マンションの固定資産税評価額の目安や計算方法、調べ方|軽減措置も解説

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マンションを購入すると毎年納めなければならない固定資産税額を決める基準となるのが「固定資産税評価額」です。また、都市計画税や不動産取得税、一部の登録免許税の税額も固定資産税評価額を基準として計算されます。 この記事では、土地・建物それぞれの固定資産税評価額の目安や計算方法、マンションにおける調べ方、分譲マンションで適用可能な固定資産税の軽減措置の内容を解説します。

固定資産税評価額とは、不動産の固定資産税額を求める際の基準となる土地・建物の評価額のことです。総務大臣が定める「固定資産税評価基準」をベースに、課税主体である市町村長が評価を決定します。

 

固定資産税評価額は3年に一度評価替えが行なわれており、直近では令和6(2024)年度に実施されました。

 

決定された固定資産税評価額に所定の税率をかけ、軽減措置などを適用したあとの金額が、その土地・建物の固定資産税額となります。

 

 

土地と建物の固定資産税評価額には、それぞれ目安となる基準が設定されています。ここでは、土地・建物ごとに固定資産税評価額の大まかな目安と計算方法を解説します。

 

 

 

土地(宅地)については「地価公示価格等×7割」を目途に評価を行なうのが原則です。地価公示価格とは毎年1月1日時点における標準地1平方メートル当たりの価格のことで、国土交通省が年に1回3月中旬に公表しています。固定資産税評価額のみならず、土地取引、担保評価、相続税路線価など、さまざまな土地評価の基準となっています。

 

固定資産税評価額は、具体的には「路線価方式」もしくは「標準地比準方式」で計算されます。ある路線(道路)に面する土地1平方メートル当たりの価格(固定資産税路線価)をもとに評価額を計算するのが路線価方式です。マンションが立地する市街地では、路線価方式が用いられます。

 

標準地比準方式は、利用状況が似ている地域ごとに定められた標準地の1平方メートル当たりの価格を基準として評価額を求める方法です。

 

地点ごとの固定資産税路線価や地価公示価格は「全国地価マップ」で確認できるので、購入予定のマンション付近の価格をチェックしてみるとよいでしょう。

 

▶引用:一般財団法人 資産評価システム研究センター「全国地価マップ」

 

 

 

建物の固定資産税評価額は、新築時にかかった工事費の5~6割程度が目安とされます。ただし、建物構造や規模などによって金額が変わってくるため、あくまでも参考としてとらえてください。具体的には、再建築価格に経年減点補正率などをかけて算出します。 

・再建築価格:現時点でまったく同じ建物を新築する場合にかかると想定される費用

・経年減点補正率:経年による資産価値の減少分を考慮するために定められた比率

再建築価格が高く、築浅(経年減点補正率の影響が少ない)のマンションほど、基本的に建物の固定資産税評価額は高くなるということです。

 

 

固定資産税の納税通知書

▲固定資産税の納税通知書

マンションを購入する際、どうすれば固定資産税評価額を調べられるのでしょうか。中古物件か新築物件かによって調べ方が異なるため、それぞれ見ていきましょう。

 

 

 

すでに完成から時間が経過している物件であれば、毎年春頃に所在地を管轄する自治体から郵送される「固定資産税納付書」に添付の「課税明細書」で、土地・建物ごとの固定資産税評価額を確認できます

 

中古マンションの購入を検討しているケースでも、不動産仲介会社に確認すれば教えてもらえるケースがほとんどです。

 

課税明細書を紛失してしまうなどして確認が難しい場合には、市区町村役場にある「固定資産課税台帳」を閲覧するか、自治体に「固定資産評価証明書」の再発行を依頼する方法もあります。

 

なお、固定資産評価証明書の発行申請には申請書の提出が求められるほか、本人確認書類の提示と手数料の支払いが必要です。

 

 

 

すでに評価額が決まっている中古マンションに対し、新築分譲マンションは未完成の状態で購入するケースが多いため、大半のケースで固定資産税評価額がまだ決定していません。

 

ただし、マンション販売会社の営業担当者に確認すれば、大まかな目安を計算して教えてもらえる可能性があります。資金計画を立てる際には、営業担当者から聞いた目安額を見込んでおきましょう。

 

 

固定資産税評価額は、固定資産税額を算出するベースとなる価格です。実際の税額はどのように計算するのでしょうか。

 

原則の計算方法は、以下のとおりです。ただし税率は自治体によって異なる場合があるため、あらかじめ確認しておきましょう。

【固定資産税評価額の計算方法】

固定資産税評価額 × 標準税率1.4%

マンションを含む宅地や居住用物件に関しては、固定資産税に関する各種軽減措置が設けられています。実際の課税額はこうした軽減措置の適用後の金額です。

 

土地・建物それぞれにかかる固定資産税額、適用された軽減措置の詳細は、先ほど紹介した「課税明細書」に記載されています。

 

 

マンションにかかる税のイメージ

 

分譲マンションを購入する場合に適用される可能性がある、固定資産税の軽減措置を3つ紹介します。

 

 

 

