居住者とデベロッパー取材で分かった。「満足いく」おひとりさまマンション選びのツボ

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ライフプランにフィットする広さと間取りの考え方、予算や資産価値の見据え方。これまでの取材を総括し、おひとりさまのマンション生活の将来像を展望します。

シングルライフの分譲マンションに広く深い知見をもつ日鉄興和不動産の調査研究機関「+ONE LIFE LAB(プラスワン ライフ ラボ)」佐藤有希さんによると、マンションを選ぶ時の大前提は「資産状況」。どのくらいまで住まいにお金が掛けられるかを冷静に見極めた上で、どんなマンションを買うのか検討していくと、理想と現実の着地点が見えてくるといいます。

+ONE LIFE LAB(プラスワン ライフ ラボ)佐藤有希さん

+ONE LIFE LAB(プラスワン ライフ ラボ)佐藤有希さん。2017年単身者向けの事業「+ONE LIFE LAB」を立ち上げ、2021年に日鉄興和不動産社内でマンション事業における調査や研究、企画検討などを統括する社内シンクタンク「リビオライフデザイン総研」も設立。顧客調査や、新商品開発などを行っている。

「こんな暮らしがしたい」という希望を実現できるマンションが予算内で手に入るのはどのエリアなのかを掘り下げて、内見へ。たくさんのモデルルームを見てまわると、どれも良く見えて、迷うことも多くなります。そこで意識したいのは、これだけは絶対に譲れないというものを絞り込むこと。「『お風呂のサイズは譲れない』『都心までの距離は譲れない』など、自分のライフスタイルにおいて譲れないものを3つぐらい決めた上で、モデルルームをまわってもらうと良いと思います」(+ONE LIFE LAB 佐藤さん)

 

 

お金のことも条件も、ひとりで考えていて悩むのはつらいこと。特にお金のことは親しい人にも相談しづらいものです。例えば日鉄興和不動産の品川にあるマンションギャラリー「リビオライフデザインサロン」では、ライフデザイナーという、物件を決めていない段階でも気軽に相談できる営業しないコンシェルジュサービスを行っています。このように気軽に相談できるサービスを活用することで、自分だったらどのぐらいまで買えるのかを把握するきっかけとなります。

「マンション買うぞノート」

▲「Club LIVIO(クラブリビオ)」が配布している「マンション買うぞノート」。

また、同社では「Club LIVIO(クラブリビオ)」というマンション購入を検討する方のための会員組織を運営しており、「マンション買うぞノート」という冊子を配布しています。物件選びのポイントを自分で書きこんで整理するページがあり、迷ったら立ち返るためのツールとして活用できる内容となっています。このようなサービスやツールを、選択基準を整理する一助とするのもおすすめです。

 

 

今は一人暮らしだけど、いつかは結婚することもあるかもしれないと考えて、購入に踏み出せない人も多いのではないでしょうか。+ONE LIFE LABの佐藤さんによると、特にそういった悩みは男性に多いようです。

過去3人取材したお部屋

 

「+ONE LIFE LABの調査研究による『黄金間取り』という、1LDKのお部屋は、女性の意見を中心に設計されました。単身女性の理想を分析した結果、1LDK・33㎡の一人暮らし用に高いニーズがあることがわかり、商品化するに至りました。一方で単身男性に同じように聞くと、求められるのは50㎡台の2LDK。一人暮らしには大きすぎる間取りですが、男性には将来結婚する時に備えるという意識が根強い結果、居室プラス寝室や書斎として使える個室が二つある2LDKのニーズが高い傾向が分かりました。

30歳でマンションを購入した女性Aさんのお部屋

30歳でマンションを購入した女性、Aさんのお部屋はまさに1LDK。インタビューでも、ライフステージの変化を柔軟に捉えていることがうかがえた。

もちろん、女性が結婚することを全く考えていないということではないと思います。でも、女性はマンションを買った後で結婚することになれば、その時は誰かに貸したり、売ったりすればいいや、みたいに柔軟に考えているようですね」(佐藤さん)

 

 

購入しないのであれば、一生賃貸なのか、それとも実家に帰るのか。一生を通して見た住む場所や住まい方も、時代に応じて変化している過程なのかもしれません。+ONE LIFE LABでは、別に賃貸でも、実家でも、分譲マンションでもフラットに選択肢の中にあると考えているといいます。

 

「多拠点生活や2拠点生活など生活スタイルは多様化していますし、以前よりも地方や海外移住などに関する情報も増えています。これからの時代は、終の棲家を早く見つけることや、そこで一生を過ごす必要はないと思っています。もちろん、私はマンションデベロッパーの一員として、販売する商品に自信を持っていますが、これも“もし”分譲マンションを購入するのであれば、まず当社の『リビオ』から探してみてはいかがでしょうか、と提案しているスタンスです」(佐藤さん)

離婚後、31歳でマンションを購入したBさんのお部屋

離婚後、31歳でマンションを購入したBさんのお部屋。住まい方の選択肢を比較検討した結果「購入」を選んだ方の一例。

「最近になって単身の方向けのマンションが売れるようになってきたわけではなくて、もともと買いたかった人は潜在的にはたくさんいたのに、我々がそこに気がつけていなかっただけだと思うようになりました。マンション業界はもっともっと幅広い選択肢を提案できるようになるべきなのでしょう」(佐藤さん)

 

 

マンションプラスでは、分譲マンションを軸に、新しい時代の住まい方やデベロッパーの取り組みを紹介しています。より自由な住まい方の選択肢を広げていく業界の新しい流れは、マンションに住む方々に自由な生き方、暮らし方を提供していくことになるでしょう。

Cさんのお部屋

一人暮らしでマンションを購入し、その後パートナーと猫を迎えたCさんのお部屋。家族が増えても同じ部屋で、ご自身のスタイルを自然な形でキープして生活していた。

「結局、家族という集合体であっても、お父さん、お母さん、子どもそれぞれに、どう生きたいかという希望はあるんですよね。それぞれ違う希望を、すり合わせながら生きているのが家族なのではないかと思います。そして、どう生きたいかを一人で表現できるのが、単身者なのでしょう。実は、それくらいの違いしかないのかもしれません」(佐藤さん)

 

 

取材・文/小野悠史 撮影/石原麻里絵(佐藤さんポートレート、Aさん部屋)、ホリバトシタカ(Bさん部屋)、宗野歩(Cさん部屋)

 

WRITER

小野 悠史
不動産業界専門紙を経てライターとして活動。「週刊東洋経済」、「AERA」、「週刊文春」などで記事を執筆中。X:@kenpitz