マンションの耐用年数とは?寿命との違いや長く住める建物の選び方

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マンションを購入するにあたり、建物に何年住み続けられるのかが気になる方もいるでしょう。 マンションには耐用年数が定められており、その年数を建物の寿命だと考える方もいるかもしれません。しかし実際のところ、耐用年数は建物が物理的に使用できる年数とは異なるため、注意してください。 今回は、マンションの耐用年数と寿命の違いを解説します。併せて、長く住めて資産価値が落ちにくいマンションの条件や選び方も紹介するため、これからマンションを購入する方は参考にしてください。

 

マンションの耐用年数は、通常税法上の「法定耐用年数」を指します。法定耐用年数はあくまでも会計処理を行なうためのもので、建物劣化などの状態とは関係ありません。

 

耐用年数には、この他にも物理的にマンションが使用できるかの観点から見た「物理的耐用年数」や、継続使用における修繕費の観点から見た「経済的耐用年数」など、いくつかの考え方があります。法定耐用年数の違いとともに確認しておきましょう。

 

 

 

法定耐用年数とは、税法上固定資産として減価償却ができる年数のことです。時間によって減少する価値に相当する額を、会計処理で費用として計上する際に用います。

 

建物では、構造と用途によって耐用年数が決められており、鉄筋コンクリート造(RC造)・鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)のマンション(住宅用)は47年、鉄骨造(S造)のうち重量鉄骨造は34年です。

 

法定耐用年数を経過したマンションは、会計上固定資産としての価値がゼロになると考えます。

 

 

 

法定耐用年数は、あくまでも税法上の年数です。現実的にマンションが使用できる年数を考える際には、物理的および経済的な耐用年数に着目する必要があり、これらは法定耐用年数とは異なります。

 

物理的耐用年数とは、建物の劣化など、物理的要因で住めなくなるまでの年数のことです。居住中のメンテナンスや管理によって大きく異なり、耐震基準なども関連してくるでしょう。1981年5月31日以前に建築確認を得た旧耐震基準のマンションは、大きな地震が発生した場合に損害を受ける可能性があるため、物理的耐用年数は短くなる傾向があります。

 

一方の経済的耐用年数とは、建物を継続使用するにあたり、改築よりも修繕や補修で安く利用できる年数を指します。同居者やペットの有無、メンテナンスの状況によって程度が異なりますが、適切な修繕などが行なわれている場合は経済的耐用年数を延ばすことが可能です。

 

つまり、マンションに住める年数を考えるときには法定耐用年数だけではなく、物理的・経済的耐用年数についても考慮しなければなりません。

 

 

ここまで見てきたように、法定耐用年数はマンションの寿命ではありません。そこで、マンションは新築後何年くらい住むことができるのか、建物の寿命について解説します。

 

 

 

法定耐用年数を過ぎても、建物の状態に問題がなければ住み続けられます。法定耐用年数によって居住が制限されるわけではありません。

 

国土交通省の資料によると、2021年末時点で築50年を超えるマンションは21.1万戸と推計されています。このことからも、耐用年数を過ぎても多くのマンションが使用できることは明らかです。

 

ただし、建築後に適切なメンテナンスが行なわれてこなかったマンションは劣化が進み、法定耐用年数に到達するより前に、住めなくなる可能性があります。

 

▶参照:国土交通省「マンションを取り巻く現状について

 

 

 

建物の寿命とは、建物が実際に使用できなくなるまでの年数のことです。

 

建物の寿命に関する研究はいくつかありますが、国土交通省の資料によると、鉄筋コンクリート造の住宅の平均寿命は68年とする調査があるとされています。

 

また、同資料内で取り上げられている別の調査によれば、鉄筋コンクリート造の建物の物理的寿命は推定117年ともされています。実際に、早くから鉄筋コンクリート造の住宅が建てられていた海外には、築100年を超えて居住されているマンションがあるのも事実です。

 

