新耐震基準の適用はいつから?旧耐震基準との違いや新耐震基準適用物件を購入するメリットを紹介

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日本は地震大国であり、中規模から大規模な地震がいつ発生してもおかしくありません。気象庁によると、最大震度5弱以上を観測した地震は、2021年に10回、2022年に15回も発生しています。大規模な地震や災害を想定し、防災バッグを用意している方や、食品や生活必需品のローリングストック(※)を実践している方も多いのではないでしょうか。 ※ローリングストックとは、日常生活で備蓄を使用し、常に新しいものを入れ替えること 建築基準法はこれまで何度も改正を重ねており、耐震基準も年々厳格化が進んでいます。大規模な地震に備える際は、自分が住んでいる住居の耐震基準について知っておくことも非常に重要なことだといえるでしょう。 この記事では、耐震基準の基礎知識や、旧耐震基準と新耐震基準の違いについて解説します。中古物件を購入する際に、新耐震基準に適合する物件を選ぶメリットについても触れます。物件購入を検討されている方はぜひ参考にしてください。

「耐震基準」とは、一定の強さの地震に耐えられる建物の構造の基準です。建築基準法によって定められており、建物を設計するうえで、重要な基準のひとつとなっています。

 

建築基準法の目的は「建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もつて公共の福祉の増進に資すること(建築基準法第一章第一条)」です。

 

つまり、建築基準法は、建物自体を守ることを目的としているのではなく、あくまで建物内部の人命や財産を守ることを目的として定められた法律であるといえます。

 

建築基準法によって定められている耐震基準も、大地震が発生した際に、家屋の崩落・倒壊によって人命が失われることを防ぐための基準です。そのため、耐震基準を満たしている建物であっても、大地震後にそのまま居住し続けられるとは限らないという点は押さえておきましょう。

 

耐震基準は大地震が起こるたびに見直されており、現在では「旧耐震基準」「新耐震基準」「2000年基準(現行耐震基準)※木造建築物対象」の3つの基準が存在しています。

 

 

建築基準法は1950年に施行されました。

 

耐震基準は、1978年の宮城県沖地震をきっかけに大きく改正され、新しい耐震基準は1981年6月1日に施行されました。

 

この大改正を境に、1981年5月31日までの耐震基準は「旧耐震基準」、1981年6月1日以降の耐震基準は「新耐震基準」と呼ばれています。

 

建物が旧耐震基準か新耐震基準かを見分ける方法は、次のとおりです。

 

旧耐震基準:建築確認の完了日が1981年5月31日以前のまで
新耐震基準:建築確認の完了日が1981年6月1日以降

 

1981年6月以降に竣工した建物でも、建築確認の完了日によっては旧耐震基準で建築されているケースがある点は理解しておきましょう。

 

現在は、木造住宅の耐震性向上を目的として、新耐震基準をさらに強化した「2000年基準(現行耐震基準)」が設けられています。

 

1995年に発生した阪神・淡路大震災をきっかけに、建築基準法は再び大きく改正されました。2000年基準(現行耐震基準)は、その際に新しく定められた基準です。

 

2000年基準(現行耐震基準)では、地盤を考慮した基礎設計や、建物の基礎部分と柱の接合部に取り付ける金具、耐力壁と呼ばれる壁の配置などが定められています。

 

現在、家を建てる場合は2000年基準(現行耐震基準)が適用されます。ただし、2000年基準(現行耐震基準)は木造住宅に適用されるもののため、マンションの建築にはあまり関係ありません。

 

 

現在、日本には旧耐震基準と新耐震基準、2000年基準(木造住宅は除く)のそれぞれの建物が存在します。旧耐震基準と新耐震基準にはどのような違いがあるのでしょうか。

 

それぞれの耐震基準について、詳しく見ていきましょう。

 

 

旧耐震基準は、建築基準法が施行された1950年から、1981年5月31日まで適用されていた耐震基準です。

 

旧耐震基準では、震度5程度の中規模地震を受けたとしても、建物が倒壊・崩壊しないと考えられる基準が設けられていました。

 

