マンションの床は2種類の工法があり、床下の構造もそれぞれ異なります。床の工法によってリフォームの工法も変わるため、事前に施工方法を確認する必要があります。床材を選ぶ際は、メリット、デメリットも考慮して適切なものを選ぶことが大切です。 本記事では、2種類の工法のメリット・デメリット、工法の見分け方、リフォームの工法、床材の種類と特徴、リフォーム時の注意点について解説します。
■リフォームの前に! マンションの床の工法を把握しよう
マンションの床を施工する際の2種類の工法、工法の見分け方について解説します。
◇直床工法
直床(じかゆか)工法とは、床スラブ(コンクリート造の構造床)の上に、床材を直接貼り付ける工法のことです。直床工法は古くからある工法のため、築年数が古い集合住宅では一般的に採用されています。
直床工法では床スラブに直接床材を張るため、足音や物を落としたときの衝撃音が伝わりやすくなります。衝撃音を抑えるため、フローリング材の裏面に遮音材が付いていることが通常です。
直床工法のメリット、デメリットには、以下のものが挙げられます。
直床工法のメリット | ・床下に空間がないため、天井を高くできる |
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直床工法のデメリット | ・衝撃音が階下に伝わりやすい ・床スラブに配管を埋め込んでいるため、水回りの配置変更など、配管を移動するような大規模なリノベーションが困難 |
配管を通す関係上、水回りなどの必要な部分だけ床スラブを調整しなければなりません。床の段差をなくすため、水回りの床スラブを下げるケースもあります。
◇二重床工法
二重床工法とは、床スラブに支持脚ボルトなどを建て、その上に床材を張る工法です。床材を安定させるため、支持脚ボルトには防振ゴムが付いています。
直床工法と異なり、床材と床スラブの間に空間がある二重構造が大きな特徴です。床スラブと床材の間の空間は、給排水やガスなどの配管を通す場所として活用します。
二重床工法のメリット、デメリットには、以下のものが挙げられます。
二重床工法のメリット | ・リフォームや間取りの変更がしやすい ・支持脚で高さを調整でき、バリアフリー化が可能 ・物を落としたときの軽量床衝撃音が伝わりにくい |
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二重床工法のデメリット | ・支持脚ボルトの接地など、施工が増えるためコストが高い ・床下の空間により、足音などの重量床衝撃音が増幅されやすくなる |
直床工法と二重床工法では、それぞれにメリット、デメリットがあります。
ただし、遮音性能については、直床工法と二重床工法のどちらが優れているとは一概にはいえません。なお、二重床工法では空気層で音が反響する「太鼓現象」が起こるため、防音性を高める対策が必要です。
◇直床工法と二重床工法の見分け方
前述の通り、直床工法では遮音性を高めるため、裏側に遮音材を施したフローリング材を用います。
したがって、床の踏み心地がやわらかいと感じる場合、直床工法の可能性が高いでしょう。フローリング材だけでなく、カーペット張りのマンションも直床工法の可能性が高いと考えられます。
また、水回りの周辺も着目したいポイントです。水回りの周辺には給排水管を設置する空間が必要であるため、そこだけ床が高くなっている場合、直床工法の可能性が高いでしょう。加えて、ベランダに面する窓の下枠が、床から10cm以上高い場合も直床工法と予想されます。
他方、二重床工法かどうかを判断できるポイントは、ベランダへの出入り口の高さです。ベランダの床の高さは床スラブと同じであるため、床とベランダに面する窓の下枠の高さがほぼ同じで、段差がなければ二重床工法の可能性が高いでしょう。
二重床工法は2000年以降に誕生した工法のため、新しい物件で採用されることが
なお、直床工法と二重床工法を見分けるのが難しい場合、マンションの販売会社やリフォーム会社に確認すると良いでしょう。
■マンションの床をリフォームするときの工法とは?
