マンションのメンテナンス時期や寿命、費用について詳しく解説

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マンションの寿命を延ばすには、定期的なメンテナンスが不可欠です。しかし、メンテナンスの必要性は理解していても、点検時期や修繕費用などのイメージがつかめない方もいるのではないでしょうか。マンションは一戸建てとは異なり、管理組合と入居者それぞれが適切に管理や修繕を続けることが大切です。 本記事では、マンションの寿命からメンテナンスの区分や時期、費用の目安まで詳しく解説します。

 

鉄筋コンクリートのマンションは、建ててからどのくらいの間住めるのでしょうか。ここでは建物と設備の寿命を解説します。

 

 

 

マンションは、メンテナンス次第では100年以上もつといわれています。国土交通省の調査によれば、鉄筋コンクリート造のマンションの平均寿命は68年ですが、構造体としての鉄筋コンクリート部材の耐用年数は120年程度で、外装仕上げにより150年まで延びることが報告されています。

 

なお、マンションの法定耐用年数は47年とされていますが、これは法律上の資産価値を示すための指標です。そのため、47年を過ぎたら住めなくなるというわけではありません。適切な点検・修繕を続ければ建物は長持ちします。

 

 

 

一方、マンションは建物以外にも以下のような設備の寿命も考慮しなければなりません。

 

・配管設備
・エレベーター
・機械式駐車場
・排水管や給湯器など水回り

 

これらは10年から30年ほどで寿命を迎えてしまいます。古いマンションでは建物よりも設備が先に寿命を迎えて、建て替えや取り壊しを検討するケースもあります。メンテナンスを考える際には、外装だけでなく各所の設備も計画的に行なう必要があるでしょう。

 

 

 

老朽化して寿命がきたマンションに対しては、以下3つのケースが考えられます。

 

・建て替える
・売却する
・そのまま放置する

 

マンションの建て替えには、区分所有者(専有部分の持ち主)の5分の4以上の賛成が必要です。ただし、建物の取り壊し費用や建築費用、それにともなう引越し費用などは区分所有者が負担します。

 

売却は大手不動産会社などのデベロッパーにマンションを売却し、区分所有者に利益を分配する方法です。しかし、建物の売却費用から解体費用を差し引くため利益は多くありません。

 

このように、建て替えや売却は区分所有者への負担が大きく利益が少ないのが現状です。そのため、建物の老朽化をそのまま放置してしまうケースもあります。特に築年数が長い場合は、居住者の高年齢化や空室の進行によって建て替えや売却が困難になりつつあります。

 

 

マンションは共用部分と専有部分で管理担当者が異なります。では、共用部分と専有部分の区分けをそれぞれ見ていきましょう。

 

 

 

共用部分とはマンションの住人全員が共有する部分のことです。具体的には以下のような箇所を指します。

 

・建物の躯体(くったい)※骨格部分
・エントランス
・共用廊下
・エレベーター
・階段
・駐車場
・管理人室
など

これらの共用部分は管理組合がメンテナンスを担当し、費用は入居者全員が管理組合に支払う管理費や修繕積立金によって賄われます。

 

 

 

一方で専有部分とは、区分所有者が単独で所有している建物の部分のことです。例えば、以下のような箇所が挙げられます。

 

・躯体以外の内側の間仕切り壁
・フローリング
・畳
・玄関扉の錠・内装
・室内のドア
・キッチン
・レンジフード
・浴室
・洗面台
・トイレ
・クローゼット
など

 

これらの箇所は、管理規約を遵守のうえ区分所有者がメンテナンスを行ないます。加えて、壁紙の変更など自由にリフォームすることも可能です。ただし、工事の種類や規模などによっては管理組合への届出が義務付けられている場合があります。勝手に工事を始めるとトラブルの原因になるため注意しましょう。

 

 

 

専有部分と間違いやすいものに「専用使用部分」があります。共用部分のうち、住人が専用に使用する部分のことで、以下のような場所を指します。

 

・玄関ドア
・インターホン
・バルコニー
・ベランダ
・窓ガラス、窓枠
・網戸
・パイプスペース

 

これらの箇所は勝手に変更することはできません。例えば、インターホンを新しいものに交換したい場合、管理組合の許可をもらう必要があります。ほかにも専用使用部分で禁止されていることはマンションの規約により異なりますので、よく確認しましょう。

 

 

 

マンション共用部分のメンテナンスでは、大規模修繕工事など大きな費用負担があります。ここでは費用の目安や修繕積立金に関して解説します。

 

 

 

国土交通省が発表した「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」よると、大規模修繕の費用は1回目の工事が「4,000~6,000万円」の割合が最も高いです。2回目は「6,000~8,000万円」が高く、3回目以上は「6,000~8,000万円」と「1億~1億5,000万円」の割合がそれぞれ最も高いという結果になりました。

 

データを見ると、大規模修繕を重ねるにつれて費用が高額になっていることがわかります。ただし、上記の金額はあくまでも目安であり、建物の面積や規模劣化状況によっても異なります。

 

▶出典:令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査|国土交通省

 

 

 

大規模修繕の費用は、区分所有者が支払う修繕積立金から出費します。国土交通省が発表した「平成30年度マンション総合調査」によると、修繕積立の総額の平均は月/戸当たり12,268円です。この金額には、駐車場の使用料などからの充当額も含まれています。修繕積立金の金額は建物の築年数によっても異なり、中古よりも新築のほうが安い傾向にあります。

