火災や地震などの災害が起きた際の対策として、マンションには消防設備や避難設備といった安全設備が設置されています。また、オートロックや防犯カメラなどの防犯設備も安全設備の一種だといえるでしょう。 本記事では、マンションの安全設備とはどのようなものなのか、消防設備、避難設備、防犯設備の種類や使用する際の注意点などを解説します。
■マンションの安全設備とは?
「マンションの安全設備」には、はっきりとした定義はありません。一般論としての安全設備とは、火災などの災害に対して、人命の安全を図るためにつくられた設備とされています。そのため、具体的には消防設備や避難設備、防犯設備などが該当するようです。
■マンションの消防設備の種類
マンションの消防設備には消火器や自動火災報知設備などいくつかの種類があります。ここではマンションで使われている代表的な消防設備を紹介します。
◇消火器
消火器はマンションの廊下など共用部に歩行距離20m以内、大型消火器の場合は歩行距離30m以内ごとに置かれています。機械式駐車場がある場合などでは、ガス式の巨大な粉末消火器が設置されているケースもあります。
消火器はマンションの住人一人ひとりが使う可能性がある消防設備のため、いざというときにはスムーズに使えるように使い方を訓練しておく必要があるでしょう。
◇自動火災報知設備
自動火災報知設備とは、火災で発生する熱や煙を自動で感知して建物全体に知らせる設備です。人が火災を発見した場合は、ボタンを押せば自動感知前でも警報を出せます。また、最近のマンションではインターホンなどと連動しているものもあります。
自動火災報知設備は住戸内にもあり、台所や寝室などの天井に設置されています。自動火災報知設備は住戸内でも共有部分に該当することから、自分で勝手に取り外したり交換したりすることはできません。
◇屋内消火栓
屋内消火栓は一定規模以上のマンションに設置されている消防設備で、ホースとノズルで火を消します。消火器と比べて消火能力は高いものの、二人一組で操作しなければならないものが多いため、あらかじめ訓練しておく必要があります。
◇スプリンクラー
スプリンクラーは11階より上の階で設置が必要ですが、11階以上の階に火災の拡大を防ぐ内装制限が施されている場合などは、設置が免除されているケースもあります。火災を感知すると自動で散水して消火することが特徴です。地下駐車場などでは水ではなく泡を使用する消火能力が高いタイプもあります。
■マンションの避難設備の種類
避難設備は消防設備の一種です。建築基準法で、マンションは2方向以上に避難できるように設計されています。例えば、各住戸から廊下や階段を歩いて避難するルートのほか、ベランダを使って下階へ脱出するルートなどが考えられます。避難設備は、これらの避難を補助するためのものです。ここでは、代表的な避難設備をいくつか紹介します。
◇避難ハッチ
避難ハッチとは、ベランダに設けられている避難設備です。ハッチにはしごが収納されており、避難時にはハッチを開け、そのはしごによって下階へ避難できます。避難ハッチはすべての住戸のベランダには設けられておらず、各階の端の住戸に設置されていることが多いでしょう。そのため、自分が避難する際に使用する避難ハッチがどこにあるかを確認しておくことが大切です。ベランダは住戸間に仕切りが設けられているため、避難時は仕切りを蹴破って移動します。
◇誘導灯
誘導灯は避難する方向を示す緑色の灯火です。緑色が採用されている理由は、緑が火災のときでも認識しやすい色のためです。誘導灯は停電になった場合でもバッテリーにより一定時間は発光を続けるため、火災のときでも役に立つでしょう。
灯火で発光していない「誘導標識」もありますが、こちらも蓄光塗料が塗られているため暗くなっても発光するようになっています。
◇避難はしご
避難はしごは、2~3階建てのマンションなどに多く設けられている避難設備で、格納箱の中にはしごが入っており、専用の取り付け金具や手すりなどに、はしごをかけて避難します。取り付ける箇所などの使用方法は格納箱に記載されていますが、いざというときにスムーズに使えるように、普段から使用方法を確認しておく必要があるでしょう。
◇緩降機
緩降機は、4階以上の建物で避難ハッチが取り付けできない場合などに設けられている避難設備です。使うときは格納箱を外すと支柱が出てくるため、調速機とロープをかけて地上へ降ります。調速機があるためゆっくりと降りられることが特徴です。緩降機も避難はしごと同様に格納箱に使い方が記載してありますので、日頃から使い方を確認しておくことが大切です。
■マンションの消防設備や避難設備を使う際の注意点
マンションの消防設備や避難設備は災害の際に頼りになる存在ですが、注意点もあります。ここでは注意点を2点解説します。
◇消防設備などの場所や使用方法を確認しておく
消火器や避難ハッチなどの消防設備や避難設備の場所を知らなければ、いざというときにあわててしまい見つからないことにもなりかねません。消防設備などがどこにあるのかをあらかじめ把握しておくことが大切です。
