建ぺい率とは?容積率との違いや緩和されるケースなどを解説!

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「建ぺい率という言葉を聞いたことはあるけど、正確な意味がよく分からない」「容積率とはどのような違いがあるのだろうか」と思っている方もいるのではないでしょうか。建ぺい率は用途地域などによって制限が決められており、建物を建てる際にはこれを守る必要があります。 本記事では、建ぺい率とは何なのか、容積率との違いや建ぺい率が存在する理由、調べ方、緩和される条件などを解説します。

建ぺい率(建蔽率)とは敷地面積に占める建築面積の割合のことです。建築面積とは建物を真上から見たときの面積を指します。つまり、2階建て以上の建物では、最も広い階の面積が建築面積と同一になります。建ぺい率の計算式は以下の通りです。

<建ぺい率の計算式>
建築面積÷敷地面積×100

建ぺい率イラスト

 

例えば、敷地面積が150平方メートル、建築面積が75平方メートルの場合、建ぺい率は75÷150×100=50%です。

 

建ぺい率は「用途地域」と呼ばれる地域ごとに制限されており、30~80%の幅があります。この制限を守らなければ、建物が違法建築物となり担保価値もなくなるため、住宅ローンは組めなくなる可能性が高いです。また、売却の際などには違法建築物であることを広告や契約書類に明記しなければならないため、大きなデメリットになるでしょう。

 

 

建ぺい率と同時によく使われる用語に「容積率」があります。容積率とは敷地面積に対する延床面積の割合のことで、計算式は以下の通りです。延床面積とは各階の面積を合計したものを指します。

<容積率の計算式>
延床面積÷敷地面積×100

容積率

 

例えば、敷地面積が150平方メートルで、建物1階の面積が100平方メートル、2階の面積が80平方メートルの場合の容積率は(100+80)÷150×100=120%です。

 

容積率も用途地域ごとに制限されており、50~1300%の幅があります。一般的に、容積率が高いほど高層の建物を建てることが可能です。

 

容積率は土地に面している道路の幅が12m未満の場合はさらに制限されます。この場合、道路幅員による容積率を計算し、用途地域による制限と比べて厳しいほうが適用されます。

 

道路幅員による容積率の計算式は以下の通りです。なお、低減係数は住居地域では一般的に0.4ですが、0.6の地域もあります。

<道路幅員による容積率の計算式>
道路幅員×低減係数×100

例えば、道路幅員が4.5m、低減係数が0.4の場合の容積率は4.5×0.4×100=180%です。この場合、用途地域による容積率の制限が180%よりも高い地域でも、道路幅員から計算された180%が適用されます。

 

 

 

次に、先ほどの説明で出てきた「用途地域」について説明します。用途地域とは都市計画法によって土地の利用目的が定められている地域のことです。

 

都市計画法では、地域を都市計画区域・都市計画区域外・準都市計画区域の3つに分けています。さらに、都市計画区域は市街化区域・市街化調整区域・非線引区域の3つに、市街化区域は防火対策など用途によって21の地域地区に分けられます。用途地域はこの21の地域地区の一つです。

 

用途地域は「第一種住居地域」「商業地域」など、全部で13種類あります。

 

用途地域 建ぺい率(%) 容積率(%) 備考
第一種低層住居専用地域 30/40/50/60 50/60/80/100/150/200 高さが10~12mに制限された住宅
50平方メートルまでの小型店舗を含む
第二種低層住居専用地域 30/40/50/60 50/60/80/100/150/200 コンビニなど150平方メートルまでの小型店舗を含む
田園住居地域 30/40/50/60 50/60/80/100/150/200 農業と調和した低層住宅の環境を守るための地域
第一種中高層住居専用地域 30/40/50/60 100/150/200/300/400/500 500平方メートルまでの店舗を含む
第二種中高層住居専用地域 30/40/50/60 100/150/200/300/400/500 1,500平方メートルまでの中規模店舗を含む
第一種住居地域 50/60/80 100/150/200/300/400/500 3,000平方メートルまでの商業施設を含む
第二種住居地域 50/60/80 100/150/200/300/400/500 1万平方メートルまでの商業施設を含む
準住居地域 50/60/80 100/150/200/300/400/500 道路や自動車関連施設の利便性を重視した地域
近隣商業地域 60/80 100/150/200/300/400/500 近隣住民の利便性を重視し、準住居地域よりも制限を緩和
商業地域 80 200/300/400/500/600/700/800/900/1000/1100/1200/1300 商業施設が集まることを目的とした地域
準工業地域 50/60/80 100/150/200/300/400/500 軽工業の工場などのための立地
住居なども含む
工業地域 50/60 100/150/200/300/400 大規模な工場を含む
住居も建てられる
工業専用地域 30/40/50/60 100/150/200/300/400 住宅は建てられない

 

敷地が2つの用途地域にまたがっている場合は、それぞれの面積の割合に応じて按分して建ぺい率などを計算します。

 

また、用途地域によって周辺の環境も異なります。例えば、小さな店舗しか建てられない第一種低層住居専用地域では静かな環境に、商業地域はにぎやかで利便性の高い環境になりやすいでしょう。土地を購入する際には、どのような用途地域であるかを確認することも大切です。

 

 

建ぺい率・容積率を調べる確実な方法は、市役所などの都市計画課や建築課といった都市計画や建築を担当している部署に問い合わせることです。東京都や大阪市など、自治体によってはWebサイトで建ぺい率などが記された地図が公開されているケースもあります。

 