 

ただし、修繕積立金が入居からずっと定額とは限りません。物価の高騰による修繕費の上昇や計画外の修繕により、値上げせざるを得ないケースもあります。

 

▶出典:平成30年度マンション総合調査|国土交通省

 

関連記事:『管理:建物を長持ちさせるポイント 』

 

 

 

マンション専有部分のメンテナンス費用は、設備の種類や利用状況により大きく異なるため、一概に金額を明示することはできません。ここでは参考として、住宅リフォーム推進協議会が報告した「2022年度住宅リフォームに関する消費者(検討者・実施者)実態調査」の結果を紹介します。

 

調査によると、マンションのリフォームを実施した人の検討時の予算と実際の費用の平均はそれぞれ以下のように異なりました。

 

・検討時の予算:216万6,000円
・実際の費用:278万6,000円

 

検討時と実際の費用には50万円以上の差があります。大規模修繕と同じく専有部分のメンテナンスにかかる費用も見積もりより高くなる可能性があるため、余裕を持った資金計画が必要といえるでしょう。

 

▶出典:2022年度住宅リフォームに関する消費者(検討者・実施者)実態調査|住宅リフォーム推進協議会

 

 

マンションを長持ちさせるためには、どのくらいの周期で点検や修繕が必要なのでしょうか。ここでは、共用部分と専有部分に分けてそれぞれ解説します。

 

 

 

共用部分のメンテナンスには大きく分けて「大規模修繕」と「法定点検」があります。

 

・大規模修繕は12~15年周期が多い

大規模修繕は複数回行なわれますが、国土交通省が発表した「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」によると、約7割が12~15年周期で行なわれています。

また、大規模修繕工事の回数が増えるにつれて、以下のように平均修繕周期も短くなる傾向が見られます。

 

・1回目:15.6年
・2回目:14.0年
・3回目:12.9年

 

▶出典:令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査|国土交通省

 

・法定点検の種類と時期

 

法定点検は、マンションの建物や設備に対して義務付けられており、点検箇所によって周期が異なります。おもな法定点検の一覧と周期を以下の表にまとめました。

点検の名称 点検の周期 点検の内容
特定建築物定期調査 3年に1回(都道府県による) 地盤や外壁、敷地の排水状況、建物構造強度などの建物全体の点検
建築設備定期検査 1年に1回(規模や用途による) 換気設備や排煙設備、非常用の照明、給水設備、排水設備、昇降機などの点検
防火設備定期検査 防火シャッターや防火ドアなど防火設備の点検
エレベーター定期検査 1年に1回以上 エレベーターやエスカレーターの機能全般の点検
消防用設備点検 ・機器点検:半年に1回
・総合点検:1年に1回
消火器や消火栓、誘導灯、連結送水管などの点検。
・機器点検は設備の配置状態や簡易な操作による確認
・総合点検は設備の全部もしくは一部を作動させ機能を確認する
防火対象物点検 1年に1回(規模や用途による) 防火管理者を選任しているか、訓練の実施状況や避難経路に障害がないか、カーテン等に防火表示があるか等の点検
簡易専用水道検査 1年以内ごとに1回 水槽等の清掃記録や給水設備の管理状況の点検、水質検査など(受水槽の有効容量が10立方メートルを超える場合に実施。)
貯水槽清掃 1年以内ごとに1回 貯水槽(受水槽)の有効容量が10立方メートルを超える場合に実施。
(自治体によっては10立方メートル以下でも必要)
自家用電気工作物定期点検 高圧受電設備(600Vを超える)の月次点検と年次点検 高圧受電設備(送電・配電など電気使用のための機械)が設置されているマンションでは、管理組合の責任で点検が必要。

法定点検は点検の箇所によって関係する法律が異なり、いずれも有資格者が行なう必要があります。

 

 

 

専有部分の水回りや排気設備、電気設備などは10~20年で取り替えを検討する必要があります。 場所にもよりますが少なくとも1年に1度は点検し、少しでも不具合があったら修繕を実施しましょう。その際には、将来のメンテナンスなども考慮し、点検の結果や修繕の記録は保存しておくとよいでしょう。先述のとおり、場所によっては専用使用部分が関係するため、取り替えする際には管理組合などへの相談が大切です。

 

 

マンションは適切にメンテナンスすることで寿命を延ばすことができます。共用部分は管理組合、専有部分は区分所有者の負担になるため、規約などを確認して自分が管理すべき箇所を把握しておきましょう。

 

また、大規模修繕の費用や専有部分の点検・修繕費用は、修繕費の高騰や修繕計画の変更により変動します。メンテナンスが必要になる時期や費用を把握し、想定外の支出や修繕に関するトラブルで困ることのないよう、余裕のある資金計画・修繕計画を立てておきましょう。

 

▶︎関連リンク:「ワンチーム」で大規模修繕を乗り切ったマンションの取り組み

監修者

高槻 翔太

<保有資格>

  • 宅地建物取引士
  • FP技能士2級
  • 日商簿記2級

<プロフィール>

不動産・建設会社で土地有効活用のコンサルティング営業経験(6年)。売買や駐車場の活用、リフォームの提案などに従事。不動産・金融特化のライターとして不動産系メディアでの執筆実績多数。