また、防災訓練などの際に消防設備などを実際に使っていれば、いざというときにもスムーズに使えます。自室のベランダに避難ハッチがある場合は、消防点検の際に使用方法を見学してみることもおすすめです。
◇設備の周りを整理しておく
消防設備などの周りは整理しておくことが大切です。特に、ベランダには無造作に私物を置いてしまいがちです。しかし、ベランダの仕切りや避難ハッチの周囲に荷物が置いてあると、避難を妨げる可能性があるため、邪魔にならない位置に整理しておきましょう。
また、上階に避難ハッチがあり自分の部屋のベランダに降りる場合は、一見関係なさそうに感じます。しかし、避難ハッチの真下に洗濯機や物干し竿などがあると、避難の邪魔になる可能性があるため注意しましょう。
■マンションの防犯設備
次にマンションの防犯設備について、代表的なものをいくつか紹介します。
◇オートロック
オートロックは扉が自動的に施錠されるセキュリティシステムで、鍵や暗証番号などで解錠します。ゴミ捨て場や駐輪場への入口にもオートロックがあれば、さらにセキュリティは高くなるでしょう。
部外者の侵入の多くを防げますが、入居者のあとについて入ってくる不審者もいるため、完璧ではありません。
◇防犯カメラ
防犯カメラは、犯罪があった際に犯人を特定できるだけではなく、犯罪そのものを抑止する効果もあります。特にマンションのエレベーターは密室になるため、エレベーター内にも防犯カメラがあれば安心できるでしょう。
また、赤外線照明が付いているカメラなどであれば、真夜中で暗い状況でも撮影ができて安心です。
◇インターホン
最近のインターホンは、訪問してきた人への対応だけではなく、自動火災報知設備などの警報や一斉放送機能、非常時の通報機能などさまざまな機能が盛り込まれていることも少なくありません。
モニター付きのインターホンであれば、来訪者の顔を実際に確認できるため、不審者の侵入を防げるでしょう。録画機能があれば、留守中に不審者が来ていないかも確認できますし、警察に相談する際も画像を資料として提出できます。
なお、インターホンは住戸内にありますが共用部分に当たるため、自分で交換はできません。
◇有人管理
管理人などのスタッフがいれば防犯効果が上がります。24時間常駐であれば、夜遅く帰宅する場合や共働きで子どもが留守番をしている家庭にとって安心できるでしょう。また最近のマンションでは、遠隔監視をしているマンションがあります。遠隔監視により、事件や事故が起こった際は警備員が駆けつける仕組みです。
■マンションの防犯で気をつけたいこと
マンションに防犯設備があったとしても、住人の防犯意識が低ければ犯罪に巻き込まれるおそれがあります。ここでは、マンションの防犯で気をつけたいことを3点紹介します。
◇鍵を閉める
オートロックがあるマンションでは、住戸の鍵は閉めなくてもいいのでは?と思っている方もいるかもしれません。しかし、先ほども説明したようにオートロックでも部外者の侵入は不可能ではないため、ドアの鍵は必ず閉めましょう。
また高層階に住んでいると、窓の鍵は閉めなくてもいいのでは?と思うかもしれませんが、これも注意が必要です。高層階では窓の施錠について警戒が緩みがちなため、犯罪者のなかにはあえて高層階をねらう者がいるので注意しましょう。
また、鍵は1つではなく2つ以上あると安心です。1つだけの場合はピッキングやサムターン回しなどで解錠される可能性もあります。それが2つ以上となれば、解錠まで時間がかかり侵入を断念する可能性も高くなるでしょう。
◇不在だと思われないようにする
窃盗犯のなかには、部屋の不在を確認してから侵入する者がいます。そのため、部屋が不在だと思われないようにすることも防犯では大切です。郵便物がポストにたまっていると不在だと思われるため、長期間外出する際は近所の人に回収をお願いしたり、実家へ転送したりするとよいでしょう。
また、夜間に室内の明かりをつけておくことも、不在だと思われにくくなる有効な防犯対策です。
◇住人同士のつながりをもつ
住人同士がつながりをもつことも大切です。住人同士が顔見知りなら、不審者が侵入してきた際にすぐに分かるでしょう。日頃から挨拶をし合うだけでも、犯罪を抑止する効果があるといわれています。
■まとめ
マンションの安全設備は、マンションの住人を災害や犯罪などから守るためのもので、消防設備や避難設備、防犯設備などが該当します。マンションによって設置されている安全設備は異なるため、自分が住んでいるマンションではどのような安全設備があるのか確認しておくことが大切です。また使用方法も確認しておけば、いざというときでもスムーズに行動できるでしょう。
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監修者
高槻 翔太
<保有資格>
- 宅地建物取引士
- FP技能士2級
- 日商簿記2級
<プロフィール>
不動産・建設会社で土地有効活用のコンサルティング営業経験(6年)。売買や駐車場の活用、リフォームの提案などに従事。不動産・金融特化のライターとして不動産系メディアでの執筆実績多数。