また、売り出されている土地や建物の建ぺい率などを調べたい場合は、その土地や建物を取り扱っている不動産会社に問い合わせる方法もあります。

 

 

 

建ぺい率や容積率が制限されていると、建物を建てる際に制約があり不便に思えることがあります。なぜ制限されなければならないのでしょうか。ここからは、建ぺい率・容積率が制限されているおもな理由を3つ解説します。

 

 

 

最初の理由として地域の人口をコントロールするためです。例えば、下水道や道路などのインフラ整備が不十分なエリアで高い容積率を許可すると、インフラの処理能力をオーバーする人口になるおそれがあります。そのため、容積率によって建物の大きさを制限してその地域の人口をコントロールしています。

 

 

 

建ぺい率・容積率が制限されている理由として防火対策という意味もあります。建ぺい率が高いと敷地ぎりぎりに建物が建てられるようになり、建物が密集して火災が発生した際に延焼しやすくなります。そのため、建ぺい率で制限をかけて建物同士の距離を十分確保し、火災が発生しても延焼しにくくしているのです。

 

 

 

通風や日照の確保という理由もあります。建ぺい率や容積率が高いと、建物同士が密集したり高い建築物が建てられたりすることで、十分な通風や日照が確保できなくなります。そのため、建ぺい率や容積率を制限して通風や日照を確保しています。

 

ただし、オフィス街などでは住宅街よりも通風や日照を確保する必要性が低くなるため、敷地いっぱいにビルが建てられることが多いです。

 

 

 

建ぺい率や容積率の制限によって思うような家が建てられないと思うこともあるでしょう。しかし、一定の条件を満たすと、制限が緩和されるケースもあります。これらをうまく利用すれば、制限が厳しい土地でも広い家を作ることができるでしょう。

 

 

 

まず挙げられるケースは角地の場合です。角地では建ぺい率を10%上乗せできます。ただし、敷地が角にあるからといって必ず角地になるとは限りません。「敷地の外周が1/3以上道路に接していなければならない」「角の角度が120度以下でなければならない」など、角地の条件が自治体によって異なるからです。

 

また、2本以上の道路に挟まれている場合や、公園・河川などに面している場合も角地として扱われることがあります。

 

防火地域に耐火建築物を建てる場合も緩和されるケースの一つです。建ぺい率が80%に指定されている防火地域に耐火建築物を建てる際、建ぺい率は100%になります。80%以外の場合(30%/40%/50%/60%)は、それぞれ10%加算されます。また、防火地域の角地に耐火建築物を建てる場合、緩和される建ぺい率は角地の10%と合わせて合計20%です。

 

建ぺい率が緩和されるおもなケースを表にまとめましたので、参考にしてください。

緩和される条件 緩和される内容
角地 10%加算
防火地域内の耐火建築物 建ぺい率80%指定地域以外の地域 10%加算
建ぺい率80%指定地域 緩和措置なし
(建ぺい率は100%

 

建物の部分によっては容積率の計算対象外になることがあります。例えば、吹き抜けは容積率を計算する際、延床面積に算定されません。吹き抜けと階段が隣接している場合は階段部分も延床面積に不算入となります。マンションでは廊下やエレベーターホールなど共用部分も計算の対象外です。

 

また、ベランダやバルコニーも建物の外壁から2mまでは計算の対象外です。ロフトは直下階の床面積の1/2未満が計算対象外になります。ただし、ロフトは自治体によって細かい条件が設定されていることもあるため、事前に確認しておきましょう。

 

地下室は、「住宅用途であること」「室内の高さの1/3以上が地下にあること」「天井が地上から1mを超えていないこと」などの条件を満たしていれば、延床面積の1/3までが計算対象外になります。

 

他にも、駐車場は延床面積の1/5までが容積率の計算対象外です。ただし、駐車場に屋根がない場合はそもそも建築物とはみなされず建築面積には含まれません。

 

さらに、幅員が15m以上ある特定道路から70m以内に敷地があり、前面道路が6m以上12m未満の場合は容積率が緩和される特例もあります。

 

容積率が緩和されるおもなケースを表にまとめましたので、参考にしてください。

 

容積率の計算に算入されない部分 緩和の条件
吹き抜け 特になし
マンションの共用部分 特になし
宅配ボックス 特になし
ベランダ・バルコニー 建物の外壁から2mまで
ロフト 直下階の床面積の1/2まで(その他細かな条件が設定されていることがあるため注意)
地下室 住宅用途
高さの1/3以上が地下にある
天井が地上よりも1mを超えていない
延床面積の1/3まで
駐車場 延床面積の1/5まで

建ぺい率は敷地面積に対する建築面積の割合です。似た用語に容積率がありますが、こちらは敷地面積に対する延床面積の割合のことです。建ぺい率・容積率は用途地域などによって制限が決められています。

 

建ぺい率・容積率は防火対策や通風・日照の確保などを目的に設定されており、一定の条件を満たせば緩和されることもあります。制限が厳しい地域でも、緩和条件を上手に使えば広い家を建てることができるでしょう。そのためにも、建ぺい率・容積率について正しい理解をしておくことが求められます。

 

 

▶関連リンク:建築面積とは?延床面積などの違いと建ぺい率について

 

監修者

高槻 翔太

<保有資格>

  • 宅地建物取引士
  • FP技能士2級
  • 日商簿記2級

<プロフィール>

不動産・建設会社で土地有効活用のコンサルティング営業経験(6年)。売買や駐車場の活用、リフォームの提案などに従事。不動産・金融特化のライターとして不動産系メディアでの執筆実績多数。