親が死んだらすること|マンションの取り扱いや相続手続きについて解説

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親が亡くなったとき、やらなければならない手続きは数多くあります。そのため、「何から手を付ければ良いか分からない」「親が住んでいたマンションはどうすれば良いのか」など、不安や疑問がある方も多いのではないでしょうか。 今回は、親が亡くなったらすべきことを時系列で説明するとともに、相続手続きの流れや、親が住んでいたマンションの取り扱いについても解説します。スムーズに手続きを進められるよう、ぜひ参考にしてください。

画像提供:PIXTA

親が亡くなったら、相続手続きも進めていかなければなりません。期限が決まっている手続きもあるため、順を追って確認していきましょう。

 

 

まずは、誰が「法定相続人」に該当するのかを特定する必要があります。法定相続人とは、被相続人の子どもや配偶者など「民法上、被相続人の財産を相続できる人」のことです。

 

法定相続人を特定するため、以下の書類を集め、親が生まれてから亡くなるまでの家族関係を調べます。

戸籍謄本 戸籍内の人の氏名や出生年月日、本籍地、戸籍に入った原因・年月日などが記されているものです。
除籍謄本 戸籍内の人が、結婚・離婚・死亡などの理由で全員いなくなっていることを証明するものです。
改製原戸籍謄本 戸籍の電子化や再編成などにより、現在は使われていない古い戸籍謄本を指します。

 

 

遺言書の種類には、大きく分けて以下の3つがあります。

自筆証書遺言 遺言者本人が、遺言の内容・日付・氏名を自書して作成する遺言書です。用紙と筆記用具、印鑑さえあれば、費用をかけずに手軽に作成できるメリットがあります。
公正証書遺言 専門家である公証人に作成してもらう遺言書です。手数料はかかるものの、遺言書の原本を公証役場で保管してもらえるため、紛失のリスクが低い形式といえます。
秘密証書遺言 遺言者本人が遺言書を作成したあと、公証役場に持ち込んで保管を依頼する形式の遺言書です。遺言の内容は秘密にしたまま、遺言書の存在だけを明らかにできます。

これらの遺言書のうち、自筆証書遺言と秘密証書遺言は検認手続きが必要です。法定相続人の立ち会いのもと、家庭裁判所にて手続きを行ないましょう。検認手続きにより、法定相続人全員が遺言の存在と内容を把握でき、以後の偽造・破棄防止につながります。

 

 

続いて、親が所有していたあらゆる財産を洗い出します。以下のように、現金や預貯金、不動産などのプラスの財産だけではなく、借金や住宅ローンといったマイナスの財産も相続の対象となります。

 

【プラスの財産の例】
•    現金
•    預貯金
•    不動産(宅地・農地・建物など)
•    動産(車・家財・骨董品など)

 

【マイナスの財産の例】
•    借金
•    住宅ローン
•    未払いの税金
•    未払いの家賃

 

例えば、預貯金を確認するためには、金融機関ごとに残高証明書や取引明細書を請求します。不動産なら、登記関係の書類や固定資産税の課税通知書を整理し、状況に応じて役場や法務局にて「登記事項証明書(登記簿謄本)」や固定資産評価証明書などを取得する必要があります。

 

 

遺産分割協議とは、被相続人(今回は親を想定)の相続財産をどのように分けるか、法定相続人同士が話し合うことです。法定相続人全員が参加していない場合、遺産分割協議の内容は無効になります。

 

遺産分割協議が必要となるのは、おもに以下のようなケースです。

 

•    遺言書がなく、法定相続人が複数人いる場合
•    遺言書はあるが、遺言書とは異なる内容で遺産分割したい場合
•    遺言書に記載のない相続財産がある場合

 

一方で、遺言書はないが法定相続人が1人しかいない場合や、遺言書があり、かつ遺言書の内容どおりに相続財産を分ける場合は、原則として遺産分割協議は不要です。

 

遺産分割協議が成立したら、不動産の名義変更登記をします。

 

 

・状況に応じて相続放棄も検討する

 