直床工法と二重床工法では床下の構造が異なるため、リフォームに適した工法も異なります。次に、床をリフォームする際の2つの工法、そして直床工法と二重床工法のそれぞれに適したリフォーム方法について解説します。
◇張り替え
張り替えとは、現在の床材をすべてはがし、新しく床を作り替える工法です。張り替えでは床の高さを調節できるため、段差のない床を作ることが可能です。
新しい床材に変更する際、従来の床材と比べて遮音性能や断熱性能が高いものを選べます。また、床材をすべてはがすことで床下地の状態を確認でき、必要に応じて修繕することも可能です。
ただし、床材の解体と廃棄にはコストがかかる上に、後述する重ね張りと比べて工期が長くなります。解体時に騒音が発生する点も、張り替えのデメリットといえます。
◇重ね張り
重ね張りとは、既存の床材の上に新しい床材を重ねて張る工法です。
張り替えと異なり解体が不要で、解体や床材の廃棄にかかるコストを抑えられます。古い床には手を加えないため、短い工期でリフォームすることも可能です。
また、床材が二重になることで、床の強度や遮音性が高くなるメリットがあります。ただし、床が高くなって段差ができる、ドア部分の高さ調整が必要、床暖房の効きが悪くなるなどのデメリットもあります。
なお、重ね張りができるのはフローリングに対してのみであり、カーペットには対応できないので注意が必要です。
◇床の工法に適したリフォーム方法とは?
床スラブに直接床材を張る直床工法の場合、既存の床材に仕上げ材を張る重ね張りには対応できません。直床工法の床材に重ね張りをすると、かえって遮音性能が低下する可能性もあります。
直床工法で施工された床は、直床工法でリフォームすることが基本です。古い床材をはがして新しい床材を張る、張り替え工法で対応する必要があります。
一方、二重床工法では、重ね張りと張り替えのどちらでも対応が可能です。リフォーム費用を安く抑えたいときは重ね張り、機能性が高い床材に変えたいときは張り替えと、予算や用途に合わせられます。
◇直床から二重床へのリフォームも可能
直床工法はリフォームの工法が限られるので、二重床にリフォームすることも可能です。
ただし、二重床工法は床スラブと床材に空間を設けることから、天井の高さが低くなる場合があります。建物本体の躯体のコンクリートは除去できないため、十分な天井高を確保できるか確認が必要です。
■床のリフォームで使用する床材の特徴
床をリフォームする際、どの床材を選べば良いか迷うこともあるでしょう。そこで、代表的な床材の特徴、メンテナンス方法について解説します。
◇フローリング
フローリングはどれも同じに見えるかもしれませんが、無垢と複合(合板)の2種類があります。
無垢とは、スギやヒノキなどの天然木を板状に切り出したものです。一方、複合とはベースとなる合板の表面に、化粧板やシートを貼り付けたものを指します。
無垢は天然木100%のところ、複合は合板と化粧板で層になっています。無垢と複合のメリット・デメリットは次の通りです。
種類 | メリット | デメリット |
---|---|---|
無垢 | ・肌触りが良く、冬でも温もりを感じる ・断熱性が高い ・調湿作用がある ・天然木の種類で色や質感が異なる |
・複合よりも高値 ・調湿性により、収縮や膨張で板が反る ・耐水性が低い ・熱に弱く、ホットカーペットやこたつに適さない |
複合 | ・無垢と比べて安価 ・耐水性が高い ・収縮や膨張、反りが起きにくい ・傷や凹みがつきにくい ・色やデザインのバリエーションが ・豊富施工できるリフォーム会社が多い |
・硬質で踏み心地が良くない ・無垢と比べて冷たく感じる可能性がある ・調湿性がない ・深く傷つくと中の合板が見える ・接着剤の経年劣化で化粧板がはがれることがある |
無垢と複合で価格や特徴が異なるため、予算や用途に合うものを選びましょう。なお、遮音性能を高めた防音フローリング、床暖房対応フローリングなど、用途に合わせた機能性を持つフローリング材を選ぶことも可能です。
フローリングのセルフメンテナンスは、掃除機がけ、モップやぞうきんでの乾拭きが基本です。ただし、無垢、および表面を塗装していない化粧板の複合は、定期的にワックスを塗る必要があります。
◇クッションフロア
クッションフロアとは、ポリ塩化ビニルで作られた、クッション性に優れる床材です。フローリングの模様をしたシートになっており、床に敷き詰めるだけでリフォームできます。
樹脂製のため汚れに強く、水をこぼしてもシミになりません。木目調や大理石調などさまざまな柄があり、インテリアに合う柄を選ぶことも可能です。
ただし、クッション性が高い反面、家具の跡が残りやすくなります。熱に弱い性質のため、タバコや熱湯で表面が溶けることもあります。