旧耐震基準は中規模地震しか考慮されていないため、震度5程度の地震には耐えられるものの、それ以上の大地震では倒壊の恐れがありました。

 

また、旧耐震基準では、震度5程度の地震で倒壊はしないものの、建物に損傷が生じる可能性も少なくありません。

 

1978年にマグニチュード7.4(震度5)を観測した宮城県沖地震が発生し、建物やブロック塀の倒壊などにより甚大な被害がもたらされたことをきっかけに、耐震基準が再び見直されることとなったのです。

 

 

◇新耐震基準

新耐震基準は、1981年6月1日から施行された耐震基準です。

 

新耐震基準は、宮城県沖地震の被害を受け、震度6強程度の大地震でも、建物が倒壊・崩落せず、人命や財産を守れることが基準となっています。

 

新耐震基準は旧耐震基準と比べ、耐震性に関する規定がより厳格化されました。新耐震基準では、震度5程度の中地震では軽微なひび割れ程度にとどまり、建物は損壊しない基準が設けられています。

 

新耐震基準では、大地震に耐えられるよう「一次設計(許容応力度計算)」と「二次設計(保有水平耐力計算)」の二段階にわたって耐震チェックが行なわれます。

 

一次設計とは、震度5程度の中規模な地震でも建物が倒壊しないという検証です。それに対し、二次設計とは、震度6強から7の大規模な地震でも建物が倒壊・崩落せず、内部の人命や財産を守れることを検証するものです。

 

旧耐震基準では一次設計のみ実施されていましたが、1981年以降の新耐震基準では、一次設計と二次設計の2つの検証を行なうことが定められたのです。

 

 

地震対策を考えるうえで、自分の住んでいる建物が新耐震基準を満たしているのかを知っておくことは重要です。家屋が新耐震基準か旧耐震基準かを確認するには、おもに以下の2つの方法があります。

 

・建築確認日を確認する

・建築に関する調査書を取り寄せる

 

それぞれの内容について、詳しく見ていきましょう。

 

 

耐震基準は「建築確認日」から知ることができます。

 

建築確認とは、建物を建てる前に、建築計画が法令に反していないかを行政が審査することです。つまり、建築確認日とは、建築確認申請が受理された日のことを指します。

 

建築確認日が1981年5月31日以前であれば旧耐震基準が適用されており、1981年6月1日以降であれば新耐震基準が適用されていると考えられます。

 

耐震基準を確認する際に注意すべきは、竣工日や築年月ではなく、建築確認日を確認するということです。例えば、1982年に竣工された建物であっても、建築確認日が1981年5月31日以前であれば旧耐震基準が適用されている可能性があります。

 

物件を購入する前に建築確認日を調べるのは難しいため、耐震基準を知りたい場合は物件の所有者に確認するとよいでしょう。建築確認日を調べる際は、建築確認通知書(確認済証)に記載されている発行日を見ます。

 

マンションの場合、規模の大きなマンションであれば建築工事期間が1年半以上かかる場合もあり、その場合は旧耐震基準となっている可能性があります。ですので、確認申請の受理日がいつなのかが重要となります。

 

中古マンションで耐震基準を調べたい場合には、不動産会社にお願いして建築確認済証や検査済証などに記載されている建築確認申請が受理された日をチェックする必要があります。

 

 

建築確認通知書を紛失しているような場合は、「建築計画概要書」や「建築確認台帳記載事項証明」などの建築に関する調査書を取り寄せることで、建築確認日を確かめることが可能です。

 

「建築計画概要書」は、敷地面積、建物の大きさや高さ、建築計画の概要などが記載されている書類です。建築計画概要書は、各自治体の担当窓口に問い合わせれば、無料で閲覧できます。

 

建築計画概要書には、申請日と建築確認日の2つの日付が記載されているため、建築計画概要書を受領する際はどちらの日付が建築確認日なのかを確認するようにしましょう。

 

建築確認台帳記載事項証明とは、建築確認通知書を紛失してしまった際に、建築確認通知書の代わりに発行される書類です。建築確認台帳記載事項証明は、各自治体の担当窓口にて有料で発行できます。

 

