2006年05月08日

 長谷工コーポレーションが超高層マンションの建設を予定している「大阪・北浜 旧三越大阪店」解体現場より、大正初期の高層建築の基礎形式(シカゴ建築様式の鋼鐵基礎)が、日本で初めて実物で発掘されました。また、基礎には「幻のレール」と呼ばれる「双頭レール」を鉄筋の代用として使用しており稀に見る構造であることが学識経験者によって確認されました。
 解体現場のある「北船場エリア」は近代建築と名店の宝庫であり、東西に広がる町には個性的な建築物、洋菓子やフランス料理等の有名店も進出が著しく、関西でも注目されているスポットです。解体現場のあるこの土地では、昨年5月まで「三越大阪店」が営業しており、1691年(元禄4年)に江戸駿河町越後屋の出店として開設されて以来315年の歴史を誇っておりましたが、超高層マンションへと新しく生まれ変わることになりました。

  1. 日本初!大正初期の高層建築の構造形式を実物で発掘
     解体の技術指導、調査を行った技術顧問の柴山建築研究所(大津市)の高嶋三郎さんは、「今回、発掘された旧三越大阪店の基礎構造は現在のビルの形式とは全く異なっているが、日本の伝統木造建築の玉石の基礎を巨大化したようなとも言えるのでは。鉄筋の代用に欧米各国や黎明期の様々なレールがこれほど大量に(約500本)見つかったのは初めてではないか。これらのレールは近代製鋼技術の博物館ともいえそうだ」と語る。
     現地を視察した京都大学講師(鉄骨構造学)の西澤英和先生は「レールなど頑丈な鋼鉄の井桁をコンクリートで固め、その上にレンガと鉄筋コンクリートの土台を作って鉄骨造の基礎柱を乗せた構造は、19世紀末にシカゴで誕生した鉄骨煉瓦造の最初期の摩天楼(超高層ビル)の技法そのもの。超高層ビルの源流ともいえる摩天楼の基礎がどのような形式から発展していったのか、その原型をこの日本で目の当りにできたことに驚きを隠せない、鳥肌が立つほどの発見」と興奮の様子で語っている。

  2. 「幻の双頭レール」も発見される
      基礎には1870年代前半に英国でつくられた「双頭レール」が多く使用されており、「これらは日本で最初に開業した東海道線(新橋-横浜1872年、大阪―神戸1874年、京都―大津1880年開業)で使用されたレールであるとみられ、他にも大阪―京都間で使用された錬鉄製レールや近畿一円の鉄道で使用された古レールも多く出土しており非常に珍しいケースでは」と新日化環境エンジニアリング(北九州市)の大石徹さんは話す。
     現在、「双頭レール」入りの基礎柱は長谷工コーポレーションにより、大阪市立大学杉本キャンパス(大阪市住吉区)で産業遺産として後世に伝える為に展示されてます。
 <旧三越大阪店>
1691年 江戸駿河町越後屋の出店として開設。
1917年 鉄筋コンクリート造7階建の店舗が完成。
1920年 8階建の東館を新築。
2005年 315年の歴史に幕を閉じる。

 

赤れんが(大阪窯業製)の上に建つ基礎柱
(鉄筋の代わりにレールが使用されている)

 

基礎柱の鉄筋として使用されている「双頭レール」

 

基礎柱の実測図

 

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