築年数を重ねても使い続けられるマンションがある一方、築30年程度でも劣化が進み、建て替えが選択されることもあります。長寿命はあくまでも工事に欠陥がなく、適切なメンテナンスが実施されていることが前提で実現できることです。例えば、外壁や屋根のメンテナンスが適切に行なわれていなければ、ひび割れ部分から容易に雨水が内部に浸入して、躯体が劣化していくこともあります。

 

なお、再開発にともなう区画整理で老朽化を待たずに取り壊しになるなど、物理的な要因以外でも建物の寿命を迎える例もあります。

 

▶参照:国土交通省「期待耐用年数の導出及び内外装・設備の更新による価値向上について

 

 

 

劣化が進行したマンションは、大規模修繕により寿命を延ばすか、寿命として取り壊しか建て替えになります。

 

築40年以上になると、外壁の剥落や鉄筋の露出・腐食、漏水など、深刻な問題を抱える割合が増えます。しかし、建て替えには多額の費用がかかる上に、区分所有者などの同意を集めなければなりません。そのため、現実的には建て替えは難しく、大規模修繕をしながら寿命を延ばすケースが多いでしょう。

 

国土交通省によると、築40年以上のマンションは2021年末時点で115.6万戸と推計されます。一方で、2022年4月時点でのマンション建て替え実績が約22,200戸とされていることから、建て替えのハードルの高さが分かるでしょう。

 

▶参照:国土交通省「マンションを取り巻く現状について

 

 

 

マンションを購入するにあたり、何年住み続けられるかは判断材料として重要です。現在居住中の方はもちろん、築年数が経過しているマンションの購入を検討している方は、寿命が気になるのではないでしょうか。

 

マンションの寿命を左右する要素には、大きく分けると次の4つが挙げられます。

 

 

 

マンションは管理や修繕状況によって、寿命が大きく変わります。劣化や問題が小さなうちに対処していれば建物に深刻なダメージを与えることはありません。しかし、適切な対処が行なわれなければ次第に躯体が劣化し、住めなくなってしまうこともあり得ます。

 

管理や修繕が適切に行なわれているかを判断する場合は、おもに以下の状況を確認しましょう。

 

・定期的に外壁のメンテナンスや屋上の防水処理をしているか

・配管の修繕を行なっているか

 

マンションの寿命は大規模修繕によって、ある程度延ばすことができます。マンションの大規模修繕の周期は12~15年が一般的です。

 

修繕状況は、修繕履歴や修繕計画書から確認できます。また、大規模修繕は費用が大きくなるため、修繕積立金が十分に確保されているかも見ておく必要があるでしょう。修繕積立金が不足する場合、一時金の徴収により修繕が進められることもありますが、修繕ができないままになってしまうこともあります。

 

 

 

マンションの寿命は、立地環境によっても左右されます。

 

台風や土砂災害など、気象災害の多い地域は屋根や外壁にダメージが起こりやすくなります。この他に、海の近くは潮風により金属が錆びやすくなるなどの影響があり、寿命が短くなる傾向があるため、注意が必要です。

 

ただし、適切なメンテナンスや対策が実施されていれば、多くの場合は問題ありません。検討したいマンションの立地環境が気になる場合には、問題に対してどのような対策がとられているかを確認すると良いでしょう。

 

 

 

地震が多い日本では、耐震性も建物の寿命に影響します。

 

現行の耐震基準(新耐震基準)は、震度6強~7の地震が起きても倒壊しないことを基準としており、基準に合致していなければ新規の建築はできません。

 

しかし、1981年6月1日より前に建築確認を得た建物は、旧耐震基準に沿って建てられています。震度5強程度に耐えうる設計に過ぎないため、大きな地震による倒壊やダメージで寿命が短くなるリスクが高いでしょう。旧耐震基準のマンションは建て替えや耐震化工事が進められていますが、対応できていないマンションもあるため注意が必要です。

 

また、制振構造や免震構造などが採用されたマンションでは地震の際の建物の揺れを抑えられるため、建物の損傷も少なくなります。

 

 

 

マンションは強度が高いほど寿命も長くなります。

 

