローゼットを最大限活用できるようにしましょう。
監修者
高槻 翔太
<保有資格>
- 宅地建物取引士
- FP技能士2級
- 日商簿記2級
<プロフィール>
不動産・建設会社で土地有効活用のコンサルティング営業経験(6年)。売買や駐車場の活用、リフォームの提案などに従事。不動産・金融特化のライターとして不動産系メディアでの執筆実績多数。