当措置の内容は次のとおりです。

種類 面積 軽減内容
小規模住宅用地 1戸当たり200平方メートルまでの部分 固定資産税評価額×1/6
一般住宅用地 1戸当たり200平方メートルを超える部分 固定資産税評価額×1/3

▶引用:東京都主税局「固定資産税・都市計画税(土地・家屋)」

ただし、1戸当たりの面積で判断されるため、標準的なマンションであれば小規模住宅用地の範囲内に収まるでしょう。

 

 

 

新築分譲マンションを購入するときは、購入から5年間、建物分の固定資産税額を1/2に減額する優遇措置が適用されます。当措置には適用期限が定められており、2026年3月31日までに取得した物件が対象です。

 

購入するマンションが長期優良住宅の認定を受けている場合は2年間適用期間が延長され、購入から7年間同様の減額措置を受けられます。

 

なお、6年目以降(長期優良住宅認定のマンションなら8年目以降)は固定資産税額が当初より高くなりますが、値上げされるのではなく「元に戻る」だけです。加えて、経年減点補正率がかかるので、単純に当初の2倍になるわけではありません。

 

 

 

中古マンションを購入する場合でも、一定の要件を満たす以下のリフォームを実施したときには、建物分の固定資産税の軽減措置を受けられます。おもな適用要件と減額割合は次のとおりです。

リフォームの種類 おもな適用要件 減額割合
耐震リフォーム 昭和57(1982)年1月1日以前に建てられた物件であること 1/2
バリアフリーリフォーム 通路等の拡幅、浴室の改良、手すりの取り付けなど所定の内容に当てはまること 1/3
省エネリフォーム 窓の断熱、床・天井・壁の断熱など所定の内容に当てはまること 1/3
長期優良住宅化リフォーム 一定の耐震改修や省エネ改修工事とセットでリフォームを行なうこと 2/3

ただし、上記の軽減措置が適用されるのはリフォーム工事が完了した翌年1年分のみです。

▶引用:一般社団法人住宅リフォーム推進協議会「住宅リフォームの支援制度」

 

 

固定資産税評価額をベースに計算する税金は固定資産税だけではありません。固定資産税額によって税額が決まる税金の種類と計算方法の概要を、以下の表で紹介します。

税金の種類 概要 基本的な計算方法
都市計画税 毎年1月1日時点において市街化区域内に不動産を所有する方に課される税金 固定資産税評価額×税率0.3%
(上限税率。自治体によって税率が異なる場合あり)
不動産取得税 土地や建物を取得した際に1回だけかかる税金 固定資産税評価額×軽減税率3%(2027年3月31日まで)
登録免許税
(土地の所有権移転登記)
土地の所有権移転に関する登記を行なう際にかかる税金 固定資産税評価額×軽減税率1.5%(2026年3月31日まで)
登録免許税
(建物の所有権保存登記)
新築建物の所有者に関する情報を登記する際にかかる税金 固定資産税評価額×軽減税率0.15%(2027年3月31日まで)
登録免許税
(建物の所有権移転登記)
建物の所有権移転に関する登記を行なう際にかかる税金 固定資産税評価額×軽減税率0.3%(2027年3月31日まで)

一般的な商品は、一つの物に一つの価格が付される「一物一価」が原則です。一方、不動産には固定資産税評価額を含む5つの価格が存在するとされ「一物五価」といわれます。固定資産税評価額以外の4つの価格の種類と特徴をまとめると以下のとおりです。

公示地価 国土交通省が毎年3月下旬に公表する標準地における土地1平方メートル当たりの価格
基準地価 都道府県が毎年9月下旬に公表する基準地における土地1平方メートル当たりの価格
路線価
(相続税路線価)
国税庁が毎年7月1日に公表する道路に面する土地1平方メートル当たりの価格
実勢価格(時価) 不動産が実際に取引された価格

ちなみに、単に「路線価」といった場合は固定資産税路線価ではなく相続税路線価を指すのが基本なので注意しましょう

 

 

固定資産税評価額は、マンションを所有していると毎年納めなければならない固定資産税額の算出基準になるだけでなく、都市計画税や不動産取得税など、ほかの税金を算出する際にも用いられます。

 

新築マンションの場合は固定資産税評価額が未定のケースが多いものの、販売会社の担当者に確認すれば目安を教えてくれる可能性があります。新築マンション購入の資金計画を立てる際の参考にしましょう。

 

また、固定資産税は毎年納める必要があり、家計にも影響します。今回紹介した軽減措置をしっかり活用し、マンション購入後の経済的な負担を少しでも軽くするよう心がけたいところです。

 

以下の記事では、新築マンションでかかる固定資産税額を購入額別にシミュレーションしています。実際にどれくらいの負担になるのかイメージを膨らませるため、ぜひ併せてご覧ください。

 

 

▶関連リンク:マンションの固定資産税はいくら?新築マンションにかかるシミュレーションも紹介

監修者

高槻 翔太

<保有資格>

  • 宅地建物取引士
  • FP技能士2級
  • 日商簿記2級

<プロフィール>

不動産・建設会社で土地有効活用のコンサルティング営業経験(6年)。売買や駐車場の活用、リフォームの提案などに従事。不動産・金融特化のライターとして不動産系メディアでの執筆実績多数。

撮影/石原麻里絵(fort)