マンションには鉄骨造(S造)・鉄筋コンクリート造(RC造)・鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)があり、強度はS造→RC造→SRC造の順に上がっていきます。

 

また、コンクリートの品質や強度も、マンションの寿命を変動する要素のひとつです。セメントが強く、セメントに対して水の比率が低いほど、コンクリートの劣化が起こりにくくなり、マンションの寿命を延ばせます。

 

一般的なマンションのコンクリートは、圧縮強度24N/mm2・水セメント比50~60%です。近年登場した100年マンションや100年コンクリートの規格では、圧縮強度30N/mm2以上・水セメント比50%以下となっており、より高い耐久性を期待できます。

 

加えて、コンクリートのかぶり厚さも重要です。かぶり厚さとは鉄筋を覆うコンクリートの厚さのことで、厚さがあるほど中の鉄筋が錆びにくくなり、耐久性が高くなります。

 

 

 

マンションに長く住み続けるには、耐久性など物理的な寿命の長さも大切です。しかし、将来住み替える可能性も考えると、資産価値が落ちにくいことも重要になるでしょう。

 

ここからは、資産価値が落ちないマンションを選ぶために押さえておきたいポイントを紹介します。

 

 

 

立地条件は、資産価値に大きく関わる要素です。

 

駅近で日常の買い物に便利な店舗や公共施設などの生活施設が充実している立地では、築年数が経過しても住宅ニーズが期待できるため、資産価値は落ちにくくなります。

 

また、エリアの将来性も重要な要素です。再開発予定のあるエリアや将来新駅ができるエリアは、発展にともなって住宅ニーズが上がり、資産価値の上昇が期待できる可能性があります。

 

また、ライフスタイルが変わっても住み続けられるか、の観点も重要です。複数路線を利用できる、都心部分へのアクセスが良好であるなどの条件がそろっている立地は、ライフスタイルの変化にも対応しやすいのが魅力的です。売却時にもさまざまなニーズに対応しやすく、有利になるでしょう。

 

 

 

快適な生活が送れるマンションも、資産価値が落ちにくくなります。

 

日当たりや風通しの良さ、間取りの住みやすさなどの住居環境は、住宅ニーズにも関係します。専有部分や共用設備が整っているマンションは、築年数が経過しても十分に需要が期待できるでしょう。

 

また、マンションの専有面積や間取りがエリアの住宅ニーズに合っている場合も買い手が見つかりやすいため、資産価値が大きく低下する可能性は低いでしょう。

 

 

 

内装や外装の美しさや眺めの良さ、充実した共用設備があるなどの付加価値の高いマンションは、築年数を経ても資産価値を維持できる可能性が高いでしょう。

 

ただし、これは生活に必須というわけではないため、わざわざ資産価値を維持しようと付加価値の高いマンションを選択する必要はありません。付随的な要素と考えてください。

 

付加価値のあるマンションの中には、ヴィンテージマンションのように、年数を経ても価値を維持し続けている例も見られます。

 

 

 

「マンションは管理を買え」の言葉があるほど、マンションの管理状況は寿命や資産価値維持において重要です。

 

中古マンションを購入する場合は、日々の管理や修繕計画は適切か、修繕積立金が確保されているかなどを確認しましょう。

 

日々の管理状況も重要です。共用部がいつも綺麗な状態に保たれているマンションは、管理が行き届いているため不具合への対応も早く、資産価値を維持しやすいでしょう。

 

なお、自主管理のマンションは、管理が行き届かず資産価値の下落につながることもあるため注意が必要です。

 

 

 

大規模修繕の実施状況も、マンションの寿命や資産価値を左右します。築年数が経過すると、随時適切なメンテナンスを行なっていても、建物の劣化は避けられません。

 

大規模修繕は、建物や設備の劣化を修繕するために12~15年スパンで実施するもので、適切に実施することで建物の寿命を延ばし、資産価値を維持できます。マンションによっては、大規模修繕の際に共用設備がグレードアップされることも期待できるでしょう。

 