亡くなった親が借金を抱えていた場合などは、相続放棄を検討すると良いでしょう。相続放棄の手続きの期限は、民法915条1項に記載がある通り、「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内(※)」で、家庭裁判所にて手続きを行ないます。相続放棄の手続きをした法定相続人は、遺産分割協議に参加する必要はありません。

 

ただし、相続放棄をすると、マイナスの財産だけではなく、プラスの財産も相続できなくなるため注意が必要です。

 

※出典:e-Govポータル

 

法定相続人が、亡くなった被相続人(今回は親を想定)の代わりに確定申告することを「準確定申告」といいます。亡くなった親の住んでいた地域を管轄する税務署に、確定申告書や源泉徴収票、控除証明書などの必要書類を提出しましょう。

 

準確定申告手続きの期限は、相続の開始を知った日の翌日から4ヵ月以内です。

 

 

相続財産の総額が大きい場合は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヵ月以内に、管轄の税務署へ相続税を申告しなければなりません。

 

具体的には、相続財産の総額が「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」で求める相続税の基礎控除を上回る場合に、相続税の申告が求められます。例えば、法定相続人が2人なら4,200万円、4人なら5,400万円が、相続税申告の必要性を判断する基準となります。

 

なお、相続財産のうち、お墓や仏壇仏具といった祭祀に関する財産や、公共事業に用いられる財産などには、相続税はかかりません。

 

 

画像提供:PIXTA

親が住んでいたマンションも、相続財産の一つです。ここでは、相続した親のマンションについて、早めに処分すべき理由と具体的な処分方法を解説します。

 

 

◇マンションの処分は早めにすべき

誰も住んでいない空き家でも、毎年固定資産税がかかります。固定資産税は、毎年1月1日時点で、マンションなどの固定資産を所有している人に課さられる税金です。

 

マンションの固定資産税の額は、建物・土地の評価額や専有面積などの条件によって変わります。ただし、築年数がある程度経過しているマンションでは、建物と土地の固定資産税の合計が10万円以上となるケースは珍しくありません。

 

また、空き家となったマンションを放置し、老朽化が進むと、資産価値が下がるリスクや、不法侵入・不法滞在といった犯罪行為に利用されやすくなるリスクもあります。このような理由から、マンションを相続したら早めの処分を検討しましょう。

 

なお、マンションを処分するにあたっては、親の遺品も整理する必要があります。ケースに応じて、遺品整理業者へ依頼すると良いでしょう。

 

 

◇マンションの処分方法

マンションの処分方法には、大きく分けて「売却」と「活用」があります。

 

・マンションを「売却」する場合

 

マンションのおもな売却方法は、以下の2つです。

 

•    そのままの状態で売却する
•    リフォームしてから売却する

 

マンションをそのままの状態で売却する場合は、リフォーム費用がかかりません。ただし、築年数が古く老朽化が進んでいたり、設備が時代にそぐわなかったりすると、リフォームをしないと買い手が付きにくいかもしれません。

 

マンションのリフォームは、管理規約の内容に沿って行なう必要があります。リフォームしやすい箇所としては、以下が挙げられるでしょう。

 

•    室内の壁紙
•    天井のクロス
•    床材
•    キッチン、トイレなどの水回り設備(位置の変更をともなわないもの)

 

なお、親が暮らしていたのが一戸建ての場合は、建物を解体し更地にしてから、土地を売却する選択肢もあります。

 

・マンションを「活用」する場合

 

マンションのおもな活用方法は、以下の2つです。

 

•    賃貸物件として第三者に貸し出す
•    相続人が住む

 

ケースによっては、賃貸物件として第三者に貸し出せない可能性もあります。貸し出せたとしても、劣化状況によっては、マンションを第三者に貸し出す前のリフォームが必要になるでしょう。

 

一方で、相続したマンションに住む場合、すでに相続に関する手続きが済んでいれば、あとは引越しするだけです。

 

第三者に貸し出すのが現実的ではなく、相続人が住む予定もないなら、マンションの一般的な処分方法はやはり売却となります。相続した親のマンションを売却する流れについて、次章で詳しく見ていきましょう。

