エプロンの上の笑顔

 父が料理を始めた。週に一度教室にも通っている。今男性の生徒数がすごいらしい。「ラタトゥイユに挑戦するからみんなおいで」と父から号令がかかり、私たち姉妹とその家族は出かけた。母を亡くし、いつもガランとしている父のマンションは、孫たちの出現でたちまちあたたまった。料理はいい、と私は心から思う。それは人を集める。好奇心が動き出す。会話を生み出す。そして食べるものを作ること、そしてそれを食べることは、何よりも人に生きる歓びを感じさせてくれると思うのだ。父はニコニコしながら味見をしている。私は思った。人が料理を作っている時、料理は人の笑顔を作っている。うむ、私コピーライターみたいだ、と私も笑った。

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