クッションフロアは汚れが落ちやすいため、掃除機がけや乾拭き、濡れ拭きと普段の掃除でメンテナンスが可能です。
◇フロアタイル
フロアタイルとは、ポリ塩化ビニル系の素材で作られた、薄いタイル状の床材のことです。同じ素材のクッションフロアとは異なり、本物の木材に似た見た目と硬さが特徴です。
薄手で硬い質感のため、家具を置いても跡がつきにくいメリットがあります。また、木目調やモルタル調などデザインが豊富で、クッションフロアよりも高級感がある印象を与えられます。
フロアタイルはパーツを組み合わせて張る工法のため、DIYでリフォームすることも可能です。ただし、サイズの計測や接着剤の扱いが難しいため、リフォーム会社に依頼したほうが良いでしょう。
◇カーペット
カーペットは遮音性が高いため、騒音対策を重視したいときに有効です。フローリングと比べて滑りにくく、小さいお子さんや高齢者、ペットを飼っている家庭に適しています。
また、フローリングと比べて、足元からくる冷えが少ないメリットもあります。
ただし、カーペットは汚れが落ちにくいのが大きな弱点です。飲み物をこぼすとシミになる上に、ダニやカビ・ホコリなどのハウスダストが発生しやすくなります。
カーペットをきれいに保つには、普段からこまめに掃除機をかけ、汚れが目立つ部分をメンテナンスすることが大切です。汚れがあるときは、カーペット用洗剤や住居用洗剤をぬるま湯で薄めたもので拭き掃除をしましょう。
また、カーペットにシミがついた場合、なるべく早く対処することが大切です。ベンジンと洗剤、水を混ぜたものをシミに塗り、シミが取れるまでティッシュペーパーなどでくり返し汚れを吸い取りましょう。
なお、タバコなどで焦げ跡ができたときは、カーペットの毛足や似た色の毛糸で「植毛」する方法が有効です。焦げ跡に接着剤を塗り、毛足を1本ずつ植え込んでいくことで焦げが目立たなくなります。
◇畳
弾力性に優れる畳は、足腰に負担が少なく、フローリングよりも部屋が冷えないメリットがあります。調湿性に優れる上に、防音性能が高いことも畳の特長です。
ただし、畳は日焼けや摩擦で傷むため、裏返しや表替え、新調などのメンテナンスが必要です。
なお、最近のマンションでは、厚さが15~35mmほどの薄畳を使うケースも見られます。従来のい草だけでなく、樹脂を使った人工い草を用いる薄畳もあります。
薄畳の種類によっては、表替えや新調が難しいケースもあるので注意が必要です。
■マンションの床をリフォームするときの注意点
マンションの床をリフォームするときの注意点としては、以下のものが挙げられます。
◇管理規約の遮音等級を確認する
遮音等級とは、階下への音の伝わりを示す指標のことです。遮音等級は、L-40やL-45のように「L値」で表示され、L値の数字が小さいほど遮音等級、つまり遮音性が高くなります。
遮音性能のあるフローリングにリフォームする場合、管理規約にある基準を満たす床材を使用する必要があります。遮音性能が低い無垢のフローリングなどは、遮音下地材を利用して遮音性能を高めるなど工夫が必要です。
なお、マンションでリフォームする場合、管理組合から承認を受けなければなりません。遮音等級の確認と並行して、事前に管理規約の詳細を確認しましょう。
◇床暖房のフローリングをリフォームする場合
床暖房の工法には、以下の2種類があります。
・仕上げ材分離型
・仕上げ材一体型
仕上げ材分離型とは、床暖房のパネルと床材が分離した工法です。フローリングやカーペット、畳など、さまざまな種類の床材を使用できます。
一方、仕上げ材一体型では、床材に床暖房システムが組み込まれたものを用いる工法です。仕上げ材を選べる自由度は下がりますが、熱効率が良く、簡単に施工できるメリットがあります。
仕上げ材分離型であればフローリングのみ張り替えできますが、仕上げ材一体型は熱源から交換しなければなりません。マンションの管理規約によっては、床暖房にリフォームできないケースもあるので注意が必要です。
■まとめ
マンションの床をリフォームする際、直床工法か二重床工法かを確認しましょう。二重床工法は重ね張りと張り替えのどちらも対応できますが、直床工法は従来と同じ工法で張り替えることになります。
床材ごとに特徴が異なるため、用途やライフスタイル、メンテナンスなどの点も含めて考慮する必要があります。マンションの床をリフォームする際は、床材の遮音性能の確認など、管理組合の承認と適切な手順でリフォームすることが大切です。
監修者
高槻 翔太
<保有資格>
- 宅地建物取引士
- FP技能士2級
- 日商簿記2級
<プロフィール>
不動産・建設会社で土地有効活用のコンサルティング営業経験(6年)。売買や駐車場の活用、リフォームの提案などに従事。不動産・金融特化のライターとして不動産系メディアでの執筆実績多数。