中古マンションを購入する際には、必ず大規模修繕の実施状況および修繕内容を確認してください。

 

 

 

住宅性能評価とは、第三者機関が住宅を10分野において等級や数値で公正に評価したものです。対象分野の中には、マンションの寿命に関わりの深い「構造の安定」「劣化の軽減」「維持管理・更新への配慮」などがあるため、これらの評価を確認するのも良いでしょう。

 

構造の安定については、構造躯体の倒壊と損傷防止についてそれぞれ3段階で評価されるなど、建物の性能をより詳しく知ることが可能です。

 

住宅性能評価の取得は義務ではなく、取得していないマンションも多くあるため、必ず確認できるとは限りません。しかし、判断の基準として有効であり、評価書が取得してあることで売却時に資産価値を証明しやすいといったメリットがあります。

 

なお、中古マンションの場合には、住宅診断を受けて現状を把握し、購入を検討するのも良いでしょう。

 

 

 

価格や立地面の魅力から、法定耐用年数を超えた中古マンションを検討中の方もいるでしょう。耐用年数を超えている場合は購入時に注意すべき制約などもあるため、確認しておいてください。

 

 

 

中古マンションの購入でも住宅ローンの利用は可能ですが、築年数が経過している建物の場合は注意が必要です。住宅ローンの返済期間は建物の法定耐用年数内に設定しなければならないため、ローンが組めても返済期間が短くなったり、金額を制限されたりするケースがあります。これは、築年数が経過することで建物の担保評価が下がるためです。

 

特に、築年数が経過している場合には旧耐震基準の物件や、再建築不可物件なども少なくありません。該当する場合には、住宅ローンの利用条件が厳しくなるでしょう。

 

住宅ローンの契約では基本的に個人信用情報を確認されますが、中には、旧耐震基準のマンション購入に対して融資をしない金融機関もあります。

 

 

 

マンションの管理費や修繕積立金は、新築のうちは低めでも年数を経るにしたがって値上がりすることが少なくありません。築年数の経過とともに劣化が進み、修繕の費用がかさんでくるからです。

 

特に、12~15年スパンで実施される大規模修繕の場合には、修繕積立金の水準が低いと資金が不足するおそれがあります。その場合、まとまった金額の修繕積立一時金の負担を求められる可能性もあることを認識しておきましょう。

 

また、築年数を経ると、専有部分についてもリフォームや修繕が必要になるなど、費用がかかりやすくなります。購入時の物件価格が安くても、追加費用が発生する点に注意してください。

 

 

 

中古マンションは新築に比べて安価なため一定の需要がありますが、築40年を超えてくると古さや住宅ローンの組みにくさが購入のハードルとなるでしょう。

 

住み替えを考えてマンションを手放したくなっても購入希望者が限られるため、売却が難しかったり、安価で売却せざるを得なくなったりする可能性があることは念頭に置いておいてください。

 

売却の際は、自身が購入したときよりもさらに築年数を経ることになります。購入する場合には、以下のように古くても住みたいと思えるような物件を選択することも大切です。

 

・立地が良く利便性が高い

・管理や修繕が確実に行なわれている

・共用設備などの付加価値が魅力的

 

 

マンションの法定耐用年数は寿命ではないため、法定耐用年数を過ぎても建物に問題がなければ住み続けられます。鉄筋コンクリート造のマンションの場合、建物自体の寿命は平均68年ですが、劣化や資産価値の低下により寿命が早まることもある点は覚えておきましょう。

 

立地や環境条件が良く、管理や修繕が適切に行なわれているマンションは長く住めて、資産価値の低下も抑えられます。新築・中古のどちらで購入する場合にも、これらの点をしっかりと確認しましょう。

監修者

高槻 翔太

<保有資格>

  • 宅地建物取引士
  • FP技能士2級
  • 日商簿記2級

<プロフィール>

不動産・建設会社で土地有効活用のコンサルティング営業経験(6年)。売買や駐車場の活用、リフォームの提案などに従事。不動産・金融特化のライターとして不動産系メディアでの執筆実績多数。