 

 

画像提供:PIXTA

相続した親のマンションを売却する流れは、「仲介で売却する場合」と、「買い取りで売却する場合」とで異なります。ここでは、それぞれのケースにおけるマンション売却の流れを見てみましょう。

 

 

1つ目は、マンションの所有者から依頼を受けた不動産会社(仲介業者)が、購入希望者を探す方法です。具体的な手続きの流れは、次のとおりです。

 

(1)不動産会社に査定を依頼する:不動産会社にマンションの価値を査定してもらいます。どの不動産会社に査定を依頼すれば良いか迷ったら、次章「不動産会社を選ぶ際のチェックポイント」を参考にしてください。

(2)媒介契約を結ぶ:どのような条件でマンションの売却活動を進めるか、契約が成立した際の報酬はどのくらいかなどについて、不動産会社と媒介契約を結びます。

(3)価格を決定し売却活動を始める:不動産流通標準情報システム「レインズ」にマンションの物件情報を登録するほか、不動産ポータルサイトやチラシなどを活用し、不動産会社が購入希望者を募集します。

(4)購入希望者と売買契約を結ぶ:マンションの買い手が決まったら、売り手・買い手・不動産会社の3者が集まり、売買契約を締結します。

(5)決済・引き渡しをする:買い手から売却金額を受け取り、マンションを引き渡したら取引は完了です。引き渡し前に行なう不動産登記などの手続きは、基本的には不動産会社が中心となって進めてくれます。

 

 

2つ目は、不動産会社(買取業者)が、マンションの所有者から直接マンションを買い取る方法です。具体的な手続きの流れは、次のとおりです。

 

(1)不動産会社に査定を依頼する:仲介で売却する場合と同様に、不動産会社にマンションの価値を査定してもらいます。

(2)不動産会社と売買契約を結ぶ:マンションをいくらで買い取ってもらうのか、引き渡しの日はいつにするのかなどについて、不動産会社と売買契約を締結します。

(3)決済・引き渡しをする:売買契約書の内容にしたがって、決済とマンションの引き渡しを済ませます。

 

 

画像提供:PIXTA

マンションを売却するには、不動産会社選びが重要です。不動産会社を見極めることで、より良い条件でのスムーズな売却が期待できます。

 

不動産会社を選ぶ際は、次のようなポイントをチェックしましょう。

 

•    マンションの売却・買取実績が豊富である
•    査定価格の根拠を明示してくれる
•    より良い条件で売却するための提案力がある
•    マンションがあるエリアの特色を把握している
•    スピーディーに対応してくれる

 

不動産会社によって得意な分野・エリアが異なるため、マンションの売却・買取実績が豊富なことや、マンションがあるエリアに精通していることは重要なポイントです。また、リフォームやハウスクリーニングなど、売却をスムーズに進めるためのアドバイスをしっかりとしてくれる不動産会社かどうかも確認すると良いでしょう。

 

以下の流れで相続手続きを進めましょう。

 

(1)    相続人を特定する
(2)    遺言書がある場合は検認する
(3)    相続財産を調べる
(4)    遺産分割協議をする
(5)    所得税の準確定申告をする
(6)    相続税を申告・納付する

 

相続財産のなかにマンションがあった場合は、売却するか活用するか、早めに検討することが大切です。売却する場合は、仲介または買い取りのどちらの方法で売却するかも選び、信頼できる不動産会社に相談しましょう。

 

 

■監修者

髙橋 賢司

保有資格
・弁護士
・司法書士
・事業承継士
・事業承継アドバイザー
・M&Aシニアエキスパート
・日本プロ野球選手会公認選手代理人
・健康経営アドバイザー

プロフィール
弁護士法人横浜りんどう法律事務所の代表弁護士/横浜りんどう司法書士事務所の代表司法書士。衆議院法制局(元)参事(労働立法担当)。①相続・遺言問題(会社の事業承継を含む)、②会社・経営者側の労働問題、③不動産問題(特に登記関連)を主な取扱い案件として、迅速・丁寧をモットーに業務に取り組む。