『MANSION+』が取材してきた素敵な住まい。その共通点は「特徴的なリノベーション会社」を活用していることでした。特に印象的だった2組の部屋と、リノベの中身を紹介します。
漆喰の壁、天然木の床と梁が印象的な「アンティークが似合う住まい」
はじめに紹介するのは、多摩川の河川敷沿いにある築35年のマンションを購入後、リノベーションしたCさん宅。リノベにあたり、最も重視したのは「自然素材を多く使うこと」。好きなアンティーク家具が似合う空間づくりでした。
一番のお気に入りは、大正時代につくられたアンティークの食器棚。100年の歴史を重ねた家具になじむよう、漆喰の壁や天然木のフローリングを採用している。
特に、漆喰の壁の仕上がりに満足しているというCさん。うす曇りの日は窓からやわらかい光が差し込み、漆喰の凹凸が浮き出てくるといいます。そんな、自然素材ならではの風合いに魅力を感じるのだとか。
また、キッチンの入り口部分がアーチ状に切り取られていたり、リビングの天井に2本の「見せ梁」を通したりと、ところどころに印象的なしつらえが見られます。
天井からつり下げたプロジェクターを挟むように、2本の梁を通した。プロジェクターの存在感を消しつつ、空間に重厚さをもたらしている。
キッチンの入り口はアーチ状に。
理想のデザインが必ず見つかる、定額制リノベパッケージ
この部屋を手がけたのは「ReoLabo(住環境ジャパン)」。1979年に工務店として創業し、現在ではリノベーション事業にも力を入れています。
Cさんが利用したのは同社の「定額制リノベーション」。コンセプトやデザインのテイストが異なる7つのブランドから、好みのものを選択できるサービスです。
「定額制」とあるように、ブランドごとに工事費用と標準仕様が定められていますが、別料金のオプションで設備の追加やデザイン変更も可能です。
“きよく・ただしく・うつくしい住まい”がコンセプトの『TOKYO STANDARDⓇ』。設計・デザインの監修は、リノベブームの火付け役として知られるブルースタジオ。厳選されたセレクトメニューから個々の仕様をセレクトする方式で、理想の部屋を手軽につくることが可能。こちらを含め、コンセプトの異なる7つのブランドが用意されている。
なお、Cさんが選んだのは『La ferme』というブランド。エイジング加工が施された建材や漆喰の壁を用いたプランで、まさにCさんが望む「アンティークが映える空間」にぴったりでした。
『La ferme』。南仏の農家をイメージした、アンティークな暮らしを実現できる。
こちらはCさん宅のキッチン。「La ferme」の標準仕様で、木目の自然な美しさと機能性を両立。なお、キッチン入り口のアーチ型や見せ梁はオプションでCさんがリクエストしたもの。
「定額制」というと、ある程度のデザインや間取り、設備が決められていて、あまり自由度がない印象もあります。ReoLabo(住環境ジャパン)のように、定額制であってもあらかじめ幅広いテイストのリノベーションパッケージが用意されていれば、予算の範囲内で住まい手の嗜好やライフスタイルに合った空間を実現することができそうです。
「お客様側からすれば『これしか選べません』『ここまでしかできません』というのはおもしろくないですよね。やはり住まいを提案する側としては、お客様ごとに特徴を出してあげたいですし、心から満足いただけるものにしたい。もちろん、やれることに限界はありますが、定額制だからといってすべてに制限をかけず、可能な範囲でご要望に応えたいと考えています」ReoLabo(住環境ジャパン)・リノベーション部課長山下さん
暮らしながら住まいをカスタマイズ。可変式リノベーション物件
続いての事例は、都内にパートナーと暮らすための中古マンションを購入した安藤秀通(以下、ひでまる)さん。ひでまるさんが買ったのは、いわゆる「リノベーション済み物件」。内見の際、ドアを開けた瞬間に「ここかな」と、ピンとくるものがあったといいます。
特に魅力的だったのは、心地よい木の香りと日当たりの良さ。そして、一般的なリノベ物件とは異なり「余白」が多かったことも、心をつかまれるポイントでした。
天井や壁は躯体現し、つまり、何も手が加えられていないむき出しの状態。また、天井レール付きの可動棚があり、自由に動かして間取りを変えられるというコンセプトに、「暮らしながら自由に住まいをつくりあげていくワクワク感」を覚えたそう。
間仕切りも兼ねる棚が左右にスライドすることで、部屋のレイアウトを変更できる。
実際、ひでまるさんたちは住みながら、自分たち好みに部屋をアレンジ。現在では、天井から壁際まで、いっぱいの植物に囲まれた空間となっています。ちなみに、ひでまるさん、こうした部屋づくりの経験をきっかけに、ルームスタイリストとして独立。家を買ったことが、人生の大きな転機にもなったようです。
天井からのハンギングも有効活用し収納を確保。
テーマは真っ白いキャンバス。住む人が自由に空間を表現する「ライフホリック」
ひでまるさんの人生にまで影響を与えた、余白がいっぱいの家。手がけたのは、リノベーションマンションを専門に手掛ける『kurea』と、建築家・村松 一氏が代表理事を務める『リバースプロジェクト』。両者がコラボレーションした『ライフホリック』というリノベ住宅シリーズです。
ライフホリックのコンセプトは、つくり手側が「色をつけない」こと。内装はひたすらシンプルに。また、間取りを含めて、部屋の至るところに可変性をもたせる。住まい手が自由に暮らしをつくっていける、真っ白いキャンバスのような空間が特徴です。
「長く住んでいただくために、家はどうあるべきか。私たちは『可変性』がとても重要だと考えています。時間とともに気持ちが変化したり、子どもが生まれるなどして暮らしに必要な機能が変わったときに、その都度、上書きできること。そんなテーマで立ち上げたのがライフホリックです。ひでまるさんのように、思い切り自分たちらしさを表現してくれるのはうれしいですし、僕らの狙いがズバリとはまる事例になったかなと思います」(kurea取締役・麓 伸司さん)
リノベーションは一時のブームを超え、広く浸透しつつあります。また、今回の「定額制リノベ」や「ライフホリック」のように、自由度の高いリノベーションプラン、リノベーション物件も登場しています。今後も、こうした特色ある事例が増えていくことで、リノベーションはますます魅力的な住まいの選択肢になっていきそうです。
取材・文:榎並紀行 撮影/宗野 歩(Cさん部屋)、三村健二(安藤さん部屋)
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編集者・ライター。編集プロダクション「やじろべえ」代表。住まい・暮らし系のメディア、グルメ、旅行、ビジネス、マネー系の取材記事・インタビュー記事などを手がけている。X:@noriyukienami
おまけのQ&A
- Q.最近人気なリノベは何ですか?
- A.塗装仕上げの無垢フローリングです。重厚感があって人気なのですが、ひび割れやお手入れが大変など良し悪しはありますね。ReoLabo(住環境ジャパン)・リノベーション部課長山下さん