タコをお伴に幼稚園

 何もかも引っ込み思案な晴美が、喜んで送迎バスに乗り込むようになったのは、幼稚園でお弁当が始まった頃ではないでしょうか。私も同じでした。母さん、私、母さんが作るお弁当が大好きでした。絵が上手な母さんは、タコウインナーやリンゴウサギはもちろん、いつもごはんの上に海苔や野菜で絵を描いてくれました。私、お弁当をあけるのがどれほど楽しみだったことでしょう。あけると母さんがいる。そこにやさしい母さんがいる。そう思ったものでした。私が、晴美のお弁当づくりをがんばるのは、母さんとのそんな思い出があるからです。家族はまだ眠っています。夫が憧れ続けた高層マンションの部屋から、母さんが住む東の街の、明るみ始めた空が見えています。

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