建築確認台帳記載事項証明の取り寄せには、建物の建築年や建築当時の地名や番地など、物件を特定できる情報が必要となります。物件の特定に時間がかかる場合は、即日発行できない可能性もあるため、時間に余裕を持って発行手続きをするとよいでしょう。

 

 

中古物件を購入する際に、新耐震基準が適用されているかどうかは気になるポイントです。新耐震基準が適用されている場合は、大規模な地震が起きた際の安全性に加えて、住宅ローンにも影響があります。

 

中古物件を購入する際、新耐震基準が適用されていることで得られる3つのメリットについて見ていきましょう。

 

・震災に対する安全面に配慮されている

・住宅ローン控除を受けることができる

・フラット35の利用が可能

 

 

新耐震基準の物件を購入する大きなメリットは、地震発生時の安全性が高いという点です。

 

新耐震基準の物件は、震度6強から7の大地震が起きた場合でも、倒壊しないよう設計されており、旧耐震基準よりも安全面で優れています。

 

もし旧耐震基準の物件を購入する場合は、購入後に耐震補強工事が必要となることを理解しておきましょう。

 

 

 

新耐震基準が適用されている物件を購入する場合は、「住宅ローン控除」を受けられるという節税のメリットもあります。

 

住宅ローン控除とは、住宅ローンを利用して物件を購入した場合に、住宅ローンの年末残高の0.7%が所得税額から最大で10年間控除される「住宅借入金等特別控除」の適用を受けられるというものです。

 

中古物件で住宅ローン控除を受けるには、購入する物件が新耐震基準を満たしていることが条件になります。

 

2021年までは、マンションなどの耐火住宅は築25年、木造住宅などの非耐火住宅は築20年という適用条件がありました。適用条件を満たしていない場合は、既存住宅売買瑕疵担保責任保険契約に係る付保証明書や、耐震基準適合証明書が必要でした。

 

しかし、2022年の法改正で、1982年以降の住宅は新耐震基準が適用されているとして、これらの書類の提出が不要となり、手続きが簡略化されました。

 

住宅ローン控除を申請する際は、必ず国税庁の公式サイトで最新情報を確認するようにしましょう。

 

国税庁|住宅ローン控除を受ける方へ(令和4年分確定申告特集)

 

 

◇フラット35の利用が可能

「フラット35」とは、住宅の購入や新築・リフォームなどの際に利用できる住宅ローンの一つです。フラット35は、中古物件であっても、耐久性基準に適合する住宅であれば旧耐震基準でも利用できます。

 

フラット35は、民間金融機関と住宅金融支援機構が提携して提供しており、最長35年の固定金利で住宅ローンを組むことができます。また、フラット35は、民間金融機関と比べて厳しい審査がない点も特徴です。

 

独立行政法人住宅金融支援機構|フラット35について

 

 

日本は地震の発生が多い国です。自分や家族の命、財産などを守るためにも、自宅の耐震強度を高めることは非常に重要だといえます。

現在は「旧耐震基準」「新耐震基準」「2000年基準(現行耐震基準)」と呼ばれる3つの耐震基準の建物が存在しています。耐震基準は、大地震のたびに改正を重ねており、年々厳格化されています。

旧耐震基準の建物は、大地震を想定した構造にはなっていません。耐震強度に不安がある場合は、耐震補強工事などを検討してみてはいかがでしょうか。

まずは、自宅がどのような耐震基準で建てられているかを確認し、将来起こりうる大地震に対して、どのような対策が必要かを考えることが大切です。

 

 

■監修者

𠮷田 茂治(よしだ しげはる)

保有資格
・税理士、宅地建物取引士
・銀行融資診断士等

プロフィール
大学卒業後、信託銀行に勤務した後、銀行再編を機に退職。税理士だった祖父への憧れから会計事務所で働きながら資格取得に励み、税理士資格を取得。その後、独立開業。

現在は、多数の創業支援や中小企業の経営計画書の作成、会計、税務、資金繰りのアドバイスを行い、経営者の意思決定の支援等に携わる。

HP:https://ichigaya-kouko-yushi.com/page-01/